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DK世界に行ったら100倍がんばる!  作者: 独瓈夢
ラストウオー
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12-04 サンダーボルト作戦

 元魔軍将兵たちは、ゾルビデからその案を聞くと、約80パーセントが義勇軍に参加することを表明した。

参加するリニュルフ義勇軍の総司令官は、人望のあるザーディスとなり、その下にボリゾディス、バリゾディス、デーリング、グヴァシル、それにハイバデイッカ、ボウデイッカ、ローズルなどの参謀も加わって、リニュルフ義勇軍80師団200万人がテラでの戦いに参加することになった。


 モモはハイバデイッカ、ボウデイッカ、ローズルたちリニュルフ義勇軍の参謀を徹底的にしごいた。

「あなたたちは、“作戦は勝てばいい!”と思っているでしょうけど、根本的にそこから間違っているのよ!いいこと? いかに兵を失わずに敵に勝てるか、これが一番重要。武器や兵器はいくらでも補充が利くけどベテランの兵士は大量生産できないのよ!」


 ハイバデイッカ、ボウデイッカ、ローズルたち、元魔軍の天才女性参謀たちは、モモの叱咤の厳しさに涙を流したが、魔軍が近年、その力を失いつつある最大の原因は、ベテランの将校たちを負け戦で大量に失ったことにあると気づいたのだった。

 もっとも、全滅させられた軍団をのぞき、戦いに負けた魔軍将校たちがほとんどの捕虜となって今は義勇軍の主力となったのだが。



 レオはリニョルフ義勇軍と勇者王国軍がGATO側の戦いに加わることをアキレウス王に伝えた。

アキレウス王は200万の援軍が来ると知って、飛び上がらんばかりによろこんだ。

 レオは詳細はアキレウス王に話さなかったが、近代兵器を装備した義勇軍が主体の援軍であり、GOTO側が見事にワシャワシャ条約軍を破り、テラの世界に平和をとりもどした暁には、ワシャワシャ条約加盟国の領土の一部を義勇軍に割譲すること、戦費の一切はアルマライト王国ならびにGATO側諸国が受け持つことを前提条件として示した。


「うむ。その前提条件は妥当だと思うが、一応、GATO諸国と協議をした上で結論を出したいと思う」

さすがに大国の君主であり、長年にわたる諸外国との外交の経験もある王だけあって、アキレウスは独断で決めなかった。


GATO諸国代表との会議がハースタル王国‐マーゴット王妃の出身国‐の首都ボツダムで行われ、三日間におよぶ会議でレオの示した前提条件は承認された。

GATO加盟諸国をして、リニョルフ義勇軍の介入を承認し、戦後に領土を割譲するという条件を承諾させるには、やはりモモから指導を受けたハイバデイッカ、ボウデイッカたち義勇軍参謀のプレゼンがモノを言った。


義勇軍参謀たちは、50台の装甲車と千人の義勇兵をテラに送りこんで、ハースタル王国の演習場で近代戦のシミュレーションを行ったのだ。


GATO諸国の代表たちと軍人たちは、義勇軍の圧倒的な攻撃力、機動力、防衛力にぶったまげた。


「これなら勝てる!」

「ワシャワシャ条約軍も、この義勇軍の前には無力だ!」

「こんな恐ろしい装備をした義勇軍が200万も来るとは!」

「アキレウス王殿も我々も、これで大船に乗ったのと同じだ!」


 

 ハイバデイッカ、ボウデイッカたち義勇軍参謀部は、義勇軍に先駆けてテラに乗り込み、GATO諸国軍と反撃作戦を練りはじめた。


「状況はかなり悪いわね...」がハイバデイッカ つぶやく。

「はい。この首都エリオンシテイに向かっているウインチョスター軍の主力は5万です。

敵主力から50キロのところに3万、さらに上には4万います。

それと北東から3万、北へ回って北から首都を包囲しようとしているウインチョスター軍が4万。

南から回り込んでいるのはアームズ国の主力5万と3万です」


アルマライト軍の将軍が作戦図を指し棒で示しながら説明する。


「この敵主力の後にある後衛部隊もクセモノね。いつ、迂回して背後から迫ってくるかも知れないし、アルマライト軍の正面突破を主力とともに行うかも知れないわ...」

ボウデイッカが、ワシャワシャ条約軍が取りえるであろう作戦を予想する。

「それで、現在、ワシャワシャ条約軍は30万が首都に迫っているというわけね?」

「いえ、それが、ウインチョスター国内の協力者からの連絡によれば、すでに第二次遠征軍の40万が、それぞれウインチョスター、ウエッソン、キンバーの港を出航したとのことです...」

将軍が汗を拭きふき説明する。


「それで、敵の輸送船団は、現在、どの位置なの?」

「輸送船団の艦船数は?速度は?護衛艦はどれくらい?」

ハイバデイッカとボウデイッカから矢継ぎ早に質問が出る。

「目下、調査中です...」

別の将軍が答える。白い軍服を着ているところを見ると、海軍の将軍なのかも知れない。


「軍船を出して至急調べさせて!連絡は... マデンキ‐魔法式遠隔伝達器‐もマソキ‐魔法陣式映像音声送受信器‐もないでしょうから、伝書鳩か何かで!」

「詳しい情報は、追ってお知らせしますが、東大陸の港を出港したのが一週間前だとすると、あと一週間ほどでアルマライト王国の東海岸に到達するでしょう。輸送船団の数はおよそ3千隻、アームズ国、ウインチョスター国、ウエッソン王国、キンバー王国の艦隊に守られているはずです。

ウエッソン王国の艦隊はそれほど大したものではありませんが、アームズ国、ウインチョスター国と

キンバー王国の艦隊は最新鋭の大型戦列艦が多く、乗組員もよく訓練されており、かなりやっかいです」

若い左官級と思われる軍人が補足する。

「わかったわ。じゃあ、一週間以内にワシャワシャ条約軍の遠征軍を海の藻屑と変えてしまいましょう!」

「そうよ。それでワシャワシャ条約軍加盟国に見せつけてやるのよ!義勇軍に、いや、GATOに逆らったらどうなるかってことをね!」


アルマライト軍の若い佐官の名前はフェリッポ・バレンシュタイン中佐。

アルマライト軍の精鋭、近衛騎兵隊の副隊長だそうだ。


「フェリッポさん、あなた頭良さそうだから、義勇軍の参謀部にはいりなさい!」

「ほかにも若くてイケメンで頭のいい将校いたら、連れてきていいわよ?」

ハイバデイッカとボウデイッカは、アキレウス王から

「これと思う人材がいたら、使ってください」

と白紙委任状を受けていたのだ。




 そして三日後にフェリッポは“イケメンで頭のいい将校”たちを連れて来た。


フェリッポ・バレンシュタイン(29歳)アルマライト軍近衛猟騎兵隊中佐

エンリッケ・エリオン・アルマライト(27歳)アルマライト精鋭精鋭エウアンゲリオン大隊少佐

フラヴィオ・アキレウス・アルマライト(26歳)アルマライト陸軍近衛騎兵隊大尉

アレクサンダー・ヴェルード・ペイン(27歳)ハースタル王国海軍少佐(マーゴット王妃の末弟)

ヘルマート・マグナム(30歳)レミントン王国陸軍騎兵隊中佐(カロリーナ妃殿下の兄)

アルマンド・バズーカ・ホウ(25歳)アーモリー王国陸軍近衛騎兵隊大尉

アリス・エルフスリゥス(23歳)アルマライト王国海軍大尉

マーシア・エゼルフッド(28歳)アルマライト精鋭エウアンゲリオン大隊少佐 

フランチェスカ・イザベラ・ド・ロレール (22歳)シグン王国海軍近衛海兵隊大尉

ジャンヌ・アーク・モルトカ竜騎兵隊大尉(21歳)スターム陸軍竜騎兵隊大尉

マリア・ナタリア・アブスブルゴ(19歳)バレット王国近衛騎兵隊少尉

オオミワ・ユウカ  (19歳)    ニッファン帝国皇衛隊少尉



 イケメン将校だけでなく、美女将校たちもいた。

やはりアルマライト軍の将校が多いが、近隣のGATO参加諸国の将校もいる。

 エンリッケ王子とフラヴィオ王子を連れて来たのは、やはりフェリッポもアルマライト国の軍人なので、ゴマをすることで昇進を狙っているのだろう。まあ、それはそれでいい。

 アキレウス王も王子たち‐レオのいとこになるのだが‐を通して、義勇軍参謀部がどのような作戦を立てるかを知るだろうから一々報告をする手間が省ける。


 その日付でフィリッポ中佐が連れて来た若手将校たちは参謀に任命された。

「いいこと、あなたたちは、“作戦は勝てばいい!”と思っているでしょうけど、根本的にそれは間違っているのよ!いかに兵を失わずに敵に勝てるか、これが一番重要なのよ!」

「武器や兵器はいくらでも補充が利くけどベテランの兵士は大量生産できないのよ!」

参謀としての心得を唾を飛ばして説くハイバデイッカとボウデイッカ。

なんのことはない、モモの受け売りなのだが、新米参謀たちは身が引き締まる思いで直立不動で聞いていた。


    GATO作戦図A

挿絵(By みてみん)



「心にとめておきます、ハイバデイッカ参謀長、ボウデイッカ副参謀長!ところで、ワシャワシャ条約軍の輸送船団を“海の藻屑にして見せる”と バレンシュタイン中佐におっしゃったそうですが、具体的な作戦をよろしかったらお教え願えますか?」

直立不動の姿勢のままで、女子将校の中では最年長のマーシア・エゼルフッド少佐が聞く。

彼女は赤髪の美女だ。

アルマライト軍の中でもエリート中のエリート集団である近衛師団の少佐だけあって、年上であることもあり、全員から尊敬されている。

もっとも、男性将校は、彼女が美女なので憧れているのだが…


「いい質問です。エゼルフッド少佐、あなたならどうしますか?」

「それは... 正攻法であれば、強力な艦隊をぶっつけて潰します!」

「それは正論です!しかし、10隻や20隻の船団ではありません。フェリッポ中佐によれば、最低でも3千隻という大輸送船団です。それも強力な護衛艦隊に守られている。小細工は通用しません!」

「でも、我々には敵の大艦隊を迎え撃てれるような艦隊はありません!」

ハースタル王国のアレクサンダー・ヴェルード・ペイン海軍少佐が発言する。

彼はマーゴット王妃の末弟だ。


「アルマライト海軍も、緒戦で多くの軍艦を失っています!」

「シグン海軍も戦力は小さく、とてもウインチョスター王国やアームズ王国の艦隊とは戦えません!」

同じく海軍出身のアリス・エルフスリゥス海軍大尉とイザベラ・ド・ロレール‐シグン王国海軍大尉が発言する。


みんなは固唾をのんで、二人の美貌の参謀長・副参謀長が何を言うか待っている。


「アルマライト海軍には軍船は何隻残っていますか?ハースタル王国には?シグン王国には?」

「アルマライト海軍は、大型艦が8隻、中型艦が15隻です。小型艦はかなりあると思います...」

「ハースタル王国には、大型艦15隻、中型艦28隻、小型艦はたぶん100隻以上...」

「シグン海軍は、大型艦4隻、中型艦8隻、小型艦が50隻くらいだと思います。」

「合計で大型艦が27隻、中型艦が51隻、小型艦が200隻くらいってことね?」

「は、はい」

「はい」

「それくらいです」



 それからハイバデイッカとボウデイッカは大型艦、中型艦、小型艦の規模と性能を聞いた。

大型艦は、3層甲板に100門以上の前装式滑空砲を搭載した、全長70メートル、3500トン、3本マストの木造船で乗員は800~900名。

中型艦は大型艦より一回り小さく、全長60メートル未満、2000トン程度、3本マストで搭載する滑空砲の数は3層甲板に90門ほど。乗員750名。

小型艦は全長50メートルほどの3本マスト艦で、2層の甲板に70門ほど滑空砲を積載。乗員は500名。



    ワシャワシャ条約軍輸送船団

挿絵(By みてみん)



「それだけ聞ければ十分だわ。27隻X100門で2700門、51隻X90門で4640門、200隻X200隻で4万門ね!」

「そう。片側だけの舷側のを発射するだけでもざっと2万3千発の飛翔弾を発射できるわ!」

「例の自動追尾式飛翔弾だったら...」

「4千発もあったら余っちゃうわね?」


「「「「「「「「「「「「「「????????」」」」」」」」」」」」」」」

新米参謀たちはチンプンカンプンだ。


「あの... なにを言っているのか、まったくわからないんですけど?」

アリス大尉がショートカットの栗色の髪の頭をかしげて聞く。

「ところでさあ、アルマライト海軍はワシャワシャ条約軍の船とか拿捕したのないの?」

「沿岸でスパイをしていた中型艦を一隻捉えてあります。」



 翌日、捕獲したワシャワシャ条約軍の中型艦と飛翔弾発射装置を甲板に据え付けた小型船がある港から出港した。捕獲した中型艦の操船はアルマライト海軍の水夫たちがしている。

 二隻は沖合に出ると、中型船を操船していた水夫たちはカッター船に乗り移り、安全な場所まで離れた。小型船に乗っていたボウデイッカは、リニョルフの将校に捕獲された中型艦を飛翔弾発射管理盤でロックオンさせると有眼式自動追尾装置付きの飛翔弾を発射させた。


シュバ―――――ッ!


甲板上を煙りだらけにして口径200ミリの飛翔弾が発射台から飛び出した。


「ワッ!」

「!」

「凄い煙!」


自動追尾式飛翔弾は5千メートルの距離を飛び、折から吹き始めた風で速力の早くなった中型艦のどてっぱらに命中した。

中型船の破片が爆炎とともに飛散し、十数秒のちに爆発音が響いて来た。


ド――ン!


中型艦は飛翔弾一発で見事に沈没してしまった。


「し、信じられん!」

「ウソでしょう?」

「たしかに船を追いかけて行ったよな?」

「一発で沈没させるなんて!」



そのあとがたいへんだった。

もう質問攻めである。


「あの重い物体の中には何がはいっているのですか?」

「どのようにして白い煙で飛ぶのですか?」

「どのようにして目標を追いかけたのですか?」


「あのね... あなたたち、どうやったら子どもが出来るか知っている?」

あまりの質問攻めにハイバデイッカがみんなに聞く。


「.........」

「.........」

「.........」

「.........」


みんなだまっている。

ハイバデイッカが冗談を言っているのだと思ったのだ。

しかし、彼女が冗談を言っているような顔をしてないのに気づいた一人が答える。


「それは、男と女が愛し合って...」

「いや、それは精神面のことでしょう?実際に男の体と女の体のどこがどうなって子どもが生まれるのかって聞いているのよ!」


「.........」

「.........」

「.........」

「.........」


みんなだまってしまった。

職業軍人はそんなことを知らなくても結婚できるし、結婚したら神の摂理で子どもが生まれるのだ。


「わからないでしょう?だけど子どもは生まれる!」

「.........」

「.........」

「.........」


「私が言いたいのは、どうしてこの兵器が空を飛んで敵の船を追いかけて、爆発沈没させたかわからなくても、手順書通りに操作して発射すれば沈没できるってことよ!」

「なあるほど...」

「わかりました。難しいことは科学者や研究者にまかせればいい。私たちはこの新兵器をいかに効率よく使ってワシャワシャ条約軍をやっつけるかなんですね!?」

「はい、ジャンヌ・モルトカ大尉、よくできました!」



 ドワーフの兵器産業、人族連合国の兵器産業はフル稼働で働き、義勇軍参謀部が必要と計算した飛翔弾10万発と1万の発射装置の増産体勢にはいった。

 一方、ナンバ市郊外にあるユウシャコの兵器工場では、24時間体制でND-T3戦闘機の増産がはじまっていた。目標数は500機だ。ドワーフ国の兵器工場でも、ND-T3戦闘機の生産と装甲車および戦車が増産されていた。


 鬼人族国の石油プラントも増産につぐ増産だ。

国土の大部分が砂漠でロクな産業も育たなかった鬼人族国は無尽蔵といっていい豊富な石油資源があり、4年前からユウシャコが独占して油田の開発・精製・販売を手がけている。

おりから訪れたレシプロエンジン時代、火力発電所建設ラッシュ、石油化学の進歩で、今や鬼人族国はミィテラの世界有数の金持ち国となっていた。


 テラに運ばれた兵器は、厳重な警備のもとでレイナード王国のエテルノ教本山の地下一帯にカイオが土属性魔法で作った広大なスペースに収納された。

 もちろん、エテルノ教の中でもそのことを知っているのは、ごく限られた5人にも満たないトップだけで、イザベルの叔父であり、5年前に晴れてエテルノ教の法王となったフェルナンドとその私設秘書、後任の新大神官など数人だけである。


 フェルナンド法王は、そのことをレオから聞かされた時に、リニョルフになったハイバデイッカとボウデイッカたちを見て、

「おお、これは創造主エタナール様がお遣わしくださった、平和をもたらすエルフに違いない!」

と大いに感激した。


まあ、エルフと魔族は正反対の存在なので、リニョルフとなった今はほとんど同じなのだが。



 ハイバデイッカとボウデイッカたちが先遣隊としてテラにやって来て着々と準備を進め、あらかた反撃攻勢の準備が整ったところでレオたちがやって来た。

 モモはすぐにミィテラへ帰るということで、義勇軍作戦司令部‐これもエテルノ教の本山の地下にカイオが作った‐に一日中こもってハイバデイッカとボウデイッカたちの反撃計画を聞いた上でオーケーを出して帰って行った。


「ハイバデイッカもボウデイッカもすごいじゃないか? モモは完璧主義者だから、少しでも予想が甘かったり、見当違いがあったら完全に直すまで承認しないんだよ!」

レオから手放しでほめられて赤くなるハイバデイッカとボウデイッカだった。

それを見ていた新米参謀たちは、“上には上がいるものだ”と思った者もいれば、


“あら、ハイバデイッカ参謀長とボウデイッカ副参謀長も、かなりレオ王にゾッコンね? もう男と女のカンケイはあるのかしら...?”


などと考える女性将校も少なからずいた。

女性は、そんなことには敏感なのだ。



「それで作戦はどうなっているんだ?」


勇者グループが加わって、第一段階として2局面で行われる作戦‐一つは首都エリオンシティに迫るウインチョスター・アームズ両国軍の殲滅と、もう一つは北部から侵攻して来たボローニング、ベネリ、ルガー連合軍の殲滅作戦の机上作戦が念入りに討議された。


「よし、基本は“電撃(でんげき)作戦”だな!」

「えっ、何ですか、その“電撃(でんげき)作戦”というのは?」

「デンゲキ砲とかでも言う新兵器の名前ですか?」


レオが口にしたのは、前世で世界の軍隊を震撼させたある戦術理論だ。


 軍隊が侵攻作戦を進めるにあたって鍵となるのは、戦闘が拡大している間勢いを持続させるために、軍をより高度な連絡能力と機動力を持つ機械化部隊からなる、全ての戦力を敵前線のただ一点に集中し、その後砲兵と歩兵によって穴を開けるという方法であり、支援の爆撃機への指令も前線部隊の要請を中心とした近接攻撃に集中して、敵部隊に強烈な打撃を与える複合的行動だ。


 これにより、前線に穴を開けると、戦車部隊が侵入し敵前線の数百キロ後方にまで侵入させ。これにより敵の脆弱点(安易に破壊または破壊されると著しい損害を受ける地点)つまり、軽武装の兵站部隊、または前線司令部などの敵中枢を攻撃することで、敵の情報を遮断し補給を途絶、あわよくばそのままその戦線で勝利する事さえできるのだ。

この方法によれば、可能な限り戦闘を避けつつ、敵を混乱させることで小規模の軍で大規模な敵軍を撃破できるという優れた戦術なのだ。



 勇者王国軍参謀部は、電撃作戦に似た作戦をゾオルの戦いで用いたが、あれはあくまでも魔軍侵攻部隊に衝撃をあたえることが目的で、ドワーフ軍の強力な地上部隊の支援あってのものだった。

 それを今回は、アルマライト王国の首都エリオンシティに迫っている、ウインチョスター・アームズ両国軍からなるワシャワシャ条約軍の主力を殲滅し、直面する危機をクリアすると同時に、首都周辺に展開している敵部隊を一掃するという目的で実施するのだ。


“高度な連絡能力”“高度な機動能力”“圧倒的な破壊力”“爆撃機”と言っても、テラの軍人たちにはやはりチンプンカンプンだ。

 ハイバデイッカ、ボウデイッカたち元魔軍将校は、同盟国軍の機甲部隊の圧倒的な戦力とND-T3戦闘機の脅威を熟知している。

 そこで、最初の『サンダーボルト作戦』は、レオ、カイオ、ミユなどとハイバデイッカ、ボウデイッカたち義勇軍参謀で立案することにし、新米の参謀たちには“研修参謀”みたいな形で口出しせずに、どのように作戦が立案され実施されるかを勉強させることにした。



  …… ◇ …… ◇ ……◇ …… 



「レオさま、ドワーフ国陸軍のラナ司令官からマソキ電話です!」

ボウデイッカの副官ローズルが豊かな胸を強調するかのように張ってレオに伝えに来た。

「おう、ありがとう!ラナ将軍(ドワーフ軍最高司令官)から?なんだろう...」


作戦司令部の隣室にある連絡指令室にはいり、ホットラインともいえる同盟国各国首脳と連絡できる大型マソキの前に座ると、相変わらず顔色のいいラナ将軍が開口一番に言った言葉がこれだった。


「レオ殿、水臭いではないか?」

「えっ、ラナ将軍、なんのことですか?」

「レオ殿は、今、テラとやら言うところにおるのであろう?」

「は... はい」

「なんでも、レオ殿の叔父上の国に攻め入った向こう見ずなヤツらと一戦交えると言うではないか?」

「モモですね...」


勇者王国参謀室長はラナ将軍の娘なのだ。

彼女が情報を伝えたに違いない。まあ、別段、かくしておくことでもないのだが。


「だから、水臭いと言っているんだよ!なになに、元魔軍兵を2百万送りこみ、戦争に勝った暁には元魔軍捕虜たちに領土をあたるぅ? ガ―――ッハッハッハ! それは面白い!」


ラナ将軍が“元魔軍捕虜”、“元魔軍捕虜”とくり返すので、連絡指令室にいるリニョルフの将校たち‐元魔軍捕虜たち‐を気遣って、レオはハラハラしていたが、ラナ将軍は悪気があって言っているのではないということを彼らもわかっているらしく、平気な顔をして作業をしている。


「そんな面白い戦いをレオ殿たちだけにやらせるわけにはいかん。ドワーフ軍にも是非、参加させてくれ!」




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