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煩悩だらけの異世界転移 ~裸が見たいだけなのに聖人扱いされています~  作者: kammy


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第三十五話 赤っ恥

王都に着いた。


「まずは魔法研究室に行こう」


魔法研究室は王宮の中にあるらしい。


三つの研究室があり、それぞれに室長がいて、その下に生徒たちがいるそうだ。


治癒魔法を研究しているのは、ロイド室長の研究室。


「私、学生の頃にロイド室長に少し教わったことがあるよ」


ウィルチが言った。


「じゃあ、ウィルチさん。一緒に挨拶に行ってもらえますか?」


「いいよ」


ソード、ブレンダ、シードは街で待つことになった。


俺とウィルチは王宮へ向かう。


そして、ロイド室長の研究室の前までやってきた。


「ここだよ」


「では、行きましょう」


俺は扉を開けた。


「失礼します」


「おお、来たか」


中から声がした。


「ウィルチも久しぶりだな」


「お久しぶりです、ロイド室長」


「そして、君がケンジ君だね」


「はい。ケンジです」


「話はカストロから聞いているよ。今日は来てくれてありがとう」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


ロイド室長は穏やかに笑った。


「治癒魔法について、色々と聞かせてもらえると嬉しい」


「はい」


現在、治癒魔法は信仰の深さによって効果が上がるというのが定説になっている。


ロイド室長も、その説を研究している一人だ。


ただ、


「もちろん、定説が全てだとは思っていないよ」


そう言って、ロイド室長は笑った。


「研究者なら、疑問を持つことも大切だからね」


……なるほど。


この人なら、話ができそうだ。


「それで、ケンジさんの治癒魔法なんですけどね」


ウィルチが、少し得意げに話し始めた。


「普通の治癒魔法とちょっと違うんです」


「ほう?」


ロイド室長が興味深そうにウィルチを見る。


「ケンジさんは、まず治療する相手の身体をよく観察するんです」


「身体を?」


「はい。一人ひとり、身体の特徴が違うからって」


ウィルチは嬉しそうに続ける。


「怪我の状態だけじゃなくて、その人の身体をよく見て、魔力を調整しているんです」


「なるほど……」


ロイド室長が頷く。


「つまり、治癒魔法を一律に使うのではなく、対象によって細かく調整しているのか」


「そうです!」


ウィルチが得意げに答えた。


「だから、ケンジさんの治療ってすごいんですよ」


「…………」


俺は黙って聞いていた。


……違う。


俺、そんなことしてない。


別に一人ひとりに合わせて魔力を調整してるわけじゃない。


ただ――


裸が見たいだけなんです。


……とは、言えない。


「なるほど。非常に興味深いな」


ロイド室長が真剣に頷く。


「…………」


なんか、すごい研究者みたいな話になってる。


俺は何も言えず、黙っていた。


ウィルチの話を聞き終えると、ロイド室長は少し考えるように黙った。


そして、


「ケンジ君」


「はい?」


「一つ聞きたいことがある」


「なんでしょう?」


「君は、アテラスについてどう思う?」


「…………」


アテラス?


……何のことだ?


俺は初めて聞く名前だった。


でも、そんなことは言えない。


「……そうですね」


俺は必死に考えた。


そして、とりあえず無難そうな答えを口にした。


「美味しいですよね」


「…………」


「…………」


部屋が静まり返った。


……あれ?


違った?


俺は慌てて付け加えた。


「いや、好みは人それぞれですから。俺は塩をかけて食べるほうが好きというか……」


「ケンジさん」


ウィルチが呆れたように口を挟んだ。


「アテラスって、女神の名前ですよ」


「…………」


「…………」


「……え?」


女神?


俺はロイド室長を見る。


ロイド室長も、なんとも言えない顔をしていた。


……やってしまった。


「…………」


「…………」


「…………」


沈黙が続いた。


数秒だったのかもしれない。


でも、俺には永遠にも感じられた。


何か言わなければ。


そう思うのに、何を言えばいいのか分からない。


やがて、ロイド室長がゆっくりと口を開いた。


「……信仰心ゼロで、治癒魔法……だと?」


「…………」


「…………」


「……はい?」


俺は思わず聞き返した。


ロイド室長は真剣な顔で俺を見る。


「いや……」


小さく呟いた。


「それは、かなり興味深いな」


……え?


怒らないの?


俺は少しだけホッとした。

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