第177話 底辺テイマーは帝国に着く
「なんだか、このパターンが多い気がする」
俺は後ろ手に縛られたまま、跪いていた。
俺の左右には人間の姿になったシェリルとマガミも同様だった。
左右には全身金属鎧に包まれた騎士たちが、美しい彫像のように立ち並んでいた。
俺たちが怪しい動きをすれば、即座に襲い掛かってくるだろう。
ヴァレリーを助けた恩人として報告されているはずなのに、これの対応はどういうことなのかヴァレリーに問いただした。
「おい、ヴァレリーさんよ。これはどういうことだ?」
「どこの誰だか分からない者をそのまま、皇帝陛下の前に連れてこれないだろう。我慢してくれ」
「これじゃあ、俺たちが罪人みたいじゃないか」
「お前たちが安全だとわかれば、自由を与えられる。我慢しろ」
「俺は良いけど、せめてシェリルの縄は緩めてくれ」
「……閣下が来る。静かにしろ」
ヴァレリーにそう言われて、静かにするしかなかった。
シェリルが大丈夫かと心配で見たが、特に気にする風でもなく、暇そうにあくびをしていた。
それよりも、マガミのほうが不満そうな顔をしていたが、初めての人間の形態を保持するのに気を取られているようだった。
とりあえず、ホッとすると先ぶれの声が広場に響いた。
「皇帝閣下のおなーりー!」
その声に対し、俺は無意識に頭を下げた。
ここに来るまでボルフ帝国の街並みを見た。重い雪に負けないように腐骨な建物ではあるが、立派な家が立ち並び、往来には人々があふれていた。市場にはいろいろな物が売られ、活気にあふれていた。少しの間であったが、それだけでこの国がかなりの国力を持っていることが分かった。
そんな国の皇帝が、底辺テイマーである俺の目の前にいる。
うかつに頭を上げてはいけないと本能が叫ぶ。
そんな俺の横にいるヴァレリーに、若い男の声が投げかけられる。
「この者たちが、ブラックドラゴンを退けたと言うのは本当か?」
「その通りでございます。ブラッグドラゴンに襲われ、私と言う生き残りがいると言うことが何よりの証拠にございます」
「ブラックドラゴンと対峙できるほどの者が、たかだかその程度の縄に縛り付けられていると言うことはどういうことだ?」
「こ、これは、彼らなりの閣下に対する忠誠心の表れです。自らを戒め、閣下に対する敵意がないと示すものです」
俺は磨き上げられた床を見ながら、ヴァレリーの必死な声を聞いていた。
すると、今度は俺たちに声をかけてきた。
「その者たち、顔を上げよ」
こうして、俺はボルフ帝国第十代目皇帝、アーリヤ・ボルフと対面したのだった。




