11-21 ゾオルSOS③
その龍たちは突然、ラガルの空に現れた。
演出効果を考えたのか、巨大な龍たちは東から上りつつある陽の光を遮りながら飛んで来た。
必死になって戦っている獣人族の兵士たちさえも“獲物”と見て、鋭い嘴や爪で攻撃していたディアボニクスたちは、本能で“敵”が来たと感じたのか、血が滴る肉片を嘴に咥えたまま、爪で民家のドアや窓を引っかきながら、急に暗くなった空を血走った目で見上げた。
ギギ―ィ!
ギギ―――ッ!
ギ――ャッ!
ギギ――ッ!
獲物を襲うことに集中していたディアボニクスたちは、朝日を浴びながら西から急速に接近する群れを見て驚いている。
ギャッ?
ギギーィ?
ギギッ?
ギャッ!?
しかし、ディアボニクスたちは、ハンターの本能で“新たな食い物”が現われたと考え、ヨダレを垂らしながら向かって行った。
ラガル上空に達した巨大な龍たち。
先頭を飛んでいた100メートル近い白龍が飛行しながら大きな翼を小刻みに震わせた。
小刻みというか、目に見えない振動を起こしはじめたのだ。
大きな翼を高振動しながら、巨大な白龍は大きく翼を下方に向けて羽ばたいた。
超振動の空気の波が地上めがけて瀑布のように襲いかかった。
ギェーッ!
ギェッ!
ギェェッ!
ギィーッ!
ケモノの本能で、危険だと気づいて逃げだそうとしたディアボニクスたちが、超振動の空気の瀑布にあたって、次々に頭が飛び、翼が砕け、体が四散し、数百匹が一度にひき肉になって落下していった。
それは地上にいたディアボニクスも同様だった。まるでニワトリを潰したかのように4、5百匹が一度に斃されていく。
むろん、ディアボニクスたちだけでなく、屋根や窓、戸、木なども吹き飛んだり、壊れたり、木々が折れたり倒されたりしている。
絨毯爆撃ならぬ、絨毯超振動瀑布なので、300メートルほどの幅になってディアボニクスたちを殲滅していくのだ。
「アーナンダさんの破壊力、ハンパじゃないね...」
作戦司令部でモニターに映る白龍部隊の様子を見ていたレオがうなるように言う。
ホワイトドラゴン偵察隊に白龍部隊たちの戦いをマソキで転送させて見ているのだ。
「たぶん、あれでもアーナンダさんは手加減をしているのよ...」
レオの横にいるアナが説明する。
「えっ、あれで手加減?」
「そうです、レオさま。本気出したら、たぶん、幅10キロくらいはホコリになってしまいますから、なるべく民家などに損害をあたえないように加減して攻撃していると思います」
「アナの言う通りじゃな。アーナンダの能力は、私のを超えているからな...」
「えっ、白龍王さんのを超えている?!」
「白龍族という種族は、長生きすればするほど、能力が増すのじゃよ...」
「それは知りませんでした...」
「それと、レオ殿はいい加減に私のことを白龍王と他人みたいに呼ぶのはやめて、そろそろプラキルスタおじいちゃんと呼んでもいいころじゃないかね?」
「は... はあ... プラキルスタおじいちゃんですか?」
「ブラおじいちゃんでもゴッドおじいちゃんでもよいぞ?」
“いや、ブラおじいちゃんって、女性の下着フェチのじいさんみたいだし、
ゴッドおじいちゃんって、神様のおじいちゃんみたいじゃん?”
思い切りドン引きするレオ。
「はあ... 考えておきます」
(そうだな。では、プラキルスタおじいちゃんにしておくか...)
「プーッ、なに、そのかけあい?まるで漫才みたい!」
「なに、アナちゃん、なにが面白いの?」
アナが噴出したので、モモが興味をもって聞き、それを周りで聞いていたイザベル、アイミ、アウローラ、ラン、ベンケイやバルキュス司令官にイーデル参謀たちまでが腹を抱えて笑い出してしまった。
全長30メートルの白龍となったアシュマナーダは、地上の民家や施設に損害が出ないように水平方向に巨大なブレーズボールを吐き続け、やはり大量のディアボニクスたちをヤキトリにし、ズミレンママは、凄まじいワールウィンドを吐き散らし、逃げようとしているディアボニクスたちを挽肉にしていく。
アナヴァタプタは60メートルの銀龍になり、目に見えない殺人波を下方に向かって放つ。
殺人波に当たったディアボニクスたちは、一瞬にして体の内部から焼き尽くされて落ちていく。ディアボニクスたちは波長10センチの高出力電磁波‐いわゆるマイクロ・ウエーブ‐を浴びて瞬間的に“チン!”となったのだった。
ラベンダー色の龍となったウパナンダは、やはり全長が50メートルを超している。
彼女が放つ龍の声を聴いたディアボニクスたちはたちは、仲間を獲物と考えて共食いをはじめた。彼女は人族形態のときは美しい女性なのだが、その能力は恐ろしいものだ。
一方、大海龍王サーガラは、アーナンダに次ぐ全長90メートルの青い龍になっていた。
娘の海龍女帝ニーニローリアと仲良く同列に飛んでいる。ニーニロリアは60メートルほどの青い龍となっているが、龍になっても体つきはなんだかグラマラスなように見える。
二人が通っているところの周囲の空気が凝縮して数百メートルの幅にわたって大粒の雨を含む激しいスコールとなってディアボニクスたちに降りかかったとみると、たちまち焼けただれて落ちていく。
マナスヴィンは50メートルを超す龍となり、フリーズブレスを吐き、ディアボニクスたちを凍結して行く。
カクさんは、その死神のような目でひと睨みごとに数百匹ずつバタバタと落とし、スケさんは大きな翼で羽ばたくごとに、ディアボニクスたちを数百ずつ塵粒に変えていく。
「白龍族って、一人ひとり、違った能力をもっているんだな...」
呆然として八大龍王たちの戦い‐と言えるようなものではなく、一方的な殺戮だが‐を見ていたレオがつぶやく。
「そうじゃありませんよ、レオさま。」
「えっ、そうじゃないって?」
「あの龍王さんたち、みんなどの攻撃スキルでも使えるのですけど、ここでおじいちゃんとレオさまたちが見ているのを知っているから、ひとり一人違ったスキルをわざと見せているのですよ!」
「ゲゲゲッ!龍王さんたちって、自己顕示欲ハンパないな!」
そして白龍王の顔を見て、それからとなりにいるアナを見た。
「プラキルスタおじいちゃんは、あれらのスキルを全部使えるとして...」
プ~ン…
どういうわけか、どこからか蚊が飛んで来た。
「ヒューゥゥゥ...」
アナがかわいく口をすぼめてスプレー殺虫剤のようにフリーズブレスを吐き、蚊は冷凍蚊になってコチンと床に落ちた。
「アナちゃん、スゴイ!」ランがおどろく。
「アナちゃん、あのアナヴァタプタさんがやったような、目に見えない何かで敵を焼いたりできるの?」
イザベルの問いに、アナは床に落ちた冷凍蚊をヒョイと指さすと、冷凍蚊はたちまちこんがりと焼きあがってしまった。
「アナさん、そのスキル凄すぎない?」アウロラもビックリしている。
「ええ。でも、私はまだ白龍族としての経験値も少ないし、歳も若いので、それほど威力はありませんけど...」
「でも、蚊退治には不自由しない能力なんだな...」
「レオさまったら、ヒドーイ!プンプン!」
レオの冗談にプーっとふくれっ面をする白龍奥さん。
「そんなに怒るなよ、アナちゃん。冗談だよ、冗談!ヨシヨシ」
レオがアナの頭をなでると、アナは目を閉じて幸せそうな顔をする。
「あーアナちゃんだけズルい!わたしも、わたしにもヨシヨシしてください!」
ミユが寄って来てレオにしなだれかかる。
「お、おう!ミユもヨシヨシ...」
「私もしてもらいたいのですが... レオさま?」
「わたしもして欲しわ」
アイミとイザベルが近寄ってくる。
「わ、わたしにもヨシヨシをしろ!」
ベンケイまでが顔を少し赤くしてレオのそばに来て、青い髪をヨシヨシしてもらってニコニコしている。
「じゃ、じゃあ、私も!」
モモまでがのどをゴロゴロさせて‐そんなわけないのだが‐寄って来た。
「エー… コホン、コホン!」
バルキュス司令官のわざとらしい咳でモモはハッとする。
今はイチャイチャしている時間ではないのだ。
「任務、任務と…」
アイミやイザベルなどが頭をヨシヨシされているのを、羨ましそうに見ながらモモはモニターに目をもどす。
レオと奥さんたちのイチャイチャを見ていた白龍王。
“それにしても、レオ殿はよくこうも美女たちに慕われるものだ...”
と目を細めて見ていた。
モモがモニターの画面を見たとき、まさに麒人族の戦士たちがディアボニクスの大群に襲いかかろうとしたときだった。
彼らは向かってきたディアボニクスの大群の周囲を包囲するように― と言っても、白龍族たちにかなり殺されたとはいえ、まだ半分以上が残っていたのだが― その残ったディアボニクスの大群の周囲を麒人族の戦士たちは螺旋状に2列縦隊で囲んだ。
それから始まったディアボニクスの殺戮―
体長10メートルほどの麒人族の戦士たちは、両手にもった長さ4メートルほどの長剣で片っぱしからディアボニクスを切り裂いていった。
頭を切られ、胴を切られ、羽を切られたディアボニクスたちは、叫び声を上げながらどんどん落ちて行く。
ディアボニクスたちも大根のようにだまって切られているわけではないのだが、麒人戦士の強さは比類ないものだった。
4、5匹の集団で襲いかかるディアボニクスたちを、両手にもった長剣を水車のようにふり回しながら切り飛ばしていくのだ。
「コイツら、わたしといい勝負できそうだな?!」とベンケイさえ認めるほどの戦いぶりだ。
それに、麒人戦士たちは、表面を硬い鱗状の皮膚で覆われており、その上からアーマーを着ているのので、ディアボニクスから鋭い嘴でつつかれても長い爪で引っかかれても傷一つ負わないのだ。
麒人族戦士に囲まれて攻撃を受け始めたことで、ディアボニクスたちは逃げ場を失って包囲の中を恐怖にかられて飛び回り、白龍族たちの格好の餌食となった。
それは、ある種のクジラが水泡で壁を作り閉じ込めた魚を一斉に捕食するのと同じだ。
獲物が網の中に囲まれたことで、白龍部隊の攻撃もさらに効果的になり、一度の攻撃で数万匹ずつが墜とされていく。
― ― ― ―
― ―
―
かくして、2時間ほどの戦いでディアボニクスたちは殲滅されてしまった。
その結果を見とどけて、白龍部隊は来たときと同じように東へ飛び去って行き消えた。
麒人族戦士の部隊も、やって来た方向へもどって行き消えた。
白龍族たちが『雅の間』にお腹を空かせて帰ってくると白龍王から聞いたレオたちは、ふたたびマサさんたちを呼んだ。
何もせずに白龍族と麒人族の戦いをモニターで見ていた白龍王にも手伝ってもらって、ヤマト国の漁港から新鮮な魚を瞬間転移でもって来てもらった。
ふだんであれば、白龍王たるもの、そんな“雑用”などはしないのだが、レオが“プラキルスタおじいちゃん”と呼んだことで‐実際は白龍王がそう呼んでくれとレオに言ったからだが‐喜んだ白龍王は機嫌よく“雑用”をやってくれたのだ。
新鮮な魚をもって来たのは、白龍王妃アシュマナーダたちが昨夜、舌鼓を打った寿司をディアボニクスを殲滅した白龍たちに奢るためだ。
白龍妃たちは昨夜お腹いっぱい食べたが、まだ寿司を食べてないサーガラ‐大海龍王‐やウパナンダ、マナスヴィンなどが寿司を“ディアボニクスを全滅したご褒美に”と所望したからだ。
おかげでマサさんたちは、朝早くから起きて『雅の間』に新鮮な材料を持ちこんで、白龍部隊の饗応をするハメになったのだが、マサさんも、弟子のテツちゃん、シンちゃん、ケンちゃんたちもニコニコしている。自分たちの握る寿司をよろこんで食べてくれる客がいることをとても喜んでいるのだ。
レオは、麒人族戦士5万人にも寿司をご馳走しなければならないかと心配したが、
「レオ殿、彼らのことは一切心配することはありませんよ。ディアボニクスの焼肉は美味なのが知られていますので、ヴァースキたちにお願いして、アナヴァタプタがこんがりと焼いたディアボニクスを2、3万匹ほど、麒人族戦士たちが戦勝祝いを開く場所に送っていただきましたので!」
とのアズリンパパの言葉にホッと安心したのだった。
ディアボニクスの肉が美味なのは、ヤマト軍が乾坤一擲の決戦となった『クシャミガ原の戦い』のおり、アイミの電撃魔法で焼かれたディアボニクスの肉が“旨すぎる”とヤマト軍兵士たちの間で評判になったのを思い出していた。
“それにしても2、3万匹を食らうとはハンパじゃないな!”と思うレオだった。
白龍部隊の接待は、ポマロラさんやヴェロニカさん、それにサヤカ、アナスターシャ、ミラーナたちにまかせることにした。│美雨にオジロンじいさんやブロクじいさんたちも呼ぶようにたのんでおいたので話し相手には不足しないだろう。
ゾオルにおける魔軍の侵攻部隊との戦いが差し迫っているので、作戦司令部に移動する途中でレオはアナに聞いた。
「それにしても、自分の奥さんや娘にはディアボニクス退治に行かせたのに、なぜおじいちゃんは行かなかったんだい?」
まあ、白龍王は龍族の王― つまり総司令官でもあるわけだから、戦地に自分自身が赴く必要はないわけだが。
しかし、それを言うならアシュマナーダだって白龍王妃だし、ズミレンママだって白龍王と白龍妃の娘なのだ。
「ああ、それはですね... おじいちゃんの大きさが小さいからですよ」
「えっ、おじいちゃんの〇〇〇… 小さいの?」
「まっさか――! 私が小さいころいっしょにお風呂に入っていたころは、“大きいなァ!”って思っていましたよ?」
「えっ... 小さいころいっしょにお風呂入っていたって... 5歳ころまで?」
「えーっと... 12歳までかな」
「じゅ、12歳って... もう年頃じゃん?!」
「うふふ。もう下にちらほらとピンクとブルーの〇が生えて来ていましたよ!」
「ピンクとブルーの〇が生えて来ていましたよ!って、誇らしげに言うことでもないと思うんだけど... (汗たら~!)」
「あら、ピンクとブルーの〇って純血の白龍種という印なのよ?それを見て、おじいちゃんが、『うん。キリュアナは正真正銘、私の孫だ!』って言って喜んでいたのよ!」
「...... って、なんでおじいちゃんのイチブツの大きさの話しをしているの?」
「だって、レオさまがおじいちゃんの〇〇〇が小さいのかって聞くからですよ?」
「そうじゃないの?」
「私は、おじいちゃんの身体の大きさが、おばあちゃんより小さいからって言おうとしたんですけど...」
「キャーっはっはっは!」
「はーっはっはっは!」
「うふふふふ!」
「ギャーッハッハッハ!」
「ヤダー、レオ!あはははは!」
イザベルやランたちは大笑いだ。
「まるで漫才みたいね? レオ、勘違いしちゃっているー!」
「それで白龍王さんの全長がアシュマナーダより小さいって、どれくらいなの?」
カイオが笑いをこらえながら聞く。
「おばあちゃんより10メートルほど小さいの。それをおじいちゃんはコンプレックスに感じているので、よほどの事でもない限り白龍化しないのよ」
アナが説明しているところにランが近寄って耳元に囁く。
「それで、レオのとくらべて、どちらが大きいの?」
「そ... それは完全におじいちゃんの方が立派です!」
アナはランの質問に少々狼狽しながらも、正直に答える。
その会話を100倍聴力で聴いたレオ。
「オイオイ、なんてことをアンに聞いているんだ?!」
「でも、私はレオさまので十分満足しています!」
ピンクとブルーの髪の奥さんは、耳まで真っ赤になったが、しっかりとした口調で言った。
ピュー♪
カイオが口笛を吹き、レオはアナを抱きしめて頬にチューをした。
「ありがとう、アナちゃん!愛しているよ♪」
「私も愛しています♪」
「あ、勘違いしないで!私もレオのかわいい〇〇〇で十分満足しているから!」
「かわいい〇〇〇!」
「あ、いえ、立派な〇〇〇です!」
ランがあわてて言いなおす。
そしてご機嫌が少し斜めになったレオの片腕に抱きつき、豊満な胸を押しつける。
ぐい、ぐいと。
「ランちゃん、男は〇〇〇の大きさはフツーでもいいのよ!レオは大きさはフツーでも、そこらへんの人族など逆立ちしてもマネできないほどなんだから!」
イザベルがレオの100倍セイリョクをほめる。
「私はまったく問題ありませんわ」
「私もです!」
アイミとミユがほぼ同時に言う。
「私はほかの男性を知りませんし、レオさまで十分シアワセです!」
「わたしもシアワセだ!」
紫の瞳の奥さんと鬼人族の奥さんもレオを援護する。
「みんな、ありがとう!あとで時間を作って一人ひとりとデートをしよう!」
「「「「「「「「やったー!」」」」」」」」
「やれやれ... つきあっていられないよ!」
すっかりあてつけられた感じのカイオがぼやいた。




