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煩悩だらけの異世界転移 ~裸が見たいだけなのに聖人扱いされています~  作者: kammy


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第二十四話 神様っているんですか?!

 シリル様に連れられてやってきたのは、この町で一番のレストランだった。


 店内は落ち着いた雰囲気で、見るからに高級そうだ。


「ここが、この町で一番のレストランです」


「なるほど……」


 少し緊張しながら席につく。


 しばらくして料理が運ばれてきた。


「いただきます」


 一口食べる。


「……うまい」


 思わず声が出た。


 さすがは町一番のレストラン。


 今まで食べた料理とは、明らかに違う。


「気に入っていただけましたかな?」


「はい。とても美味しいです」


 シリル様も嬉しそうに笑った。


 料理を食べながら、俺たちはいろいろな話をした。


 その中で、シリル様がふと俺に尋ねてきた。


「ところで、ケンジ殿」


「はい?」


「治癒魔法について、少しお聞きしてもよろしいですかな?」


「ああ……はい」


「ケンジ殿は、どこで治癒魔法を学ばれたのですか?」


「特に学んだことはありません。独学です」


「独学……ですか?」


「はい」


 俺は少し考える。


 そういえば、前にもウィルチさんに似たようなことを聞かれたな。


 まあ、あの時と同じようなことを話せばいいか。


「俺は、人の身体って一人一人違うと思っているんです」


「ほう」


「だから、まずは治療する相手の身体をよく見ることが大事だと思っています」


 シリル様は黙って聞いている。


「同じような症状でも、原因が同じとは限りませんから」


「なるほど」


「それから、実際に触ってみるんです」


「触る?」


「はい。触った感触で、どこが悪いのか分かることがあります」


 もちろん、俺がそんなに細かく魔法を調整しているわけではない。


 でも、これまでの経験から考えれば、たぶんそんな感じなんだと思う。


「それで、身体の状態に合わせて治癒魔法を使うわけです」


「……興味深いですな」


「まあ、俺が勝手にそう思っているだけなんですけどね」


 俺は笑って誤魔化した。


「少なくとも、私はそのような話を聞いたことがありません」


「……そうなんですか?」


「ええ。私は魔法の専門家ではありませんので、詳しいことは分かりませんが」


 シリル様は少し考えてから続けた。


「王都にいた頃、魔術を研究している者と話したことがあります。その者たちは、魔法の効果を分けるものとして、神への信仰が重要だと話していました」


「信仰……ですか?」


「ええ。どれだけ神を信じているかによって、魔法の効果が変わるという考え方です」


「へえ……」


 俺は料理を食べながら考える。


 神様を信じると、魔法の効果が変わるのか。


 じゃあ、俺も神様を信じれば――。


 女性を治療するとき、すぐに治らなくなるとか?


 いや。


 そもそも、どうやって信仰心を調整するんだ?


 治療前に、


 ――神様、今日はまだ治さないでください。


 ……とか?


 いやいや。


 それはさすがに罰当たりすぎる。


 じゃあ、もっと丁寧にお願いすればいいのか?


 ――神様、患者さんの治療が終わるまで、どうかお待ちください。


 ……。


 何をお願いしてるんだ、俺は。


 しかも患者が女性の場合、


 ――できれば服を脱ぐところまで。


 ……。


 駄目だ。


 完全に駄目だ。


 神様に祈る内容じゃない。


「……ケンジ殿?」


「え?」


「どうかしましたかな?」


「あ、いえ。何でもありません」


 危ない。


 昼食中に何を考えているんだ、俺は。


「しかし、信仰と魔法ですか……」


 俺は改めて考える。


「じゃあ、神様を強く信じている人ほど、治癒魔法も強くなるんですか?」


「そのような考え方だそうです」


「なるほど……」


 俺の治癒魔法とは、ずいぶん違う。


 俺は身体の状態を見て、治療するつもりで使っている。


 でも実際には、最近は近くにいるだけで勝手に治ってしまうこともある。


 自分で魔法を使っている感覚すら、あまりない。


「魔法って、難しいんですね」


 思わず口から出た。


「ええ。私にもよく分かりませんな」


「ですよね」


 俺も笑う。


 でも、少し気になってきた。


 俺は今まで、魔法についてちゃんと勉強したことがない。


 治癒魔法も、魔法薬も、ほとんど自分の感覚だけでやっている。


 それなのに、いつの間にか人を治せるようになっている。


 ……これって、よく考えたら結構危ないんじゃないか?


「そういえば、王都には魔法を研究する場所があるんですよね?」


「ええ」


「どんなところなんですか?」


「王都には魔法大学があります。魔法を学ぶ者や研究する者が集まる場所です」


「魔法大学……」


 そんなものがあるのか。


「魔法の基礎から、魔法陣や魔法薬、治癒魔法など、さまざまな研究がされています」


「へえ……」


 俺は少し興味が湧いてきた。


 魔法を一から学ぶ。


 それなら、自分の魔法がどうなっているのかも分かるかもしれない。


 どうして勝手に治るのか。


 どうすれば魔法の効果を調整できるのか。


 自分でちゃんと制御できるようになるかもしれない。


「……一度、ちゃんと魔法を勉強してみたいですね」


「ケンジ殿なら、面白い研究ができそうですな」


「いやいや。俺なんて独学ですから」


 俺は笑って答えた。


 食事を終え、店を出る。


 街を歩きながら、シリル様がふと思い出したように言った。


「そういえば、ソフィアのことですが」


「はい?」


「おかげさまで、とても元気になりました」


「それはよかったです」


「食事も以前と同じように取れるようになりましてな」


「それなら安心しました」


「これなら、来年の結婚式にも間に合いそうです」


「……結婚?」


 思わず聞き返してしまった。


「ええ」


 結婚。


 ソフィアさんが?


 来年?


 ……そうだった。


 伯爵令嬢なんだから、婚約者くらいいてもおかしくない。


「そうですか……」


「病気が長引いていましたから、どうなることかと思っていたのですが、これで予定通り進められそうです」


「それは、本当によかったです」


 そう言いながらも、胸の奥が少しだけざわついた。


 ……俺、何を期待してたんだろう。


「そういえば、赤い連撃には今回、領主として少し多めに報酬を出しておきました」


「え? そうなんですか?」


「ええ。今回の件では、皆さんに大変お世話になりましたからな」


「ありがとうございます」


「もし会うことがあれば、よろしく伝えておいてください」


「はい」


 赤い連撃。


 つい先日、一緒にキラー伯爵家へ向かったばかりだ。


 でも、これはいい。


 シリル様から報酬の話を聞きました、と言えば、自然に話しかけられる。


 特にブレンダさんとウィルチさんには、いい口実になる。


 ……ふふっ。


 思わぬところで、話しかける理由ができてしまった。


 俺は少しだけ嬉しくなった。

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