第四十九話 聖女 山田順子(笑)
教会へ向かう。
今日は休日。
本来なら、聖女に関する資料を見に行くだけなのだが。
隣を歩くスカーレットを見る。
「……」
なんだろう。
めちゃくちゃ楽しい。
「あそこの屋台、美味しそうですね」
「後にしてください」
「あそこの店の洋服、スカーレットさんに似合いそうですね」
「ケンジさん、今日は聖女様の資料を見に行くんですよ?」
「分かってます」
でも、こうやって女の子と二人で歩くのって、いいよな。
これ、どう考えてもデートだろ!!
「早く行きますよ」
「はい」
スカーレットに促され、歩く速度を上げる。
そして、目的地の教会が見えてきた。
「もう着いちゃった……」
思わず呟く。
「何か言いました?」
「いえ、何も」
もう少し歩いていたかった。
そんなことを思いながら、教会へ入る。
中はかなり広かった。
壁には大きなレリーフがあり、聖女の功績が描かれている。
「こちらは、聖女様が王都を疫病から救った時のものですね」
スカーレットが説明してくれる。
「へぇ」
その隣には、魔物の大群を食い止める聖女。
さらに別の場所には、民衆に囲まれている聖女。
そして――。
「聖女様は、とても美しい女性だったそうですよ」
「なんか、嘘くさいですね」
「ケンジさん!」
スカーレットが怒った。
「いや、だって……」
疫病を救って。
魔物の大侵攻を止めて。
さらに美人。
完璧すぎるだろ。
「聖女様に失礼ですよ!」
「すみません……」
怒られてしまった。
そのまま奥へ進む。
しばらくすると、聖女に関する資料がまとめられた場所へ到着した。
そこには、聖女が残したとされる様々な資料が展示されている。
そして、その中でも特に目立っていたのが一冊の日記だった。
『聖女の日記』
その下には、名前が書かれている。
『山田 順子』
「ブハッ!!」
思わず吹き出した。
(山田が聖女って!!!)
いや、山田さんが悪いわけじゃない。
でも、俺が勝手に想像していた聖女像と、名前のギャップが凄い。
「ケンジさん?」
「い、いや……なんでもないです」
気を取り直して、日記を見る。
そこには、いくつかの文章が記されていた。
『ワタシ、二十六歳』
(……結構歳いってるやん)
そして、次の文章。
『ステータスを見ることができた』
「……ん?」
さらに、その下。
『ワタシ治癒魔法 怪我、病気が治せます^_^』
「…………」
なんだ、この文章。
独特すぎる。
さらに読み進める。
『魔法薬が作れるんだから^_^』
「あ」
その瞬間。
頭の中で何かが繋がった。
(……この文章)
(この文章、頭に浮かんだ文章だ)
いや。
見たことがあるなんてものじゃない。
俺の頭の中に、突然浮かんできた文章。
誰が書いたのかも分からなかった、あの文章。
『ワタシ、二十六歳』
『ステータスを見ることができた』
『ワタシ治癒魔法 怪我、病気が治せます^_^』
『魔法薬が作れるんだから^_^』
(あーーー!!)
(これだ!!)
(この文章、頭に浮かんだ文章だーーー!!)
俺は日記を凝視した。
(なんで!?)
(なんで俺の頭に浮かんでた文章が、ここに書いてあるんだ!?)
そして、一つの答えにたどり着く。
(……まさか)
もう一度、日記を見る。
そこには、確かに名前が書かれている。
『山田 順子』
(……これ、聖女の日記だったんだ)
「…………」
その時。
隣にいたスカーレットが、俺の顔を覗き込んだ。
「ケンジさん?」
「はい?」
スカーレットは少し不思議そうな顔をして、
「もしかして……読めてます?」
「……」




