第四十一話 ロイド室長の治癒魔法
「では、今度は私がやってみましょう」
そう言って、ロイド室長が負傷した兵士の前に立った。
俺のやり方を試してみるらしい。
ロイド室長は詠唱をせず、魔力を動かした。
そこまではできる。
けれど、傷は治らない。
「うーん……やっぱり難しいですね」
「傷だけ見てても、難しいんじゃないですか?」
「傷だけ……?」
「傷のないところも見てみたらどうですか?」
俺自身は、そんなことを意識したことはない。
ただ、治すときには身体の状態を頭の中でイメージしている。
それをそのまま口にしただけだった。
「なるほど……」
ロイド室長は兵士に頼み、上半身の服を脱いでもらった。
そして、傷のない部分までじっくり観察する。
「……もう一度」
ロイド室長が魔力を動かす。
すると――
「おお……!」
傷が、ほんの少しだけ塞がった。
「治った……?」
スカーレットが驚く。
ロイド室長も驚いている。
「本当に……少しですが、治りました」
「じゃあ、触ってみたらどうですか?」
「触る?」
「はい」
ロイド室長が傷に手を当てる。
そして、もう一度魔力を流した。
すると今度は、さっきよりも傷が大きく塞がった。
「……なるほど」
ロイド室長の目が輝いている。
「これは面白い……!」
完全に研究モードだ。
「この方法なら、他の者でもできるかもしれません」
「私もやってみたいです!」
スカーレットがすぐに手を挙げた。
「では、次は私が――」
「ロイド室長」
ブラッドさんが口を挟んだ。
「そろそろ時間です」
「えっ?」
「軍の訓練施設ですから。予定の時間は終わりです」
「あと一人だけ!」
スカーレットが食い下がる。
「駄目です」
「あと一人だけですよ?」
「駄目です」
「すぐ終わりますから!」
「駄目です」
「……室長だけズルいです」
「私もそう思います」
ロイド室長まで頷いた。
「室長まで言わないでください」
ブラッドさんが呆れたようにため息をつく。
「来週なら、また時間を取れます」
「……来週」
スカーレットが少し考える。
「分かりました」
ようやく諦めてくれた。
「では、来週またお願いします」
こうして、初めての実験は終わった。
「そういえば、もう昼ですね」
ロイド室長が言った。
「え?」
「よかったら、一緒に食堂へ行きませんか?」
「食堂?」
「王宮で働いている者のための食堂です。研究室の生徒たちも利用していますよ」
王宮で働いている者のための食堂。
つまり――。
研究室のかわいい女の子たちも、そこにいる可能性が高い。
「行きます」
「即答ですね」
「お昼ですから」
こうして俺たちは、王宮の食堂へ向かうことになった。




