11-39 永遠の恋人③
神の洞の中はけっこう明るい。
奥行きは50メートルほどだろうか。行きどまりの奥の岩からは地下の川からの水らしいものが流れ落ちていて、そこから幅5メートルほどの川になって海へと続いている。
地面は適度に乾燥していてでこぼこもない。
シーノとエマは川が浅いのを見て、サンダルを脱いで手にもって川の中を歩きはじめた。
「お兄ちゃん、この水ちょっとあたたかいね?」
「シーノちゃん、ほらっ、奥に滝があるわ!」
エマがパチャパチャと川の中を走って行って、3メートルほどの高さのところから流れ落ちる水に手をふれた。
「この滝の水もあたたかい!まるでシャワーみたい」
「ああ、地下水ってけっこうあたたかいからな」
そう答えながらレオは、“あれっ、こんな会話、以前にした記憶があるな…”と考えていた。
そして、エタナール様がこの洞を造ったあとに、オリヴィアを連れて来たときに、まったく同じような会話をしたのを想い出した。
洞窟の奥の広くなったところの片すみに藁がたくさん敷いてある。
シーノとエマは洞窟の隅に藁がしかれ、その上になめし皮が敷かれているのを見て、そこがレオお兄ちゃんと彼が愛する女性たちが過ごすの愛の褥だとわかった。
そばの壁にある棚にはランプが置いてあり、レオは火を灯した。
そして、隅においてある枯れた枝をかまどに枯草といっしょにいれ、火を起こす。
すぐに洞窟の中はあたたかくなった。
「さて... ここにシーノとエマを連れて来たのは、おまえたち二人とオレの関係を整理したいからだよ」
「生理? 今日はわたし生理じゃないからだいじょうぶ!」
「その生理じゃない、物事をキチンとする整理だよ! って、エマ、おまえヤル気満々だな?」
「だって、おにいちゃんが、ここに連れてきてくれたのは、愛し合うためでしょ?」
何事にもエマは積極的なのだ。
「ま... まあ、オレとしては旬の美少女を二人も、ただで飼っておく趣味はないんだけど...」
「「ええーっ?!」」
シーノとエマが唖然とする。
「というのは冗談で、実は、シーノもエマももう二十歳になったんだし、ここらでオレと結婚して正式に奥さんにした方がいいと思ってさ!」
「します、します!おにいちゃんと結婚します!ワーイ、やった―――っ!」
エマはレオに飛びついて、またメロンを押しつけてうれしさを現した。
「私はお兄ちゃんの奥さんになりません!」
「へっ?! シーノ... おまえ、お兄ちゃんが嫌いなの?」
シーノがレオに飛びついて来た。
エマが横に身体をずらし、シーノが抱きつけるようにする。
「お兄ちゃんのバカ!バカバカバカ!」
ぽかぽかとこぶしでレオの胸をたたく守護天使。
「おいおい、どうしたんだ、シーノ?」
「私がお兄ちゃんを大好きだって知っているくせに... この体をエタナール様からいただいたのも、ひとりの女の子としてお兄ちゃんに愛してもらいたかったからよ!」
「それはよく知っているよ」
「じゃあ、私を愛して!たくさん、たくさん愛して!アイミさんみたいに、オリヴィアさんみたいに、│美雨さんみたいに、セレシアさんみたいに!」
さすが守護天使だけあって、ほかの誰もが知らない、レオのお気に入り奥さんの順位をよく知っている。
“こんなことエマに知られたらマズいぞ... こんなことほかの奥さん連中の耳にはいったら大騒動だ…”
そう思ってエマを見ると、エマはシーノを見てにっこりと笑ってフリーズしていた!?
おそらくシーノが時間遅延スキルをかけたのだろう。
未練がましく、エマのメロンの感触から離れ、シーノを思いっきり抱きしめてやる。
83センチから75センチに“サイズダウン”したおっぱいをパジャマ越しに感じる。
シーノは創造主に16歳にしてもらった時、身長もバストもヒップも二回りほどサイズアップしたのだが、その後どういう心境の変化か、JC並みの身長とスリーサイズにもどってしまったのだ。
いや、今どきのJCなら、Cカップ、Dカップという大きなおっぱいの持ち主も前世ではいくらでもいたから、シーノのサイズは控えめすぎる感がしないでもない。
少しうるんだ翡翠色の目でレオを見上げているシーノを見ると、レオはたまらなくなって、その小さなあごに手をあてると、思いっきりそのかわいい唇にチューをした。
「フギュッ!」
.........
.........
.........
しばらくして―
「シーノ。これで満足したかい?」
「ア、アイミさんに... 回復 まほう... かけて もらわないと...」
「じゃあ、観念してお兄ちゃんのオヨメさんになるか?」
「オ ヨ メ さん には ならない... コ イ ビ ト になる...」
「恋人――っ?」
「うん... お兄ちゃんの 永遠の恋人になるの!」
「そうか。それでもいいな...」
そのあとで、フリーズから解かれたエマにも応えてあげたレオ。
.........
.........
.........
エマもナマコのようにぐたんとなってしまった。
「おにいちゃん... ゼツリンすぎるわ... 奥さんや恋人が30人近くいて助かった。じゃないと、私のカラダどうかなっちゃう!」
そしてエマはレオの正式な奥さんになることに、もろ手をあげて賛成した。
「よし、じゃあテラに来たついでに、アキレウス叔父さんとマーゴット叔母さんに、このことを報告しに行こう!」
「わーい!お父さんとお母さんに会えるのねー?!」
「うん。そうしよう。オレ、今からシーノとエマに合う服をとって来るから、その間に二人ともこの滝でシャワーを浴びててよ!」
「「は――い!」」
フィッシュベイにレオが新築した家には、エマがミィテラの世界へレオと冒険旅行に出るときに、母親のマーゴット王妃がもたせた“花嫁道具”が五棹ほどしまってあるのだ。
その中には衣装もたくさんあるし、オリヴィアの“花嫁道具”も五棹ほどあるので、二人分の着る服くらいは用意できる。
たっぷりと二人の美少女と楽しんだあとでハッピーなレオは、祠から家までわずか20分ほどの距離をわざわざスケさんに瞬間転移してもらうこともないと考え、口笛を吹きふき夜の浜辺を歩いて4年ほど前に新築した二階建ての家にやって来た。
近づくと玄関の前のテラスで、黄色コスチュームを着た男がテーブルに座ってサラと向き合ってお茶を飲んでいた。
「こんばんは、母さん、スケさん」
「あら、レオン。帰っていたのかい?」
「こんばんは、レオさん」
「うん。先ほど帰って来たんだけど、シーノとエマに着せる服をとりに来たんだよ!」
「シーノちゃんとエマちゃんが来ているのかい?」
「うん。二人とも薄着で来たから、暖かい服を着せようと思って」
「そう。早く持って行ってあげなさい」
「うん、そうするよ。地下室にしまってあるから探さなきゃいけないけど...」
そう言いながら階段を上がってテラスに出たレオは、そこから見えるイザベルの実家の横の波止場に大きな軍船らしい船が数隻停泊しているのを見た。
波止場にも夜だというのに、ガスランプが煌々と照らされて明るくなっており、その明かりの下をせわしなく動いている多くの人影が見える。
「.........」
レオが立ち止まってそれを見ていると、スケさんが言った。
「テラでも戦争が始まったらしいですね...」
「えっ、戦争? レイナード王国が?」
「いえ、アルマライト連合軍とウインチョスター連盟軍とかの戦争で、レイナード王国もアルマライト連合の一員として参加しているようです」
「えええ―――っ? それってテラ大戦争じゃないですか―――?」




