12-03 義勇軍
『タゥルン湖畔』には月が出たばかりだった。
「きれい...」
山影から昇って来た満月が、煌々と タゥルン湖畔を照らしている。
数千年の昔、この地に栄えた城壁都市タゥルンの遺跡が丸ごと湖の底に沈んでおり、澄み切った水のため古代遺跡が見えるのだ。
“ここがお姉さまたちが言っていた『恋人たちの湖』ね…”
そして、ヴァシリーサ は、念願だった“初恋の人”レオと濃密な愛の時間を過ごしたのだった。
ヴァシリーサ は、ポマロラ夫妻の娘たちの中でもひときわ美しい娘だった。
なのでオラシアで通っていた小学校時代から、伯爵とか男爵とかいう貴族の息子たちが列を作って告白をするくらいだったが、もちろん、皇女であった彼女には護衛を兼ねた厳しい監視役がついていることもあって、告白はすべて無視され、ラブレターはすべて破られたのだが。
そして15歳のときに、あのズダーリンによる“皇女誘拐事件”が起こり、レオを初めて見たヴァシリーサ は、彼の澄んだ茶色の目で見つめられて“恋に落ちて”しまったのだった。
…… ◇ …… ◇ ……◇ ……
テラの世界での戦いに参加するにあたって問題となっていた課題は、一週間後には解決した。
ヴァシリーサと初デートをしてトンシー大先生の食堂に帰って来たレオは、食後のお茶を飲みながら時間の問題をどう解決するか考え悩んでいた。
エマの両親であり、叔父であるアキレウス王夫妻は何としても助力をしたいし、故郷であるレイナード王国もオリヴィアの母国であるモナルコ王国も、戦乱に巻きこまれ窮地に立つのを傍観するわけにはいなかい。
「あ~あ... なんかいいアイデアないかなぁ...」
テイーカップのお茶を飲み干しつぶやいたところに、ヤマト国のキミコ女王が一歳になったばかりのサヤカとレオの息子タケルを抱っこして来た。
サヤカはキミコ女王の次女で、女王の三人の娘、ミヨカ、サヤカ、ワカメはレオの妻となっており、ミヨカの子どもユウキ3歳半は、すでに将来、ヤマト国の王になることが決まっている。
「レオさま、何かお悩みでもあるのですか?」
「ああ、キミコ女王さま... いえ、女王さまをお気遣いさせるような問題ではないのですが...」
そこにミヨカがユウキの手を引いてやって来て、二人が何を話しているのかを見ると、
「レオさま、ほかならぬお母さまです。テラの問題をお話してみてはどうでしょうか?」
と提案したのだ。
レオからの説明を聞くキミコ女王。
いつの間にか、耀貴妃、カイオ、モモ、アイミ、イザベル、ラン、オリヴィア、シーノたちも周りに集まって来た。子どもたちは、みんなにぎやかに遊びまわっており、アイフィママやヴェロニカさんやエリザベータ、アナスターシャ、ミラーナ、ナターシャたちが後を追いかけて子守をしている。
「なるほど... よくわかりました。事は重大であり、早い決断が必要のようですね。申し訳ありませんが、あのマソキとかいう機械を使わせていただいて、ノブノブ将軍さまと相談してもよろしいでしょうか?」
レオは同盟諸国を巻きこむことは何としても避けたいと思っていたので、誰にも話してなかった。
ヤマト国の首都エドでは午前5時だったが、ノブノブ将軍はすぐにキミコ女王からのマソキ通信に出た。
トンシー大先生とかわいい奥さんのロゼリさんに人払いをお願いして、トンシー大先生の大食堂は緊急会議の場所となった。
「うゥむ... レオ殿、カイオ殿、イザベル王妃、それにオリヴィア王妃の故郷、テラでそんなことになっておるとは... それはワレワレとしても何かせねばなりませぬな... ヤタロウ、サルとタヌキとカチナガ、ノリマキと連絡をとり、緊急会議をとるように計らえ!」
ノブノブ将軍は秘書兼身の回り世話役のヤタロウに命じた。
「そうじゃ、ゾルビデも起こして参加させるがよい。タダノマ人であるゾルビデなら変わった案を出すやも知れぬ!」
そして1時間後、ノブノブ将軍から有望な案がもたらされた。
「リニョルフたちに出兵させてはいかがでしょう?」
元魔軍の将軍で、最初に捕虜になって以来、ノブノブ将軍の手厚い待遇に感激して、ずーっと元魔軍将兵たちの監督庁の責任者をしているゾルビデからそのような提案が出されたのだ。
「イーストランジア戦役以降、魔軍の捕虜数は200万人近くにまでなっていましたが、最近の魔軍第三軍、第四軍、第五軍の投降でその数は300万近くにまで増えました。
これまで、魔軍の捕虜は、ヤマト国や獣人族国、鬼人族国などでタダノマ人やリニョルフになって労働に従事して来ており、その数は彼らの家族を含めて100万人近くになっていますが、これだけ急に捕虜が増えると受け入れる側もたいへんです」
ゾルビデの提案は、これらの元魔軍捕虜たちを、すべてタダノマ人‐デーモンタグと呼ばれる魔法陣が組み込まれたペンダントをつけて魔力をなくした元魔族‐やリニョルフ‐改心殿で魔族からリニューアル・エルフになった者‐にした上でテラへ義勇軍として送りこみ、見事、GATO軍を勝利に導くことに貢献できたなら、ワシャワシャ条約加盟国の領土の一部を彼らにあたえてはどうだろうか、というものだった。
「なるほど、それは名案ね!」
「うむ、名案だ!」
「なんと言っても元魔軍将校だから戦いには慣れているしな!」
「戦争のプロだもんね!」
勇者グループの全員がゾルビデの提案に賛成した。
「義勇軍の移動は、アルフヘイムの聖堂からしかできなけど、聖堂まではドコデモゲートで移動するとして、問題はテラ側ね」
イザベルがテラ側の聖堂は地下にあり、そこから地上に出るには狭い通路を通らなければならないという問題があることを指摘した。
「そうだな... ボクの地属性魔法でも使えたら、トンネルを作るんだけどな...」
カイオが腕を組んで考えこむ。
「テラでも魔法が使える方法があると思うんですけど...」
「ええっ、テラで魔法が使えるって、そりゃシーノちゃんやアイミはかなりの魔素容量があるけど、それも限度があるのでは?」
アウロラの発言にモモが疑問をはさむ。
「ええ。それはわかっています。そうではなくて、ミィテラの世界でふんだんにある魔素をテラに送りこむんです」
「えっ、魔素をテラの世界に送りこむ?どうやって?」
「この前、カナストラの戦いで靉靆の魔術者が使った“アビズム”っていう古代の究極魔法は、黒洞という通路開けるのですが、その通路の向こう側をテラと繋ぐことが理論的に可能なのです」
「アウロラさんの言っていることはわかったわ。つまり、“アビズム”を使ってこちら側の魔素をテラに送るということね?」
「でも、あの時の戦いに参加したリョースアールヴの子たちの話によれば、アウロラちゃんが反魔法であの“アビズム”を消去してなければ、この世界がすべて吸い込まれていたかも知れないって言っていたんだけど、テラで必要な魔素量を吸い出したら、この世界の空気とか不足しないのかしら?」
アナが当然とも言える疑問を言う。
「それは、テラ側で“アビズム”を使えばバランスがとれると思います」
アイミが“アビズム”をミィテラ側とテラ側の両方で開けることでバランスをとることを提案した。
「なるほど。理論的には成り立つな。テラ側はアウロラちゃんが“アビズム”を開けるとして、こちら側は誰が開けるんだい?アイミか?」
「いえ、こちら側はゲート魔法のスペシャリスト、フィンラに開けさせます。あとで通路を開けておく時間をきっちりと計算しなければなりませんが、たぶん、30分もあれば十分かと」
「シーノちゃん、おまえの考えはどう?」
レオが守護天使に聞く。
「たぶん、それで問題はないと思います。そこまで解決法が出たのなら、私からもテラとミィテラの時間の流れを調整する方法の提案があります」
「えーっ、そんな方法あるのなら最初から教えてよー?!」
「だって... お兄ちゃん、戦力とか魔法のこととか、肝心なことが解決してないのに、時間だけを調整してもしょうがないでしょう?」
たしかにそうだ。
魔力を使えない勇者グループなんて、なんの足しにもならないのだ。
それが100万、200万という戦力を送りこむことができるのなら、戦略も練ることができるし、魔法が使える勇者グループは1万、10万の兵力と同等かそれ以上の破壊力がある。
シーノの提案は、例の聖堂の両端に置かれていた例の石で出来たみたいなオブジェ― 1個が5トンほどの重さがある― の数を調整することで、ミィテラの世界とテラの世界の時間の流れの速さを変えるというものだった。
「たぶん、ミィテラの聖堂の10個のオブジェのうち、9個をテラの聖堂に移せばだいじょうぶだと思うわ、お兄ちゃん。そうすれば、ミィテラの世界とテラの世界のリンクを保ちつつ、テラでの時間を90倍近く伸ばすことができるはずよ!」
「そんな簡単なことで解決できるのかい?」
「簡単なようでも、フツーの者には出来ない事よ。エタナールさまの1京分の1の能力と知恵がある私だからできたのよ!」
守護天使さまの鼻息が荒い?
「で、どの期間くらいその調整は融通が利くんだい?」
「たぶん、限度はテラ時間で90日くらいね、お兄ちゃん。それを過ぎるとリンクが切れて、時間の流れに差が生じることになりそうよ。」
「三ヶ月か。それだけあれば十分だろう。勝敗を決せれなくても、GATO側を徹底的優勢にすればいいんだから...」
もちろん、その前にリニュルフ義勇軍の将校たちを近代兵器で装備させ、獣人族国中央部の平原で猛訓練をやらせなければならないが。
モモがバルキュス司令官、イーデル主席参謀たちと検討し、レオに提案したのは、ND-T3戦闘機の投入だった。ND-T3は、ナンバ・ラボとドワーフ兵器廠が2年かけて共同開発した双発レシプロエンジン搭載の戦闘機で、全長9.80 m、全幅12.8 m、600馬力のガソリンエンジン2基で最高速度516Kmに達する。武装は15ミリ機関銃4門と100ミリ飛翔弾20発。乗員は1名だ。
「戦艦も送りたいけど、勇者王国は一隻ももってないのでムリね。その代わり、あるだけの戦車と飛翔弾発射台を集めて送りこみましょう!」
「せ、戦艦を送りこむって、祭壇の魔法陣サイズじゃ通すのもムリだよ!?」
あいかわらずモモの作戦能力はスゴイ。天性の才能だ。
ND-T3戦闘機は主翼や尾翼を分解して運び込む。戦車はそのまま通過させる。
もっとも、聖堂の大理石製の床や階段を壊さないように分厚い鉄板を敷くことにして、移動もアイミたちがお祈りをしてない時間帯にすることが決まった。
…… ◇ …… ◇ ……◇ ……
夕食会も終わり、奥さんたちや恋人たちは、それぞれ子どもを寝かしに帰ったり、ほかの用事で帰ってしまった。
レオはモモとライトパレスにもどり、もう少しテラの作戦の詰め合わせをすることにした。
参加者はレオとモモと│美雨だ。
「レオ、鬼人族国のドウジュ・シュテン大王にも、ND-T3戦闘機や車両用燃料の大量生産をお願いしなければならないわ。それとドワーフ国や獣人族国の兵器工場には、飛翔弾と銃弾の大量生産発注ね!」
「お、おう!食料も手配しないとな?」
「それは│美雨さんがすでに当面の必要量を計算するよう指令を出しているわ!」
「そ、そうか。さすが│美雨だけある。」
「いえ、どういたしまして」
「戦費の方はだいじょうぶなの?私は作戦のことはよくわかるけど、軍資金とかの方はからっきりダメだから...」
「うん。ユウシャコの耀天籟たち、軍需部門が計算してくれているけど、だいじょうぶだと思うよ。テラにおけるユウシャコ・グループの売上金も12年分たまっているから、これはアキレウス国王に金貨で払ってもらうことにするから...」
「ところで勇者王国軍からは、どの部隊が参戦するのだ?」
「たぶん、ヤンガー少佐の勇猛隊とナガジー中佐の戦車隊、ガネーシャ中佐のリザードン部隊の参加は阻止できないわね...」
「だろうな...」
「私は魔大陸での戦いがあるから、あなたたちと24時間、テラでいっしょに戦うことはできないけど、その分、ハイバデイッカ、ボウデイッカ、ローズルたちにしっかりお願いしておくから安心して」
「昨日の敵は今日の友か... まあ、いいだろう。彼女たちもボリゾディス、バリゾディスの二兄弟といっしょに戦えるのでうれしいだろうし」
「さあ、どうかしら?あの四人は以前はアツアツの恋人同士だったってアウロラちゃんから聞いたけど、今はかなり覚めているようよ。それより、あのふたごはあなたに気があるんじゃない?」
「えっ、そうなのか?」
「まあ、あなたにその気がなくても‐その気があったら、どんな娘でも一発で落としちゃうんだけど、あなたには美女を魅了するスキルがあるから...」
「おいおい...」
「ところで、先ほどヴァシリーサちゃんとどこかに行っていたようだけど、どう、戦い前の景気づけで私を抱いてくれない?あっちに言ったらしばらく会えなくなると思うし... ね、│美雨ちゃん?」
「あ、はい。私も今日ヴァシリーサちゃんを見ていて、レオさまにかわいがっていただきたくなりました」
「よし、じゃあ最初はモモだな?今日もフロントホックの外しやすいブラをしているのかい?」
「レオのバカ!...フギュッ!」
シーノに時間遅延スキルの発動をたのむと同時に、モモにチューをするレオだった。
レオはふたたび『タゥルン湖畔』にいた。
モモのと抱き合って。モモはそっと片目を開けて『タゥルン湖畔』にいることを確認すると、レオにチューをされながらうっとりとして念話で聞いて来た。
(レオ... ヴァシリーサちゃんとはどうだったの?)
(いやあ、“初物”はやはりいいね!)
(バカっ!私もレオに処女を捧げたのよ?もう忘れたの?)
(いや、アズマ山の秘湯でモモと最初の時のことは、ちゃんと覚えているよ!)
そう言いながら、レオはモモを横抱きにして茅葺の壁のない小屋に連れて行き、ふんわりしたピンクのフレアシャツのボタンをすばやく外し、やはりフロントホック式だったブラを外す。
ぷりん…
そんな感じでよく引き締まったおっぱいが出て来た。
モモは身長155センチ、体重42Kgでスリーサイズは83、53、84と結婚当初からほとんど変わってない。
(で... ヴァシリーサちゃんとの初デートがどうだったか、イメージで教えてちょうだい...)




