第三十話 巨大獣ボルゴガ 火山の爆発を食い止めろ 9
俺達が助かる為には、エリーザ様に助けてもらうしかない。
ガッダイン5が駆け付けるまでには時間がかかり、鉄巨人イチナナは修理とエネルギー充填の為の休息モード、今動けるのはあの巨大獣ボルゴガだけだ。
また、このブレイン新幹線に付けられている爆弾のタイプは車輪やエンジンが止まると爆発をするタイプなので、空回りでも車輪やエンジンを回し続けなくてはいけない。
そういう点ではこの巨大獣ボルゴガの重力を操る攻撃方法は車輪空回りの固定状態を作るには最適だと言える。
「エリーザ様、アクラデス様も反省していますから、だから助けてくださいー!」
「われがわるかったのだー! えりーざ、たすけてほしいのだー」
あーあ、アクラデスがまたビービー泣きだした。
本当は気取った天才キャラよりもこの奔放な彼女が本当の彼女の有りたかった姿なのかもしれない。
本編でのアクラデスは冷徹、沈着、無表情、とにかく感情といった感情を感じないような能面のようなタイプの美形だった。
だから女バレするまでは彫りの深いハンサムといった感じのシャールケンとは別のタイプの美形として女性人気はかなり高かったんだがな。
だが今の時間軸のアクラデスは、動物を見て可愛いと感じ、ワガママを言ったり泣きだしたり、本来出来なかった事を心行くまでやっているように見える。
――まあ今はアクラデスの事より、エリーザ様に助けてもらう事、その為に龍也との接点を作る話をした方が良さそうだ。
「エリーザ様、もし助けてもらえたら……熱海でガッダインチーム達と同じホテルを取れるように手配しますからー、だからお願いしますー!!」
「本当ですね! 約束ですよ!!」
エリーザ様は巨大獣ボルゴガのグラビティービームを使い、ブレイン新幹線を車輪から浮き上がらせて空中に飛ばした。
助かった! これで車輪は回っているのに機体は固定されている状態、これならマーヤちゃんにドアを蹴り飛ばしてもらえば外に脱出できる!
「マーヤちゃん、あのドアを思いっきり蹴り飛ばしてくれるかな!」
「ご主人様、了解ですー! アチョー!」
あらあら、マーヤちゃん今度はカンフー映画、――吠えろドラゴン・怒りの魔塔――のロバート・リーのマネですか。
マーヤちゃんの全力を込めた飛び蹴りは、ブレイン新幹線のドアをぶち破り、数百メートル先の海まで外れたドアが飛んでいった。
流石はマーダーロイド……。
しかし今回はバランス調整をいじらず本来の能力値にしていたのが幸いしたようだ……。
「ブキミーダ様、ここから外に出れますわ!」
「わ、わかった。アクラデスちゃん、ついてこれるね」
「うん。われ、ついていく」
どうにかこうにかで俺達はブレイン新幹線から脱出し、鉄橋の上の場所に出る事が出来た。
「それじゃあ皆さんを下ろしますわね。ブキミーダ、先程の約束……きちんと守ってくださいよ」
俺達はエリーザ様に降ろしてもらい、どうにか陸橋から線路の上を渡り、地上に到着した。
ふう、助かったぜ。
そして助かった俺達が上空を見上げると、ガッダイン5が到着した。
「何だ何だ? 巨大獣と変なロボットが戦っているぞ」
「龍也、とりあえず一旦地上に降りてみよう」
「わかった、とにかく手を出してきた方が敵だと思えばいいよな」
相変わらず龍也の思考は単純だ。
だが間違ってはいないな、エリーザ様はわざわざ自らガッダイン5を攻撃するとも思えないから。
そして俺達が見ている前であのブレイン新幹線は変形し、新幹線の形に手足の生えた不格好なロボットになった。
「何だ何だこのへんてこなロボットは!?」
「龍也さん、気を付けてください、コイツは見た目よりよほど強いです!」
新幹線ロボは先端の丸い部分を伸ばしてガッダイン5を突き飛ばした。
「うわぁっ!」
「キャアッ!」
突き飛ばされたガッダイン5が陸橋にぶつかり、陸橋の上部がへしゃげた。
「くっそー、コイツ……絶対に許さねえ!」
ガッダイン5対新幹線マシーンの戦いは続いている。




