第二王子と城から脱出 後半
「メイルス第二王子。城内はいつもこんなに明るいのですか?」
王子はキョロキョロしながら振り返ると肩をすぼめてニッコリと笑う。
「知りません。ですが、私は運が良いのですよ」
「運?」
王子はさっと通路を横切ると、私達を手招きした。
「そうです。だから城の出口まで明るくても不思議ではありません。きっと誰かが何かの目的で協力してくれているのです。ありがたい事です」
その誰かさん達の連係プレイは流石だね。
「第二王子に手を貸したくなるのは、私達使用人だけじゃないですけどね」
スージーが笑顔でそう言った。
きっとこの王子はこうやって周囲の人から支援を受けて来たのかな。
この危なっかしくて憎めない性格じゃ、私でも放っておけないし。
「そういえばあの時は大丈夫だったのですか? 蛇の時」
「え? ええ。私、こう見えても暗殺慣れしているので平気です」
「暗殺慣れ?」
「そうです。運だけで生き残っているのでご安心を」
王子はキリッとした笑顔になる。
「あれって、暗殺だったのですか?」
私が驚いてそう聞くと王子は何でもないような顔をした。
「第一王子は第二王子を暗殺しようと頑張っていましたからねー」
スージーが可愛く笑顔で王子に『ねー』と首を傾ける。
それでいいんだ。王子もスージーもわだかまりは無いんだ。
本人達がそれでいいなら口出す事じゃないけれどさ。
「意外にあっさりなのですね」
「今回、変態の肩書も追加されましたが、私は本当に運がいいだけの馬鹿王子ですからね。毎回、何故か兄上が暗殺に失敗してくれるのですよ」
王子がへにょん顔になる。
運がいいのか悪いのか。運もあるけど使用人達の努力の結果かな。
「でも、考えようによっては兄上のおかげで聖女様に出会えたのですから、人の縁とは不思議なものです」
私も出会えて良かったと思ってる。
だって二人といると楽しいもん。
その後何度も使用人たちに遭遇したが、王子は無事に私をお城の正面玄関まで連れて来てくれた。
正面玄関でいいのかな?
「聖女様。ここが合流ポイントです」
外に出ると目の前はとても広い馬車用のロータリーだった。
遮る物も何もなく、標的にするには丁度良い。
こんな所にいたら私だけじゃなく、王子の身も危険じゃない。
「メイルス第二王子、ここが一番狙われやすいですよ」
スージーも警戒しながらコクコクと頷いた。
「ここの安全確保は事前に部下に頼んでおきました」
いやいや、だから暗殺されちゃうの。警戒心ゼロだなこの人は。
部下さん達には申し訳ないけれど、信用出来ずに王子を死角まで連れて来る。
急いで私は目を瞑って索敵を開始した。
城の中じゃ人が多くて使えなかったけどここなら問題なく使えるし。
なのにどれだけ城の外に集中しても、敵も味方も、誰の気配もしなかった。
「本当ですね。でも護衛もいませんよ」
「はい。私の部下は優秀なのですよ。聖女様は索敵が出来るという情報も入っていましたし」
この人有能なんだか馬鹿なんだかよく分からないな。
基本はきちんと押さえてるし、私が索敵をする事も計算ずくだったなんて。
「心配しなくても大丈夫です。何かあれば私が盾になれます。でも、意外に第二王子を城で殺すのは大変らしいのです」
「ふふ。ありがとうございます」
本当に不思議な人だ。
「そういえば、ハート様に “神の託宣” が発行されたのはご存じでしたか?」
「「神の託宣?!」」
スージーと私が思わずハモる。
なんと!
とうとうハートさんが神になってしまった。
「教会はこの国を滅ぼす気ですか?!」
驚いたスージーが勢い余って王子の胸倉を掴んでいる。
「だ、大丈夫だ。教会はこの国を助けてくれたのだ」
王子は胸倉を掴んだままのスージーの手をタップした。
スージーはホッと息を吐いて乱暴に手を放す。
「ヨルスアージュを一発殴りたい気分です。危うく国が滅ぶところでした。本当に別れて良かった」
会ったら本当に殴りそう。呼び捨てになってるし。
スージーの目はもの凄く怒っていた。
「ははは。私の分もお願いするよ」
王子はふらつきながら、スージーを宥めるように微笑んで見せる。
スージーはそれを見て落ち着きを取り戻すと、恥ずかしそうに微笑んだ。
「それにしても随分と斬新な対応ですよね。 “神の託宣” ですよ?」
「仕方ないよ。国境、王都の外壁門、城壁門、城門と、これだけの場所を面倒な手続き無しで抜ける為だ。見せるだけで通過出来るなんて凄いよね!」
「あはは。使ってみたいです!」
王子とスージーは神の託宣をS○ica扱いして笑ってる。
「実物の “神の託宣” を見られると思うとワクワクしちゃいますし」
「そうだよね、スージー! ワクワクするよね!」
ふたりはとっても楽しそう。
書状って聞いたことがあるから賞状みたいなのかな?
それとも水戸黄門の印籠みたいな何かなのだろうか?
「あ、聖女様。あれそうじゃないですか?」
王子が私の肩を叩いて遠くを指差した。
「凄い数の聖騎士を引き連れてますね。教会本部は聖騎士の数も多いのですね」
「はい……。あれは私の直轄部隊っぽいです」
待機中の聖騎士も含めて第二全部だ。随分と大事になっているのだけれど……。
三人で手をブンブン振りながらジャンプをすると、グレーの制服を着たハートさんとテッドさんがこちらに向かってスピードを上げる。
引き連れて来た大勢の白の制服を着た聖騎士達の中で、二人だけが目立っていた。
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