第十五話 A級冒険者
「道を開けてくれ!!」
「怪我人だ!!」
冒険者ギルドの入口から、数人の冒険者が駆け込んできた。
その中央には、一人の女性がいた。
長い髪をした、かなりの美人だ。
だが、顔色は悪い。
肩から胸元にかけて、爪で深く引き裂かれたような傷があり、服は血で赤く染まっている。
「……ブレンダじゃねぇか!」
ギレンが声を上げた。
「知ってる人ですか?」
ケンジが聞く。
「知ってるも何も、A級冒険者だ」
「A級……」
ケンジには、その凄さがまだよく分からなかった。
ブレンダの仲間らしき男が、ギレンに説明する。
「魔物にやられたんだ。肩の傷もひどいが……毒も食らってる」
「毒だと?」
「ああ。かなり強い毒らしい。手持ちの毒消しも使ったが、ほとんど効かなかった」
ギレンがブレンダを見る。
「ブレンダ、大丈夫か?」
「……大丈夫じゃ、ないわね」
ブレンダは苦しそうに答えた。
ケンジはブレンダの傷を見る。
そして、少し考えてから口を開いた。
「……見てもいいですか?」
その言葉に、周囲がざわついた。
「見るって……何をだ?」
「おい、相手は女だぞ」
「治療するためです」
ケンジは淡々と答えた。
だが、周囲の警戒は解けない。
するとギレンが一歩前に出た。
「いい。ケンジに任せろ」
「しかし――」
「俺が責任を取る」
ギレンが言い切った。
「ケンジが治療をする。それで何かあったら、俺が責任を取る」
ギルド内が静かになる。
ギレンはケンジを見る。
「治せるんだな?」
「はい。たぶん」
「だったら、やれ」
ブレンダもギレンを見る。
少し間を置いてから、静かに頷いた。
「……分かった。お願いする」
「はい」
ケンジは受付嬢に案内され、ブレンダとともにギルドの奥にある治療用の部屋へ向かった。
受付嬢も付き添う。
部屋に入ると、ケンジはブレンダの肩の傷を確認した。
「かなり深いですね」
「……そうみたいね」
「上半身に着ているものを外してください」
「はい」
受付嬢もケンジの指示に従い、ブレンダの衣服を外すのを手伝う。
そのときだった。
ブレンダの肩から、再び血が流れた。
「……っ」
ケンジはすぐに傷口へ手を当てた。
「かなり出血しています」
「はい」
「少し、このままで」
ケンジは傷口を手で押さえ、出血を抑える。
受付嬢も手伝いながら、ブレンダの衣服を外していく。
しばらくして。
「……もう少しです」
ケンジは傷口を押さえたまま言った。
そして、ふと顔を上げる。
「……」
その瞬間だった。
ブレンダの身体が動いた。
「――え?」
次の瞬間。
ゴッ!!
「――――っ!!」
ケンジの顎に、強烈なアッパーが入った。
身体が浮く。
そのまま後ろへ倒れ込み、ケンジの意識は一瞬で途切れた。
――――。
「……」
目を開けると、天井が見えた。
ケンジはしばらくぼんやりしていた。
そして、ゆっくりと思い出す。
(……何があったんだ?)
頭がまだ回らない。
それでも、ひとつだけ気になっていることがあった。
(……見えた)
(……ような)
(……見えてないような)
ケンジは、もう一度目を閉じた。




