第十八話 Aランクの依頼
こうして俺は、冒険者ギルドの職員になった。
仕事は受付や書類整理など、ギルドの仕事を手伝うこと。
住む場所も、ギルドの中に空いていた一室を使わせてもらうことになった。
他の職員は基本的に通いだが、ギルドは二十四時間営業なので、夜中でも誰かしら職員がいるらしい。
俺だけが、ギルドに住み込む形になった。
前世ではサラリーマンをしていたので、事務作業は人並み以上にはできた。
説明用の資料をまとめて、誰が説明しても同じ内容を伝えられるようにしたり、冒険者の情報を名前順に整理して、すぐに検索できるようにしたり。
業務改善をするときには、受付嬢さんたちにも積極的に意見を聞いた。
「このやり方だと、こっちの方がやりやすいですか?」
「はい、その方が助かります」
「じゃあ、こうしましょう」
……受付嬢さんと自然に話せる。
これは素晴らしい。
いや、もちろん仕事のためだ。
決して、受付嬢さんとお話しする機会を増やしたいからではない。
……たぶん。
俺は、みんなが少しでも快適に仕事ができるよう、積極的に改善を提案していった。
そのおかげか、受付嬢さんたちとも、自然に会話ができるくらいには打ち解けることができたと思う。
これは……かなりいい職場かもしれない。
働き始めて一週間。
ブレンダさんが大怪我をして担ぎ込まれたようなことは、一度もなかった。
怪我をしている冒険者はいたが、自分たちで治療できたり、薬草などで対処できたりするものばかりだった。
どうやら、俺が治癒魔法を使うような場面は、そう簡単にはないらしい。
そんなある日。
一件の依頼が舞い込んだ。
その依頼を持ってきたのは、見るからに冒険者ではない男だった。
きちんとした服装に身を包み、立ち振る舞いにも隙がない。
どうやら貴族に仕える執事らしい。
「本日は、依頼をお願いしたく参りました」
受付嬢さんが対応する。
「どのようなご依頼でしょうか?」
「……呪いの除去です」
その言葉に、受付嬢さんの表情が変わった。
「呪い……ですか?」
「はい。主が、呪いを受けてしまいまして」
俺は手が空いている別の職員に聞いてみた。
「呪いって、貴族の方でも簡単には除去できないものなんですか?」
「私も詳しくは知らないんですが……」
その職員は少し考えてから答えてくれた。
「呪いを使う人間自体が少ないんです。その代わり、除去するのもかなり難しいと言われています」
「そんなに難しいんですか?」
「はい。それに、呪いによって解除方法も違うらしいです」
「なるほど……」
「だから、呪いが完全に効果を発揮する前に解除するのは、とても難しいと思います」
俺は執事の方を見る。
どうやら、かなり厄介な依頼らしい。
執事風の依頼人は、必要な手続きを済ませるとギルドを後にした。
しばらくして、受付嬢さんが新しく作られた依頼書を掲示板に貼り出した。
依頼内容は、貴族にかけられた呪いの除去。
報酬はかなり高額。
その代わり、難易度は文句なしのAランク。
高額な報酬に見合うだけの、とても難しい依頼らしい。
貼り出された依頼書を、冒険者たちが遠巻きに眺めていた。
「……呪いの除去か」
「Aランクだぞ」
「誰が受けるんだよ、これ……」
そんな声が聞こえてくる。
Aランクか。
この街でAランクなのは、確かブレンダさんたちのパーティーだけだったはずだ。
ということは、この依頼を受けるのもブレンダさんたちなのかな。
……もしブレンダさんが受けるなら、俺が受付したいな。
ブレンダさんとまた話せる。
いや、仕事だからな。
でも、ブレンダさんが依頼を受けに来て、俺が受付をして……。
……でへへ。
いかん。
俺は紳士だ。




