12-01 テラ大戦争
トロール国および獣人族国の魔軍を、それぞれ『オマゾン流域の戦い』、『カナストラ山脈の戦い』で破った同盟国軍は、いよいよ魔王の本拠地、魔大陸へ侵攻する作戦を実施することになった。
すでに、ネイボース川流域の魔軍第四軍の武装解除を終えたヤマト軍5個師団、人族連合軍の15個師団、ドワーフ軍5個師団がそれぞれ魔大陸のアンターカ半島、ゴジラーマ湾、クヴァシル 湾に上陸しており、トロール軍8万も西海岸に上陸すべくオマゾンを出発した。獣人族国軍も30個師団を魔大陸南部から投入すべくドコデモゲートの使用を勇者王国参謀部に申請している。
一方、鬼神国は同国西部の山岳地帯に残る魔軍第二軍を制圧する作戦を、山岳戦が得意なドワーフ軍と隣国獣人族国軍の協力を得て実施すべく準備中だった。
なので、当面の間、魔大陸における作戦は、人族連合軍とヤマト軍が主力となってやることになった。
人族連合軍は、最終的には200師団400万人を魔大陸戦に投入する計画で、ヤマト軍も80師団150万の兵力を準備しており、人族連合軍のタケダ・クレー・ヨンシン将軍、ウエスギ・ティビマ・ルコ将軍やヤマト軍のハシバ・サルキチロー大将やトクガワ・タヌヤス大将もヤル気満々だ。
「ラナ将軍(ドワーフ軍)、ノブハシ総司令官(人族連合軍)、ノブノブ将軍(ヤマト軍)、それに獣人族国軍(ナーガラジャ司令官)より、ドコデモゲートの使用申請が来ています」
勇者王国軍司令部の作戦会議室でモモがみんなに報告する。
魔大陸侵攻作戦について、どこに勇者王国軍を投入すべきかについて作戦会議を開いているのだ。
「... これらの同盟国軍の兵力は、ドコデモゲートを利用して魔大陸に侵攻した場合、一ヵ月以内で600万を展開することが可能となります。また、鬼人族国が獣人族軍とドワーフ軍の協力で鬼人族国西部の魔軍を二か月以内に制圧すれば、さらに400万の兵力を送りこむことが可能となります」
「合わせて1千万の兵力ですか。古今未曽有の大作戦となりますね...」
バルキュス司令官が感慨深そうに言う。
「捕虜になった魔軍軍団長たちからの情報を統合したところ、魔大陸における魔軍の戦力は、新設第四軍が100万、新設第五軍が100万、新六軍の残りが60万、新第七軍が90万、新設第八軍120万、新設第九軍60万で合計530万のようです」
イーデル主席参謀が魔大陸の地図を指示棒で示しながら、元魔大陸防衛軍司令官であったザーディス軍団長がもたらした魔大陸の防衛体制と魔都ルーパダトゥの防衛ラインを示す。
「それで、勇者王国軍の出番はいつなんだ?」
リザードン部隊の部隊長であるガネーシャ中佐が待ちきれないといった顔で聞く。
魔大陸侵攻作戦図
「いや、魔大陸の作戦に勇者王国軍が参加するのは確実だが、その前にみんなに相談したいことがあるんだ...」
そしてレオは、しばらく帰らなかった間に、テラの世界では世界の国々を巻き込む大戦争が勃発していたということを話した。
一週間前にシーノとエマの頼みでテラにもどり、フィッシュベイ村の神の洞に行って、たっぷりと美少女二人とデートをしたあとで、夜着しか持っていなかった二人のために、村にある自宅に彼女たちの服をとりに行った。
家のテラスでサラかあさんとお茶を飲んでいたスケさんは、レオが少女たちの服をとりに来たと聞くと、ティーカップを置いてサラにお茶の礼を言って立ち上がった。
「じゃあ、私もレオさんの服探しを手伝いますよ」
「私もフランソワさまのお手伝いに行くよ。なんでも将軍とかエライ軍人さんが、フランソワさまの屋敷で夕食をとっているらしいからね!」
サラがそう言って去ったあとで、レオに続いて家の中に入ったレオとスケさん。
「じゃあ、地下室にシーノさんとエマさんをお連れしますので、着替えさせてください。そのあとでアルマライト王国へ行かれるのでしょう?」
スケさんはよく気が利く。
「はい。お願いします!」
レオが地下室‐と言っても薄暗いジメジメした地下室ではなく、テラスの床下の明り取りから入る満月の光で結構明るい。
地下室に降りると、そこには体じゅうを石鹸の泡だらけにした美少女が二人抱き合っていた。
「お、お兄ちゃん?!」
「お、おにいちゃん!?」
おどろいてレオを見る二人。
身体からはポタポタと水が滴っている。
おそらく滝の温水シャワーの下で洗いっこをしていたのだろう。
“くっ... 知っていれば、シーノに時間を遅延してもらって洗いっこに加わったのに!”
石鹸の泡に体のところどころを包まれた美少女たちの姿は、大いにレオを刺激した。
「お... お兄ちゃん... 下がもっこりなっているよ?」
「お、おにいちゃん、またするの?」
ダダダダ―――!
レオは階段を駆け上がると、バスにあったタオルを10枚ほど抱えてもどって二人にタオルを投げた。
「早く着替えなさい!テラでは戦争が始まっているんだ!」
「「ええーっ、テラで戦争???」」
おどろきのあまり、バスタオルをつかまえなかったので床に落ちてしまった。
おまけにタオルは体にかかって落ちたので、胸のあたりに付いていた泡がタオルで拭われて露わになってしまった!
.........
.........
.........
結局、地下室で神の祠の続きをやることになってしてしまった。
1時間後、きれいにお化粧をして髪をセットし、美しい衣装を着た美少女とレオはスケさんとともにアルマライト王国の城に現れた。
三人ともさっぱりした顔をしている。
シーノが体力回復スキルをかけたので疲れも残ってない。シーノは創造主の1京分の1の能力をもつスゴイ守護天使なのだ。回復スキルなど朝メシ前だ。いつもはアイミを尊重して彼女にまかせているのだが。
アルマライト城もあわただしかった。
次から次へと伝令の早馬が出たり入ったりし、なにやらを積んだ馬車も何台も出たり入ったりしている。
赤い制服を着た将校と見られる衛兵の一人がレオとエマを見て声をあげた。
「これはレオン王とエマ王女ではありませんか!」
「やあ、こんばんは!」
「こんばんは」
「こんばんわ」
「私はリリエントールと申します。レイナード王国でレオン王殿にお目にかかっております!」
「ああ、あのとき、叔父上たちを護衛していた方ですね?」
「はい、そうです。少々お待ちください。すぐにアキレウス王さまにお知らせします!」
そういうと、その衛兵、いや、近衛兵の将校は近くにした部下を呼んだ。
「アキレウス王さまに、レオン・アルマライト王とエマ女王とあと二名の方がお見えになっていると至急知らせろ!」
「承知しました少佐殿!」
衛兵が走って城の中にはいっていく。
20分後、一行は謁見の間でアキレウス国王とマーゴット王妃と感動の対面をした。
エマは母親のマーゴット王妃に抱きつき、王妃はやさしく抱擁した。
「エマ... あなた見違えるように... 女になったのね?」
「えっ... わかる、お母さま?」
「ええ、わかりますとも。恋する女の匂いがプンプンよ」
“えっ... ヤバっ! 体の洗い方が足りなかったのかしら?”
「シーノさんからも、恋する女の匂いがプンプンたちこめていますよ? ふふふ。」
そう言って、マーゴット王妃はニンマリと笑いながら、レオとエマとシーノを代わるがわる見た。
「お父さまー!」
エマは今度はアキレウス国王に抱きつく。
「おう!エマヌエラもいい女になったな?」
「えーっ、お父さまのエッチー!」
「なんだね、そのえっちーというのは?」
「スケベってことよ!」
「まあ、こんな美女に抱きつかれたら、えっちーな男でなくともえっちーになろうというものだ。わーっはっはっは!」
大笑いするアキレウス国王。
しかし、彼の顔もマーゴット王妃の顔も、かなり疲れが見えるようだ。
それに歳もとっている。
それも当然だろう。ミィテラの世界では魔軍との戦いが行われているため、テラの三倍の速さで時間が流れているため、ミィテラではわずか4年ほどしか経ってないが、テラでは12年も経っていたのだ。
「叔父さん、叔母さん、どうもご無沙汰しておりました。」
「おう。レオンもますますオナゴにモテているようで祝着の限りだな!」
「本当ですわ。エマもこのように色っぽい美人に調教していただいて...」
「ちょ、ちょっと、お母さま? 調教ってなによ――?」
「あのウブで何も知らなかったあなたが、こんなに色香あふれるオンナになれたのも、レオンさまのおかげでしょう?」
“ゲゲっ、やっぱり洗い足りなかったみたい... (汗たら~)”
エマは少々そそっかしいところがあるのだ。
「それで、今日、叔父さんと叔母さんに会いに来たのは...」
「わかっておる。エマとの結婚の報告に来たのであろう?」
「私たちはむろん、大賛成ですわ...」
「ただし、レオンもすでに知っていると思うが、わが国は、ルドルフ・ホットラー大王の率いるウインチョスター連盟軍に戦いをしかけられてな... 正直、苦戦しておるのだ」
* * *
ことの起こりは、アキレス国王の第一王子エンリッケの婚礼に招待された、アームズ帝国の皇太子夫妻が、サライバ港に到着し、馬車でアルマライト王国の首都エリオンシティに向かう途中で反生産主義者であるテロリスト青年に暗殺されたことをきっかけだった。
アームズ帝国とその盟主国であるウインチョスター国は、そのインシデントを理由にアルマライト王国に宣戦布告をし、一挙に攻め込んで来たのだ。
アルマライト王国では、近年はテラの世界諸国との友好を重視する政策に変えており、軍事力は徐々に縮小されつつあった。
しかし、ウインチョスター国では三十年前に革命が起こり、共生産主義― 国の富みや財産は一部特権階級(王族貴族)のものではなく、国民全員が共同所有し、差別のない平等な社会をめざす― という新しい思想のもとに議会政治をはじめた。
この共生産主義思想はまたたく間にテラの世界に広がり、帝王や王を絶対君主とする国々の政府が民衆の蜂起・暴動で倒されるか、または退位を余儀なくされ議会王制国になる国が続出したのだそうだ。
「だがな、実際はルドルフ・ホットラー首相のウインチョスター国が、裏から糸を引いていて、各国の不満分子たちと連絡をとり、大量の武器を送りこみ、戦略の専門家に手伝わせてその国に革命を起こさせ、ウインチョスター国の傀儡政権国を増やしていたのだ!」
「えっ、じゃあそのホットラーというのはかなりの悪党ですね?」
「うむ。ウインチョスター国にせよ、アームズ国にせよ、その実態は帝国秘密警察『オフラーナ』によって国民を監視し、異を唱える者や批判者たちはすぐに抹殺されるか、極寒の流刑地シボリアで強制労働につかされ、寒さと栄養失調で1、2年で死んでしまうかだ...」
テラの世界マップ
ウインチョスター王国は、テラの世界ではそれほど目立つ国でなかった。
アルマライト王国は、歴史ある大国であり、大きな国土と人口、豊かな地下資源、肥沃な土地も多いことから工業、農業ともに栄え、テラ最強、もっとも富める国として他国の追従を許さなかった。
しかし、富める者あればそれを妬む者もいるという諺のとおり、なんとかしてアルマライト王国の富を自国のものにできないかと考える国も少なからずいたのだ。
ホットラーは8年前にウインチョスター国の首相の座についてから、テラの世界でもっとも豊かな国、アルマライト王国を征服することを虎視眈々と狙っていた。
アルマライト王国は資源も豊かで工業もテラの世界で最大なのに加えて、ここ10年ほどは商業も目を見張るほど急成長遂げ、貿易収支もうなぎ上りでさらに同国を豊かにしたのだ。
それというのも、10年前にレオたちがアキレウス国王と販売契約を結んだレディース用の下着、水着などが大ブームになり、それからレオたちが数年おきに里帰りするたびに、清涼飲料水『ユウコーラ』、ファストフード『アイペッツァ』、アパレルブランド『ユウラブ』の製品、高級ファッションブランド『オリヴィーユ』などが世界的ブーム&大ヒットとなり、テラでの商業権を独占するアルマライト王国は、さらに豊かになっていたのだ。
ホットラーは用意周到にアルマライト王国との戦争を計画した。
共生産主義国化した衛星国との間に『ワシャワシャ条約機構』という名前の“友好協力相互援助条約機構”を締結したが、その実態は軍事力の強化だった。
ホットラーは、自国とその衛星国に巨大な秘密警察のネットワークを構築し、政敵、体制の批判者、反対分子、インテリなどを次々と粛清、または極寒の流刑地シボリヤ送りにした。
それとともに厳しい報道規制をし、国内の情報が外国にもれないようにしたのだ。
そして衛星国アームズ帝国の皇太子夫妻がアルマライト王国でテロに射殺されたことをきっかけに、アルマライト王国の隣国ベネリ、ルガー国、それに北半球でウインチョスターについで巨大な軍事力をもつボローニング国が20万の大軍で北から攻め入り、アームズ・ウインチョスター国軍を主力とする東側のワシャワシャ条約機構軍30万の大船団でアルマライト王国の東海岸から侵攻したのだ。
幸い、アルマライト王国の首都エリオンシティは東海岸から300キロほどはいった奥地にあったため、アルマライト王国軍は必死の防衛戦で首都まで150キロの地点でワシャワシャ条約機構軍の侵攻を食い止めていた。
アルマライト王国は、ウインチョスター国が『ワシャワシャ条約機構』を創設したときに『GATO(グレート海条約機構の略称)』を創設して対抗した。
テラの国の中には共生産主義を恐れる国や、王制を維持することを願う国も少なからずいたので、これらの国と友好経済協力条約を締結することで“対抗措置”をとったのだ。
半共生産主義の国々がまとまらなければ、テラは共生産主義者によって占められてしまうとアキレウス国王たちは危惧したのだ。
そのGATOのおかげで、アルマライト王国の北方で国境を接するしてアーモーリー王国やハースタル王国、バレット王国など、がGATO条約に基づいて、アルマライト王国の要請で軍を送りこみルガー国とベネリ国の軍勢をアルマライト王国の北西で食い止め、北部はアルマライト王国軍が激しい攻防を展開している。
ワシャワシャ条約軍侵攻図
「それで、どこの国が『ワシャワシャ条約』に参加して、どこの国が『GATOグレート海条約機構』に参加しているのですか?」
テラ出身であるオリヴィアが心配そうな顔をして聞く。
「『ワシャワシャ条約』参加国は、ウインチョスター国、アームズ国、ベネリ国... それにモナルコ国だ」
「ああ、やっぱり!...」
母国の名前を聞いてがっかりするオリヴィア。
「GATO側は、アルマライト王国、ハースタル王国、アーモーリー王国、レミントン王国、スターム王国...それにレイナード王国だ」
「レイナード王国がアルマライト王国の敵にならなくてよかったよ」
カイオがほっとした声を出した。
「私のお父さまたち、欲深いんです。どうせ、ウインチョスター国のホットラーにうまいこと丸め込まれて傘下に入ったのでしょう...」
「でも、モナルコ王国は小国だし、兵力も小さいですし、アルマライト王国からはもっとも離れた国ですので、まだ戦いには参加していないんですよ」
エマがオリヴィアを元気づけようとする。
「ハースタル王国は、マーゴット王妃の出身国であり、レミントン王国はアキレウス王の長男、エンリッケ・エリオン王子の妻であるカロリーナ妃殿下の出身国であることから、当然、GATO側で戦っている」
レオの説明によれば、中立国も少なからずあり、ミネベア王国はアキレウス王の第二王子フラヴィオ・アキレウスの嫁ガブリエラ妃殿下の母国であるが、西北半球の強国であるボローニング国と何千キロにもおよぶ国境を接しているため中立を維持しており、そのほかにホワ国、ミロク王国、スミトムリア王国、ニッファン国などがどっちつかずの状態であるそうだ。
* * *
そこまでレオの説明を聞いた勇者王国の面々。
「で... レオが、それほど詳しくテラで起こっている戦いの状況を私たちに話しているということは...」
「ワレワレにもテラでの戦に参加してほしいということなのだな?!」
ベンケイがかわいい鼻から荒い息を出しながら聞く。
「おお、ではわが勇猛隊もぜひ参加させて...」
「いや、それはムリでしょ? 考えてごらんなさい。これから魔大陸に本格侵攻するって言うのよ? それをほったらかしてテラでの諍いに首を突っ込むって言うの?」
イザベルが腕を組んでレオを見て言う。
「イザベルさん、レイナード王国のことが気にならないのですか?」
「そりゃ、気にならないと言えばウソになるけど、今は時期が悪いって言っているのよ...」
「レイナード王国もモナルコ王国も小国だから、大国の陰でかばってもらうしかないんだよな...」
カイオも自分の両親の国だけに、やはり心配そうだ。
「じゃあ、私がスケさんカクさんと行ってあげるわ!」
白龍娘アナが87センチの立派な胸を張って言った。
「ヤンガーは勇猛隊隊長だから行けないだろが、わたしは行くぞ!」
「私もパンサー部隊の子たち30人を連れて行きます!」
ベンケイが鼻息荒く言えば、ミユも手をあげる。
「しょうがないわね... じゃあ、勇者グループ、テラ出動よ!」
「「「「「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」」」」」」」




