第三十一話 巨大獣ジャガジャガ 黒き牙が龍也を襲う! 1
地球防衛軍の重鎮と国連関係者、そして代々木博士やヘンリー・ストークス博士、ジェイムズ・アームストロング大佐といった人物が熱海リゾートホテル最上階の龍鳳の間に集まり、会議が始まった。
会議の内容は――最近暴挙が過ぎる三島守人防衛軍極東支部総司令を更迭するか否か――といった内容だ。
各国の博士はスーツ姿だったが、代々木博士は下駄履きに白衣で現れた。
彼にとっての正装はコレなのだろう。
一応ネクタイは付けているので正装といえば正装になるのか……。
俺はホテルのアナログTVアンテナにスパイドローンからの映像を繋げるように細工をし、最上階の会議の様子を見ている。
会場の入り口はブルーマフラー隊が防衛しているので猫の子一匹入れないような厳重な警備だ。
ガッダインチームは一応待機とはなっているが、実質巨大獣も破壊ロボットも出てきていないのでホテルで浴衣に着替えて休息を取っている。
一方の俺達も今のところ特に何もないので熱海旅行を楽しんでいる。
メインのはずの司令官であるアクラデス執政官が変な薬で幼い美少女化したあげくに熱海に行きたいと言い出したくらいだ。
そして基地司令代行だったエリーザ様も俺達を追いかけて巨大獣ボルゴガでやって来た。
つまり、今ダバール星人の侵略部隊は……全体がお休みって状態だ。
この後本星からの刺客がやってくるが、それはまだもう少し先の話だ。
それまでに熱海から帰れば特に問題はない……だが、このアクラデスの薬の影響、いつまで続くやら。
本編での性格豹変薬は三日で効果が切れたので、丁度熱海旅行が終わって全員ニコニコした顔でドグローンに戻ったところで全員が元に戻り、ケンカを初めてドグローンの軌道がおかしな形でフラフラ飛ぶシーンで話が終わった。
それと同じくらいだと考えると、明日の夕方くらいにはアクラデスの薬の効果は切れるかも知れないな。
まあ今日は防衛軍の会議だけ見ておいて明日動く事を考えよう。
俺がホテルの中庭に行くと、そこでは捕虜になったはずのタイタン部隊の九人が野球をやっていた。
あいつら、どうにか全員生き残ったみたいだが今度は野球バカになってしまったか……。
まあいい、それは些細な事だ。
俺が部屋に戻って会議室の様子をスパイドローンからの映像で確認すると、三島長官の事についての話し合いの結論が出ないまま話は平行線だった。
更迭反対派の意見としては、三島長官は確かに過激な主張をしているが、実際に甚大な被害が出たかといえばそういう被害は回避できているので有能だという意見だ。
――あの、それ三島の姿のアイツが有能なんじゃなくて、青木大尉の姿のミザーリンのおかげで回避できているだけなんですけど。――
そして更迭賛成派は当然ながら敵に対して加虐的過ぎるだの、方法を選ばないやり方は市民の反感を買うだのといった意見だ。
まあそう言われればそうだ。
だが三島の姿のアイツが捕虜を捕えて非人道的な扱いをしていると言う話は、あくまでも証拠がないので未確認であるから判断材料にならないという意見だった。
「皆様、それではあの三島長官がダバール星人の捕虜に対し、実際に苛烈な扱いをしている証拠が見つかればいいのですね?」
「青木大尉、君の気持ちは分かるが……だからと言って横須賀基地、厚木基地を捜索する暇は我々には無いのだよ……」
どうやら三島の姿のアイツは防衛軍の一部やマスコミに対し、何か賄賂を贈っているのかもしれない。
どうも歯切れの悪い返答をする会議参加者が数名見られるようだ。
「そういうわけなので青木大尉、くれぐれも軽率な行動は取らないように。もし破れば軍法会議ものになってしまうからな」
「……はい、承知致しました」
ミザーリンが不本意そうに返事している。
そうか、ダバール星人の捕虜が加虐されている証拠が見つかればいいのだな。
さて、コレはどうにかしないと……。




