第三十三話 ドラゴン討伐・その後
魔の森での一件から、三週間が経った。
あれから、大変だった。
まず、ドラゴン討伐の件。
カストロさんがドラゴンを討伐したという話は、あっという間に広まった。
元S級冒険者がドラゴンを倒したということで、カストロさんは一躍、英雄扱いになった。
本人は、
「剣で斬ったときの感触が、スライムを斬るのと変わらなかったんだがな」
と言っていた。
その話を聞いた人たちは、
「ドラゴンをスライム扱いしただと?!」
と、さらに騒いだ。
……まあ、実際に一撃で斬ったんだから仕方ない。
そして、ドラゴンの遺体はオークションにかけられ――
なんと二億ギザで落札された。
作戦に参加したのは二十人。
シルヴィアも含め、全員で均等に分けることになった。
つまり、一人につき一千万ギザ。
「……一千万」
俺は、もらった金額を何度も確認した。
一千万ギザ。
……すごい。
そして、その噂も広がった。
ドラゴンを見たい。
討伐した冒険者に話を聞きたい。
カストロさんに会いたい。
そんな人たちが連日ギルドに押し寄せ、ギルドはしばらく大混乱だった。
俺の治癒魔法について聞きたいという人まで来た。
そんなこんなで、魔の森から戻ってきて三週間。
ようやく少し落ち着いてきた。
そんなある日。
「ケンジさん」
シルヴィアに呼ばれた。
「はい?」
「カストロさんが呼んでいます」
「俺が?」
「はい」
「何の話でしょう?」
「さあ……」
俺は首を傾げながら、カストロさんのところへ向かった。
「来たか」
「お待たせしました」
「いや、いい。ようやくゆっくり話せるな」
カストロさんが椅子に座るよう促す。
俺も向かいに座った。
「魔の森では色々あったからな」
「そうですね」
「特に、ドラゴンのときだ」
「……はい」
カストロさんが俺を見る。
「俺の能力が上がったのは、お前か?」
「…………」
「…………」
「いや、あの……」
俺が言葉を濁す。
カストロさんは少しだけ目を細めた。
「図星か」
「……」
バレた。
完全にバレた。
「まあ、そうだろうとは思っていた」
カストロさんは苦笑する。
「治療してもらった直後だったからな。あれだけ身体が軽くなって、ドラゴンまでスライムみたいに斬れたんだ」
「…………」
するとカストロさんが、ふと思い出したように口を開いた。
「それと、ギレンの義手な」
「……はい?」
「あれ、本物の腕だろ」
「…………」
「生やしたのも、お前だな?」
「…………」
言葉が出なかった。
……バレてた。
「……どうして」
「長い付き合いだからな」
カストロさんは苦笑した。
「ギレンの腕が義手じゃないくらい、俺には分かる」
「…………」
「まあ、これも誰にも言うつもりはない」
「……ありがとうございます」
俺は深く頭を下げた。
「それでな」
カストロさんが続ける。
「目立ちたくないお前には悪いんだが……王都へ報告に行ったとき、治癒魔法使いについて聞かれたんだ」
「……はい」
「そこで、お前のことを話してしまった」
「え?」
「安心しろ。お前の規格外の能力については何も言っていない」
「……そうですか」
「ただ、面白い理論で治癒魔法を使う奴がいる、と話したんだ」
「…………」
「それで、王都の魔法研究室から一度、お前に来て話をしてほしいと言われている」
「俺が……王都の魔法研究室に?」
「ああ」
カストロさんが頷く。
「できれば、研究室で一緒に研究したり、講師をしたりしてほしいそうだ」
「講師……」
「ただ、お前がここでギルドの仕事を続けたいなら、俺はそれでも構わない」
「…………」
「一度、行って見てこないか?」
カストロさんは、そう言って笑った。
俺は少し考えた。
王都の魔法研究室。
一緒に研究する。
講師をする。
……正直、ちょっと興味はある。
「……一度だけなら」
俺はそう答えた。




