第180話 底辺テイマーは皇帝の話を聞く
「ねえ、どうしたら、こんなにサラサラになるの?」
どうやらアーリアはシェリルのことが気に入ったようで、シェリルの隣に座ると、その長い銀色の髪を触っていた。
シェリルは別に嫌がる風でもなく、山と積まれた焼き菓子をつまみながら答えた。
「別に何もしてないわよ。よく食べて、よく寝て、ちゃんと毛づくろいすることかしらね」
「毛づくろい?」
不思議そうな顔をしているアーリアを無視して、シェリルは続けた。
「あとは愛かしら」
「愛?」
「そうよ。だってマックスと出会ってから、ずっと毛も肌も調子が良いもの」
「そうなの。シェリルさんとマックスさんって、恋人同士なのね。素敵」
「アーリアは、そんな人いないの?」
紅茶を流し込んだ後、アーリアに尋ねるシェリルを睨む視線を感じる。
ガラクチオンはアーリアを呼び捨てにしたのを怒っているようだが、アーリアが黙って首を振る。
その姿をシェリルは勘違いする。
「あら、そうなの。恋は良いわよ。世界が輝くわ。ご飯も美味しくなるし」
そう言って、シェリルは隣にいる俺に抱きついた。
俺はアーリアが褒めたシェリルの髪をなでてやると、本題に切り込んだ。
「それで、恋バナをするために別室に移動したんじゃないだろう」
俺の一言で、空気がピリッと張り詰めるのがわかった。
アーリアはガラクチオンの顔を見ると、ガラクチオンは真剣な顔でうなづいた。
「これから話をすることは他言無用でお願いします」
「分かっている。一国の王の内緒話を言いふらすほど命知らずじゃない」
「それではマックスさんを信じて、お話しします。わたしは皇帝ではないのです」
俺はアーリアの言葉の真偽確かめるために、ガラクチオンの顔を見た。
ガラクチオンはただ、じっとアーリアの言葉を待っているだけで、どちらとも取れなかった。
仕方がないので、俺は直接確認することにする。
「それは影武者と言う意味か?」
「あっ! すみません。そう言う意味ではないのです。元々、わたしは帝王になる予定ではなかったのです。わたしは妾の子なのです。その上、女なのでまず、継承権が回ってくることは無いはずだったのです」
「でも、実際にはアーリア様が皇帝になったのですよね」
「ええ、お父様……前帝王が亡くなったあと、わたし以外の五人での継承者争いが起こりました。それはもう、目を覆うばかりの醜い争いでした。暗殺、謀殺、共謀、裏切り。その結果、お兄様たちは全て亡くなってしまいました」
継承者争いはよく聞く話だが、勝者無き争いになったのか。
それで、継承者争いにかかわらず、ただ嵐が去るのをじっと待ったアーリアに継承権が回って来たと言うことか。
「しかし、よく巻き込まれなかったな」
「巻き込まれるも何も、去年までわたし自身、皇帝陛下の娘だと知らなかったのです。それまでは母と二人で普通の生活をしていましたから」




