第176話 底辺テイマーは帝国に向かう
「船団を沈めたのは、ブラッグドラゴンと言うことにしよう。そして、俺たちはたまたま、イエティたちと一緒に漁をしていて、お前たちを助けた。善戦むなしく、お前だけしか助けられなかった……と言うのではどうだ?」
「……」
俺の提案に、ヴァレリーは考え始めた。
ヴァレリーにしてみれば、手ぶらで帰るよりも、目に見える成果があった方が良いはずだ。ボルフ帝国がシェリルたち魔獣のことをどのくらい知っているかは分からないが、知らなければ目の前でその力を見せればいいだけだ。
しばらく考えた後、ヴァレリーは口を開いた。
「わかった。お前の提案を受けよう……それで、お前の名前は何と言う」
「俺の名前はマックスだ。彼女がシェリルで、こいつがマガミだ」
「マックス、お前の目的はなんだ?」
「ちょっと訳あって、イエティたちに借りがあるんだ。それを返したい。つまり、彼らの生活を脅かすようなことは控えて欲しい」
ヴァレリーは、まだ納得いかないような顔をしている。
「まあ、正直言うと、あんたたちの皇帝陛下に会って聞いてみたいことがあるんだ」
「皇帝陛下に、簡単に会えると思うのか?」
「船団を沈めたブラックドラゴンを退けた英雄たちでも、会うことができないのか?」
まあ、会えなければ会えないでしょうがない。それよりも、ヴァレリーの警戒を解く必要がある。
俺はヴァレリーの回答を待った。
「分かった。お前たちを帝国に連れて行く。しかし、おかしな行動をするなよ」
こうして、俺たちは帝国へ行くことになった。
~*~*~
「この、馬鹿野郎!」
帝国に向かう船の中で、俺はマガミの頭を叩いた。
「何するんだよ」
「そう言えば、お前、俺の言うこと聞かずに勝手に突っ込んでいっただろう」
「いいじゃん、どうせ、あの船を沈めるつもりだったんだろう。先手必勝。」
「だれが、そんなこと言った。初めから敵対している相手以外いきなり、襲い掛かるな。話し合いで済めば、良いんだから」
「お人良しだな~そんなこと言ってたら、いつか死んじゃうよ」
「まあ、ワタシもそう思うけど、そこがマックスの良い所だから、言うこと聞きなさい」
「……はーい」
シェリルに言われて、マガミはしぶしぶ納得する。
なんだか、俺はマガミに舐められている気がする。まあ、シェリルの言うことは素直に聞くから良いか。それよりも、気になることがる。
「なあ、マガミ。帝国に着く前に、人間の姿になっておけよ」
「人の姿? なれないよ」
「なんでだ? 魔獣なら人間の姿になれるだろう」
「そんなの知らないよ」
マガミはその大きな体を横たえたまま、文句を言う。
「なあ、シェリル。カサミも人型になってたし、魔獣はみんな人型になれるんじゃないのか?」
「そうね。気が付いたら人の姿になれてたから、よく覚えてないけど、少し練習すればなれるはずよ」
「だそうだ。帝国に着くまで、シェリルに教えてもらって、人間の姿になれるようになっておけよ」
「えー、めんどくさい」
マガミはそう言いながらも、シェリルに教えられながら、人型になる訓練を始めたのだった。
正直、この大きさのまま、ドワーフの里に行かれると、不便この上ないんだよな。




