欠落した心臓 エピローグ
リアの居た部屋の外へ出れば、オゼロが腕を組み、壁に寄りかかっていた。
薄っすらと笑みを浮かべるオゼロ。デトは無視して去ろうとする。
「やはりリアさんはシフルだったのですね」
背を向けるデトにオゼロが声をかけた。
デトは足を止めた。首だけを動かし、オゼロを見た。
「冒険者ギルドの指導員を圧倒し、僕ですら突破できない認識阻害魔法を潜り抜け、その上、吸血鬼化した元Aランク冒険者を追い詰めた。只者ではないと思っていました」
「よく喋る奴だな」
デトの呆れた声に懲りずにオゼロは喋り続けた。だが、その声は軽いものではなかった。
「……とある文献にはこう載っています。シフルとは魔力というノイズが排除され、人間本来の力を最高に高めた存在……言わば」
〝神の傑作〟
デトの顔は一切揺らがなかった。
オゼロは真っ直ぐデトの目を見ていた。まるで品定めしているかのように。
「……ここの衛兵は随分と博識だな。その文献とやらはどこに置いてあるんだか」
「おや、気になりますか?」
オゼロの声色は揶揄っているかのようだった。
「いいや。生憎、古臭い昔話には興味はない」
デトはそう言ってオゼロから視線を外し、歩いて行った。
閑散とした廊下に足音が響く。
去り行くデトの背を見つめながらオゼロは小さくつぶやいた。
「昔話とは、言ってないはずですがね……」
***
第一章 欠落した心臓 完




