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煩悩だらけの異世界転移 ~裸が見たいだけなのに聖人扱いされています~  作者: kammy


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第二十三話 デートイベント

 朝。


 今日はギルドの仕事が休みだ。


 久しぶりの休日。


 さて、何をしようか。


 ……いや。


 今日はデートイベントかなぁ。


 もしかしたら、ブレンダさんやウィルチさんあたりが、


『今日は街に行きませんか?』


 なんて誘ってくれるかもしれない。


 あるいは、受付嬢さんの誰かが休みだったりして。


 ……ふふっ。


 そんなことを考えながら、俺はギルドの食堂で朝食を食べた。


 食事を終え、部屋へ戻ろうとしたところで、ふと思う。


「あれ?」


 そういえば、俺が今日休みなのは、みんな知ってるよな。


 ……誰にも誘われてないな。


 ……まあ、まだ朝だ。


 これからだ。


 たぶん。


 俺は気を取り直して受付へ向かった。


「そういえば、赤い連撃は?」


「ソードさんたちですか?」


「はい」


「早朝に来て、依頼を受けて出発しましたよ」


「そうですか」


 なるほど。


 仕事なら仕方ない。


 俺が休みだからといって、みんなまで休みになるわけじゃない。


 ……仕方ない。


 そう自分に言い聞かせて、部屋へ戻ろうとした、その時だった。


「ケンジ殿」


「……え?」


 声をかけられて振り返る。


 そこにいたのは――


「シリル様?」


 キラー伯爵、シリル・キラーだった。


「おはようございます」


「お、おはようございます」


 まさか、こんなところで会うとは。


 もしかして……。


『うちの娘とデートしてやってくれ』


 とか?


 いやいや。


 そんなわけ――。


「先日はありがとうございました」


 シリル様は、俺に向かって頭を下げた。


「い、いえ。こちらこそ」


「直接、礼を申し上げたくて参りました」


「わざわざありがとうございます」


「いえ。ところでケンジ殿は、今日はお休みでしたな?」


「はい。今日は休みです」


「それでしたら、よければ一緒に街へ出かけませんか?」


「……え?」


 街へ?


「ソフィアさんも一緒ですか?」


 思わず聞いてしまった。


「いえ。娘はもう少し屋敷でゆっくりさせる予定です」


「そうですか……」


 ……残念。


「では、どうしましょう?」


「せっかくのお休みですし、この辺りを案内させていただきましょう」


「……わかりました」


 伯爵様からのお誘いだ。


 しかも、先日の件ではかなり世話になっている。


 断るわけにもいかない。


「よろしくお願いします」


「こちらこそ」


 こうして俺は、シリル様と一緒に街へ出ることになった。


 ……おじさんとデートである。


 屋敷から馬車に乗り、街へ向かう。


「この町は、私が治めている領地の中心です」


「そうなんですね」


「この町のことなら、大抵のことは知っていますよ」


 シリル様は楽しそうに話している。


「あそこは最近できた店です」


「へえ」


「あの通りには昔からある店が多いですな」


 街のことを本当によく知っているらしい。


 人気の店。


 最近できた店。


 昔からある店。


 次々と説明してくれる。


 俺はすっかり観光案内を受けている気分になっていた。


 ……これ、デートというより街歩きだよな。


「この辺りは昔から変わりませんな」


 シリル様が、通りを眺めながら懐かしそうに言う。


「私も若い頃は、妻とよくこの町をお忍びで歩いたものです」


「へえ……」


 なるほど。


 シリル様にも、そんな時代があったのか。


「妻と二人で店を見て回ったり、食事をしたり……懐かしいですな」


 シリル様は本当に楽しそうだった。


 ……完全に昔のデートを思い出してるな。


 俺は横で相槌を打ちながら歩いた。


 最初に入ったのは、少し高級そうな服屋だった。


「ケンジ殿。こちらなど似合うのでは?」


「え? 俺にですか?」


「ええ。せっかく街に来たのですから」


「いや、でも……」


 俺は値札を見る。


 ……高い。


「これ、結構しますよ?」


「そうですか?」


 シリル様は店員を見る。


「領主持ちでつけておいてください」


「かしこまりました」


「……え?」


 俺は思わずシリル様を見る。


「いや、俺、自分で払いますよ?」


「なに、今日は私が案内しているのですから」


「でも……」


「気にしなくて結構です」


 そう言って、シリル様は次の商品を見始めた。


 ……領主って、こういう感じなのか。


 その後、日用品を扱う店にも入った。


 服だけでなく、身の回りで必要そうな物もいくつか買う。


「これもいいですね」


「では、それも」


 店員に向かって、


「領主持ちでつけておいてください」


「かしこまりました」


「……」


 まただ。


 俺が先日の礼としてもらった一〇〇万ギザ。


 身の回りの物を買い揃えようと思っていたんだけどな。


 まあ……。


 シリル様がこんなに楽しそうなら、いいか。


 しばらく街を歩いたところで、シリル様がふと足を止めた。


「そういえば、昼食がまだでしたな」


「あ、そうですね」


「それなら――」


 シリル様が指差した先には、大きな店があった。


「この街で一番のレストランに入りましょう」


「……この街で一番?」


「ええ」


 シリル様は嬉しそうに笑った。


 ……なんか、すごいところに連れていかれそうだ。

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