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煩悩だらけの異世界転移 ~裸が見たいだけなのに聖人扱いされています~  作者: kammy


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第十四話 冒険者ギルド

ミレーを治療したその日は、モローさんの家に泊めてもらうことになった。


「今日はもう遅いですから、ぜひ泊まっていってください」


 そう言ってもらえたので、ありがたくお世話になることにした。


 夕食の席では、ミレーが普通に食事をしていた。


 昨日までほとんど寝て過ごしていたとは思えない。


「ミレー、今日は本当に元気そうだな」


「はい。自分でも驚いています」


 ミレーは笑っている。


 俺も、その様子を見て安心した。


 ……ただ。


 明日になったら、少しくらい調子が悪くなっている可能性もあるよな。


 二十年間も病気だったんだ。


 一日で完全に治ったとはいっても、身体に負担が残っているかもしれない。


 もし少しでも調子が悪かったら、もう一度ちゃんと診てみよう。


 そんなことを考えながら、俺は眠りについた。


 翌朝。


「おはようございます、ケンジさん」


「……おはようございます」


 ミレーは元気だった。


 普通に起きてきて、普通に朝食を食べている。


 昨日まで寝たきりだった人とは思えない。


「ミレーさん、体調はどうですか?」


「とてもいいです」


「どこか痛いところとかは?」


「ありません」


「身体が重いとか……」


「全然ありません」


「……そうですか」


 俺は頷いた。


 まあ、元気ならそれに越したことはない。


 患者が元気になった。


 それは、本当に良いことだ。


 ……ただ。


(ですよねー……)


 心の中で、少しだけ残念に思ってしまった。


 俺は自分の考えに気づいて、慌てて打ち消す。


(いや、何を考えてるんだ)


(元気になったんだから、それでいいだろ)


 うん。


 それでいい。


 朝食を終えると、モローさんが言った。


「今日はギレンと一緒に町を回るといいでしょう」


「いいんですか?」


「ええ。ギレンも冒険者として登録し直すつもりですし」


「そうか」


 ギレンさんが頷く。


「町のことなら、ある程度は分かるからな」


「じゃあ、よろしくお願いします」


「ああ」


 俺とギレンさんは、まず教会へ向かった。


 教会に入ると、一人の神父が出迎えてくれた。


「あなたがケンジさんですね?」


「はい」


「マルコから話を聞いています。私はゴリーと申します」


「ケンジです。よろしくお願いします」


「こちらこそ」


 俺はゴリー神父に頭を下げた。


 マルコ神父から、アラミの教会に同郷の神父がいると聞いていた。


 困ったことがあれば相談するように、とも言われている。


 町に来たばかりだし、今後どうするかを考えるうえでも、一度話をしておいたほうがいいだろう。


「それで、ケンジさん。何か相談したいことがあるそうですね」


「はい」


 俺は少し考えてから口を開いた。


「俺、治癒魔法のコントロールを、もっと上手くできるようになりたいんです」


「……なるほど」


 ゴリー神父は少し考えるような顔をした。


「向上心がおありなんですね」


「まあ……はい」


 ゴリー神父は頷いた。


「でしたら、冒険者ギルドで相談してみてはいかがでしょう」


「冒険者ギルドですか?」


「ええ。冒険者には怪我人も多いですから」


「なるほど……」


「治癒魔法の経験を積むには、良い機会があると思いますよ」


「……それ、いいですね」


 俺は頷いた。


 怪我人が多い。


 それなら、治癒魔法の練習にはちょうどいいかもしれない。


 今の俺には、治癒魔法をもっと自在に使えるようになる必要がある。


 特に、女性を治療するときに勝手に治ってしまうのは困る。


 ……いや。


 患者なら誰でもいい。


 治癒魔法の練習をするだけだ。


 うん。


「では、そろそろ行きましょうか」


 ギレンさんが言った。


「はい」


 俺はゴリー神父に礼を言い、教会を出た。


 しばらく歩いて、俺たちは冒険者ギルドへ向かった。


「ここが冒険者ギルドだ」


 ギレンさんが指差した建物を見る。


「へえ……」


 俺は少しだけ胸が高鳴った。


 異世界の冒険者ギルド。


 名前だけは聞いたことがある。


 中に入ると、何人もの人がいた。


 受付らしき場所。


 掲示板。


 テーブル。


 酒を飲んでいる人もいる。


「……本当にあるんだ」


「何がだ?」


「いや、なんでもないです」


 俺は少しキョロキョロしながら中を見回した。


 ギレンさんは受付へ向かう。


「久しぶりだな」


 受付の男性が顔を上げる。


「……ギレン?」


「ああ」


「お前、ギレンか!?」


「ああ、そうだ」


 何人かがこちらを振り返る。


「懐かしいな」


「何年ぶりだ?」


「ずいぶん久しぶりだな」


 ギレンさんは苦笑しながら応じていく。


 そして、そのうちの一人がギレンさんの腕を見た。


「……ん?」


「どうした?」


「いや……その腕」


 ギレンさんは両手を見た。


「これか?」


「ああ。お前、片腕だっただろ?」


 ギルド内の何人かも、ギレンさんの腕に目を向ける。


「……そうだったな」


 ギレンさんが何でもないように答える。


「義手だよ」


「義手?」


「そうだ」


 ギレンさんは腕を動かしてみせた。


 指を一本ずつ動かす。


 手を握る。


 そして、近くにあった椅子を片手で持ち上げる。


「……すげぇな」


「本物みたいじゃないか」


「よくできた義手だな」


「ああ。俺も驚いてる」


 ギレンさんはそう答えた。


「どうしたんだ、それ?」


「モローさんと一緒に移動していた先で、たまたま見つけたんだ」


「へえ……」


 周囲はそれ以上深く聞かなかった。


 俺はその様子を黙って見ていた。


(……義手ってことになったのか)


 まあ、そうするしかないよな。


 俺も余計なことは言わない。


 ギレンさんが受付で手続きを始める。


「冒険者登録をし直したい」


「分かりました」


 受付の人が書類を取り出した。


 俺はその横で、ギレンさんの登録を眺めていた。


 冒険者。


 やっぱり、こういうのを見ると少しワクワクする。


「そちらの方は?」


 受付の人が俺を見る。


「俺ですか?」


「はい。ギレンさんとご一緒のようですが」


「ああ……」


 俺は少し考えた。


「俺は、ちょっと見てみたくて来ただけなので」


「……見学、ですか?」


「はい」


 受付の人が少し不思議そうな顔をした。


 俺は別に冒険者になりたいわけじゃない。


 今は治癒魔法の練習ができれば、それでいい。


 そんなことを考えていた、そのときだった。


「道を開けてくれ!!」


 ギルドの入口から、大きな声が響いた。


 ギルド内が一瞬で静まり返る。


「怪我人だ!!」


 俺は入口のほうを見た。


「…………」


 気づけば、俺は立ち上がっていた。

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