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煩悩だらけの異世界転移 ~裸が見たいだけなのに聖人扱いされています~  作者: kammy


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第二十二話 治療のご褒美

目を覚ますと、目の前にウィルチさんの顔があった。


「うわっ!」


思わず飛び起きる。


……近い。


「ケンジさん、大丈夫ですか?」


「だ、大丈夫です」


……可愛い顔が!!


いや、落ち着け俺。


俺は周囲を見回した。


「その後、どうなったんですか?」


「ソフィア様は、もう大丈夫です」


「本当ですか?」


「はい。身体も軽くなったそうです」


やっぱり、治ったのか。


「それで、あの黒い塊は?」


「ソード、ブレンダ、シードが追いました」


「追った?」


「はい。ケンジさんの悲鳴を聞いて、近くの部屋から出てきたんです」


話を聞くと、三人が入ってきたのはメイドの部屋だったらしい。


そこには、一人の女性メイドが倒れていた。


右足が、途中からなくなっていたという。


「……」


俺は言葉を失った。


あの黒い塊は、ソフィアさんの身体から出てきたあと、そこへ向かったのか。


「その部屋を調べたところ、怪しい紙が見つかりました」


「紙?」


「魔法陣のようなものが描かれていました。ただ、その紙から魔力は感じられませんでした」


「じゃあ、呪いは……」


「消えた、と考えるのが自然でしょう」


ウィルチさんが頷く。


ただ、これで全部終わったとは思えない。


「誰かが呪いをかけた可能性がありますからね」


「はい。黒い塊についても、詳しいことはまだわかりません」


犯人がいるのなら、あとは衛兵に任せるしかない。


俺たちが調べる話ではないだろう。


「皆さん、広間で待っています。行きましょう」


「はい」


俺はウィルチさんと一緒に広間へ向かった。


広間には、シリルさんとソフィアさん。


そして、ソード、ブレンダ、シード、カストロさんがいた。


俺が入っていくと――


「ケンジ殿!」


シリルさんが立ち上がった。


その隣では、ソフィアさんも立っている。


「このたびは、本当にありがとうございました」


二人が頭を下げる。


「えっ!?」


俺は慌てた。


「ちょ、ちょっと! やめてください!」


相手は伯爵だ。


そんな人に頭を下げられるなんて、落ち着かない。


「娘の命を救っていただいたのです。この程度では感謝しきれません」


「いや、でも……」


シリルさんが俺を見る。


「ケンジ殿。今回の治療費についてですが……」


「はい」


「いくらでも支払うつもりです」


「えっ?」


「娘の命に関わることでしたからな。金額など問題ではありません」


いやいや。


いくらでもって。


「少なくとも、相場の十倍。千万ギザはお支払いしたい」


「せ、千万ギザ!?」


思わず声が裏返った。


いやいやいや!


そんなにいらない!


「本当に、そんなに必要ありません!」


「しかし……」


「それに、今回のことは俺が治療したというのも、できれば内緒にしてもらえませんか?」


「……内緒に、ですか?」


「はい。あまり大事にしたくないので」


「ですが……」


「本当にお願いします」


俺は頭を下げた。


「今回の件は、俺がやったことは内緒にしてください」


シリルさんは黙って俺を見る。


しばらくして、ゆっくりと頷いた。


「……わかりました。ケンジ殿がそうお望みなら」


「ありがとうございます」


これで何とか大事にならずに済みそうだ。


「それと、そもそも今回の依頼を受けたのは赤い連撃ですよね?」


俺はソードたちを見る。


「はい」


ソードが頷く。


「だったら、依頼料は赤い連撃にお支払いください」


「もちろん、そのつもりです」


シリルさんは即答した。


「依頼を正式に受けていただいたのは、ソード殿たちですからな」


「ですよね」


「ですが……」


シリルさんが俺を見る。


「ケンジ殿には、ケンジ殿への謝礼をお渡ししなければ、私の気が済みません」


「いや、本当にいいですって」


「そういうわけには参りません」


……強い。


「俺、今回のことは大事にしなくてもいいと思ってるんです」


「ですが、娘を救っていただいたことに変わりはありません」


「いや、でも……」


俺は以前のことを思い出した。


病気の村で治療した時も、最初は大げさなことになっていた。


あの時も、俺としてはできることをしただけだった。


だから今回も――


「本当に、褒美とかは必要ありません」


「それでは私の気が済みません」


「…………」


シリルさんは一歩も引かない。


どうやら、ここで俺が断り続けても話は終わらないらしい。


「……わかりました」


俺は少し考えた。


「じゃあ、百万ギザだけ下さい」


「百万ギザ、ですか?」


「はい」


俺は頷いた。


「身の回りの品を買い揃えようと思いまして」


異世界に来てから、必要最低限の物しか持っていない。


服も、生活用品も、まだまだ足りない。


百万ギザあれば、そのあたりを一通り揃えられるだろう。


「それくらいなら、ありがたくいただきます」


シリルさんは少し考えたあと、頷いた。


「わかりました」


「ありがとうございます」


「では、百万ギザはケンジ殿への謝礼としてお渡ししましょう」


ようやく話がまとまった。


よかった。


これで身の回りの物も買い揃えられる。


それに――


ちょっとくらいオシャレな服を買ってみてもいいかもしれない。


そうすれば、受付嬢さんたちにも少しはモテるかも。


……ふふっ。


思わず口元が緩んだ。

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