第五十四話 またこのパターン
王宮を出て、俺たちはロイド研究室へ戻ってきた。
研究室に戻った途端、スカーレットが俺に詰め寄ってきた。
「ケンジさん!」
「はい?」
「ケンジさんが異世界から来たって、どういうことですか!?」
「あの……えっと……」
「日本ってどんな国なんですか?」
「え?」
「魔法がないって本当なんですか?」
「はい」
「じゃあ、どうやって治癒魔法を覚えたんですか?」
「それは……」
「聖女様も日本人だったんですよね?」
質問が止まらない。
しかも、顔が近い。
顔が近い!!
真剣な顔で俺を見ながら質問してくるので、自然と距離が近くなる。
近い……
これは……いいな。^_^
「スカーレット」
ロイド室長が声をかけた。
「まぁ、まぁ」
「でも室長!」
「質問が多すぎます」
「だって!」
スカーレットはまだ納得していない。
「ケンジさん、日本人だったんですよ!?」
「そうですね」
ロイド室長は淡々としている。
「聖女様と同じ世界から来たということになります」
「ええっ!?」
スカーレットがまた驚いた。
俺は苦笑する。
するとロイド室長が、
「……」
何かを考えるように黙った。
「どうしました?」
「ところで、ケンジ」
「はい?」
「カツ丼とは、どういう料理なんですか?」
「……」
そういえば、この世界にはカツ丼がなかった。
今さら気づいた。
「えっと……ご飯の上にカツを乗せて……」
「カツ?」
「豚肉に衣をつけて揚げたものです」
「なるほど」
俺が説明を続けようとした、その時だった。
バンッ!
勢いよく扉が開いた。
「失礼します!」
騎士団の使いが、息を切らせて入ってくる。
ロイド室長が振り返った。
「……どうしました?」
「第一騎士団より、急ぎの要請です!」
「何があったのですか?」
「第一騎士団に負傷者が多数出ています!」
部屋の空気が変わった。
「それで……治癒魔法を使える者はいるか、と」
「詳しく」
ロイド室長が促す。
使いは息を整えながら答えた。
「ブラッド団長が……意識不明です」
「……!」
俺も思わず顔を上げた。
すぐに第一騎士団へ向かうことになった。
移動中、俺はロイド室長とスカーレットに指示を出した。
「現場についたら、まず軽症者をお願いします」
「分かりました」
「魔法薬は三倍に薄めたものを使ってください」
スカーレットが頷く。
「重症者は俺が見ます」
「はい」
「俺が別の重症者を治療している間に、重症者が運ばれてくることもあると思います」
二人は黙って聞いている。
「もし、その患者が時間的に余裕がなさそうなら……原液を使ってください」
「分かりました」
ロイド室長が即答した。
「スカーレットも、それでいいですね?」
「はい!」
「とにかく、時間を優先してください」
「分かりました」
そして俺たちは、第一騎士団へ急いだ。
到着すると、すでにロイド研究室のメンバーが治療を始めていた。
負傷者が次々と運び込まれている。
「重症者はどこですか?」
俺が尋ねると、一人の女性騎士が振り返った。
「こちらです!」
「あなたは?」
「第一騎士団副師団長、リールです」
「分かりました。案内してください」
「はい!」
リール副師団長について走る。
「こちらにも重症者がいます!」
「ブラッド団長は?」
「こちらです!」
部屋に入る。
そこには、ブラッド団長がベッドに横たわっていた。
意識はない。
俺はすぐにリール副師団長を見る。
「治療を始めます」
「お願いします!」
「上半身の装備を外してください」
「はい!」
「服も脱がせてください。傷の状態を確認します」
リール副師団長がすぐに動き始める。
俺はブラッド団長の肩を見る。
「……!」
肩の傷から、血が吹き出している。
俺はすぐに手で傷口を押さえた。
「止血します!」
血が手を伝って流れていく。
「リールさん、急いでください!」
「はい!」
俺は必死に止血を続ける。
そして、
「脱がせました!」
リール副師団長の声がした。
俺は顔を上げる。
「よし……」
いよいよ治療だ。
そして――
よし、見よう。
その瞬間。
ブラッド団長の目が、カッと開いた。
「!?」
次の瞬間。
ブラッド団長が、ベッドから上半身を起こした。
そして――
美しいフォームから繰り出される、右ストレート。
「ぐはっ!」
俺の視界が――
真っ暗になった。
またこのパターンか。今度はストレート。




