第179話 底辺テイマーは皇帝陛下と付き人の関係を知る
「それで、貴様、先ほどの言葉はどう言う意味だ」
ガラクチオンは俺たちとアーリアの間に立ち、口を開いた。
そんな姿を見て、俺はひとつ、おおきなため息をついた。
「俺の名前はマックス、こっちがシェリルで、こいつがマガミだ」
「……ああ」
ガラクチオンは警戒を解かないまま、俺の言葉の意味を探っているようだった。
俺はガラクチオンの後ろで、心配そうな顔で様子を見ているアーリアに声をかけた。
「アーリア様、俺たちはあなたに危害を加える気はありません。あなた自身の言葉で聞かせてください。あなたは何に怯えているのですか?」
「貴様のような下賤の者がボルフ帝国の栄えある皇帝陛下に直接話ができると思うな」
「マガミ、ご―」
「やった!」
シェリルに押さえつけられていたマガミは、嬉しそうに答え、ガラクチオンに襲いかかった。
その巨大な牙がガラクチオンの首に込もうとした瞬間、女性の声が止めた。
「待ってください!」
その声に反応するように、俺はマガミの尻尾を引っ張った。
「イタイイタイ、抜けちゃう!」
「ハイハイ、悪いけど、ちょっと下がっていろ」
腰を抜かしているガラクチオンからマガミを引き離すと、アーリアは玉座から降り、俺の側にやって来た。
「ご、ごめんなさい。ガラを許してあげてください」
俺の肩ほどしかない、アーリアは煌めく銀の髪を振りみだし、頭を下げた。
「閣下! このような者に頭を下げるのは止めてください」
「ガラ、ここにはマックスさんたちと、わたしたちしかいないのよ。閣下は止めて。それにこの人たちはわたしたちに危害を加えるつもりはないわ。わたしたちは敵対しない限り」
「……」
「そもそも、マックスさんたちが本気になれば、わたしたちなどたちまち殺されてしまうでしょうね」
アーリアは尻餅をついているガラクチオンに手を差し伸べながら言った。
「……わかったよ。リア」
どうやら、二人はただの主従関係ではないようだ。幼馴染もしくは恋人同士なのだろうか? どちらにしろ、親しい間柄のようだ。
俺が二人の仲を推測していると、ガラクチオンはアーリアの手を取り、立ち上がり、俺たちに頭を下げた。
「マックス殿、シェリル殿、マガミ殿、先ほどまでの態度を謝罪します。そして、アーリアに力を貸していただけないでしょうか?」
「話を聞かせてくれないか」
「ガラ、ここは話をするには広すぎるわ。わたしの部屋に移動しない?」
「ダメです。しかし、確かにここは、秘密の話をするには不向きですね。来賓部屋へ移動しましょう。みなさん、紅茶でよろしいでしょうか?」
先ほどまでの雰囲気が嘘のように、ガラクチオンの態度が柔らかくなった。
俺は、そんなガラクチオンに対して、ひとつ注文を付けた。
「紅茶もいいけど、茶菓子もお願いできるか? 量が多い方が嬉しいんだが」
「……わかった」
こうして、俺たちはガラクチオンに案内されて、来賓部屋に移動したのだった。




