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DK世界に行ったら100倍がんばる!  作者: 独瓈夢
ラストウオー
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11-07 新エルフ女王

 エスティーナ女王は、突然のアイミの訪問におどろいた。


 エスティーナ女王は毎日の日課である、朝のお祈りをアルフヘイム宮殿内にある礼拝堂でしようと部屋を出て、お付きの巫女二人と廊下を歩いて礼拝堂の前に来たとき、礼拝堂の入り口にたたずむアイミを見たのだ。


 アイミは女王を見ると、頭を下げて朝のあいさつをした。

「エスティーナ女王さま、おはようございます」

「あら、アイミさん、おはようございます...!」

あいさつを返して、女王はアイミの服装に目を見張った。


 白髪、青い目のエルフ美女(アイミ)は、新しい濃紫色のトゥニカを着て、同色のウィンプルを頭にかぶり、青白い石‐蛍石‐で作られた新しいロザリオを胸にさげていた。

 エスティーナ女王とまったく同じ式服だ。唯一の違いは、アイミの式服とロザリオが新しいということだった。


「アイミさん...!」

「エスティーナ女王さま、今日から“私にあたえられた役割”を果たすべく、新女王としての務めを果たしたいと思います!」


 じっとアイミを見つめる女王。

やがてにっこりと微笑むと、アイミの両手をにぎった。

「わかりました。少し早いかも知れませんけど、おそらく創造主様は、それを望んでおられるのでしょう。さあ、いっしょに朝のお祈りをしましょう」


そう言うと、エスティーナ女王は二人の巫女に告げた。

「女王交代の儀式は、朝のお祈りのあとで執り行います。その旨を朝のお祈りに参加できてない長老のみなさんや長官たちに伝えてください」

「「は、はい!」」

二人の巫女は転がるように走って行った。




 礼拝堂の中には、ほとんどの長官と長老たちがすでに着席していて、入り口で起こっていることを知って、おどろきとよろこびの入り混じった顔で見ていた。


「みなさん、おはようございます」


「「「「「「「「「「「「「おはようございます!」」」」」」」」」」」」」


「もうお聞きになられましたように、アイミさまは今日からエルフ女王になることをお決めになりました。つきましては、今日は朝のお祈りを二回行うこととします。最初は私、 エスティーナ・アルヴディン・フェイル・ミナージュが司式して礼拝をいたします。それから新しいエルフの女王アイミ・ キャロール・テフ・アルマライトさまの司式で礼拝をいたします」


エスティーナ女王は、もうアイミを新女王として敬語を使って接している。

「みなさま、おはようございます。たいへん急で申し訳ございませんが、昨夜突然、私の果たすべき使命について気づかされました。

“善は急げ”ということわざがあります。ミィテラの世界の平和を脅かす者たちとの戦いはまだ続いております。私がエルフ女王という大役を受け、務めを果たすことで、一日でも早く尊い命が失われる戦いが終わるのであれば、どのような試練や苦労が待っていようと、私は創造主様のご信頼を失わないためにも、勇気を奮い起こして使命を果たす所存です!」

アイミは凛とした声で告げた。


その口調に、礼拝堂にいる者は全員襟を正した。



 そして、エスティーナ女王の司式で礼拝が行われ、ついでアイミ新女王の司式でふたたび礼拝が行われた。


 礼拝が終わると、エスティーナ前女王は全員に告げた。

「私はただいまより、エルフ女王の職をアイミさまにお譲りし、エルフ国の若相談役とならせていただきます」


 パチパチパチパチ…


長老たちと長官たちから、エスティーナ前女王のこれまでの働きを賞賛する拍手が起こる。

中には、これまでのエスティーナ前女王の苦労に思いをはせて涙ぐむ者もいた。


「なお、アイミ新女王の就任式は、のちほど長老の方々と長官たちが話し合って決めてください。それではアイミ新女王さまにお言葉をお願いいたしましょう」


エスティーナ前女王は脇に退き、アイミ新女王が中央に進み出る。

「エスティーナ前女王さまと長老のみなさまのおかげで、エルフ国の基盤も国としての体制も確固としたものになりました。したがって、政治や経済、軍事などで、私‐エルフ女王のするべきこと、決定することはほとんどないと考えます...」

アイミの言葉を長老たちや長官たちはおどろいて聞いている。


 アイミ新女王は続ける。

「したがって、私、アイミ女王が果たすべき役割は“重要な祭事を行うだけ”です。

そして、今もっとも重要な祭事は、一日も早い戦争の終結を祈る礼拝だと考えます。

よって本日より、すべての戦いが終わる日まで、早朝に3時間、夕方に3時間の礼拝を聖堂で行いたいと思います。朝夕の礼拝の司式は私がやらせていただきます。

聖堂における礼拝への参加は自由です!」

オオオオオオ―――――……


声にならない声が礼拝堂に響いた。


たしかに、エスティーナ前女王がアイミに新女王になってくれるようにたのんだ時、

「エルフ国は合議制になりましたので、エルフ女王の役割は重要な祭事を行うだけの象徴的な存在となります」とはっきりと言ったのだ。


 それを長老たちも長官たちもしっかりと覚えていたし、心の中でもエルフ女王はエルフ国にとって象徴的な存在、精神の支柱的な存在のみとなり、エテルナール教の長としての役職の比重の方が重くなるということは彼らもわかっていた。


 しかし、実際に新女王アイミの口から、その言葉が発せられたのを聞くと、エルフ女王という、エルフ族にとってもミィテラの世界のすべての種族にとっても、彼らの信望するエテルナール教の最高指導者が今後果たす役割は以前とはかなり違ったものになることを感じたのだった。


 アイミ新女王は、アルフヘイム宮殿の礼拝堂から聖堂に直行した。

長老たちや長官たちも、仕事がある者をのぞいてアイミ新女王とともにゲート魔法で聖堂へ飛んだ。

突然のことなので聖堂には女王がお祈りをする用意などしてなかったので、巫女たちはアイミ新女王にお願いしてゲートを開けたままにしておいてもらって、宮殿の中の巫女たちや職員たちをかき集めて、急いで式台、燭台、イスなどを運びこんで、礼拝ができるようにした。


アイミ新女王は、彼女用のイスが運び込まれると、さっそく座ってお祈りをはじめた。

エスティーナ前女王や長老たちや長官たち、巫女たちもいっしょにお祈りをはじめる。



 エルフ国の女王がアイミになったということは、インフルエンザのウイルスよりも早くアルフヘイムの市中に広まり、早く新女王の顔を見たいというエルフたちが聖堂に集まりはじめた。

 聖堂に来たエルフたちは、そこでお祈りがされていることを巫女たちから聞き、アイミ新女王が、“戦争が一日も早く終了”するようにとの願いをこめてお祈りをしていることを知ると、彼らも聖堂でお祈りをはじめたのだ。


 この話はまたたく間にエルフ国中に広まり、この日から聖堂はエルフ新女王とともに、戦争終結を願うエルフたちで埋め尽くされることになったのだ。

 そして、ミィテラの世界中で、この話を聞いたエテルナール教信徒たち‐人族、鬼人族、獣人族、トロール族などが、それぞれの村、町、都市の礼拝堂で、アイミ新女王と同じ思いでお祈りをはじめるようになったのだ。


 アイミが新女王になったことで、生活が一変したのがアイミの子たちだった。

アルフヘイムと勇者王国の時差が10時間あるため、アイミの三人の子どもたち‐ふたごのアイ、ミオンと末っ子のミア‐もアルフヘイム宮殿に住んで、アルフヘイム市内の保育園に通うことにした方がいいとアイフィママはアドバイスをした。

 だが子どもたちは、仲の良い友だちがたくさんいる『王子と王女さまのお城』保育園の方がいいと言ったので転園は思いなおすことになり、アイミが毎日、アルフヘイムでのエルフ女王としての役目と母親&妻としての役割をかけもちですることになった。



 アイミは午前3時に勇者王国からアルフヘイムの聖堂にゲート魔法で飛び、朝のお祈りが終わる午前10時にゲート魔法で勇者王国にもどり‐時差で勇者王国はちょうど午前7時なので、子どもたちの通園の準備をしてあげる。

 そしてエルフ国にもどり、エルフ女王としての仕事をこなし、夕方のお祈りが終わる午後7時に、ふたたび勇者王国へもどり、あちらでは午後5時なので、子どもたちを『王子と王女さまのお城』保育園に迎えに行き、マハナヤ・タイガー馬車でいっしょにライトパレスへ帰る。

 そこでイザベルやランたち、ほかの奥さんたちや彼女たちの子どもたちといっしょに夕食をとりながら、今日一日、保育園であったことなどを聞いたり話したりしながら楽しい団らんを過ごすようになった。


 この夕食&団らんの時間には、子どもたちのパパであるレオも当然参加した。

レオには20人の奥さんがいるほかに、常に不特定多数の恋人がいるので結構いそがしい。

 おまけに、今度は勇者王国軍が魔軍との戦いに参加したので、作戦の打ち合わせとか、ほかの同盟国のトップとマデンキ(魔法式遠隔伝達器)で連絡をとりあったり、またはユウシャコの社長としての仕事をしたり、役員会議に出席したり、はては傘下のファッションブランド『オリヴィーユ』やアパレルメーカー『ユウラブ』のCMに使うモデルの審査員などという仕事までこなし、まさしく八面六臂といった多忙さだった。


『オリヴィーユ』は、紫の瞳の絶世の美女オリヴィアの名前からヒントを得て付けられたブランド名で、上流社会向けの高級ファッションや高級香水を製造・販売する会社だ。

 もっとも、レオ自身は新モデル採用の審査員の仕事をたいへん気に入っていた。


 それは、自薦、他薦の美女たちを見れるからで、レオのもつ不思議な魅力で、極め付きの美女は、なぜか“レオに惹かれる”、いや、“レオに一目惚れをして、恋人になりたがる”のだ。

 そういうわけで、レオのオスとしての本能もあって、常に新しい女性をもとめるレオには、ミィテラの世界のファッション界でいまや知らない者はいない『オリヴィーユ』と『ユウラブ』のモデル候補の美女たちの最終面接に立ち会うのは、絶対に見過ごすことのできない“重要な仕事”の一つだった。



 *  *  *



「君の名前は... サーリ・サカル。15歳。職業は学生か...」

「いえ、先月に16歳になりました」

サーリというモデル候補者は訂正した。


募集から最終審査まで、6ヶ月以上かかっているから、その間に年をとる娘もいる。

最終選考に残るモデル候補たちは、やはりみなバツグンの美少女ばかりだ。

オリヴィア、サヤカ、それに春玲(シュンレイ)も審査員を務めている。

オリヴィアは当然『オリヴィーユ』の専属トップモデルで、サヤカは『オリヴィーユ』のファッションデザイン担当役員で、春玲ヨウシュンレイはユウシャコ事業部の担当部長だ。


 三人の前にかなり緊張して座っている少女は、最終選考に残った20人の美少女の中でもひときわ美しさが目立つ少女だった。

 黒い髪、黒い瞳、鼻筋は通っており、肌は白く、顔は小さめ。

身長も168センチあり、胸こそまだあまり大きくはないが、全体的にすらっとしたスタイルで足の長さと小さめの顔があいまってモデルに理想的なスタイルの候補者だった。


「レオさま、彼女はユーリ・サカル少佐の妹ですよ」

オリヴィアが、面接書類の『家族欄』を指さして教える。

「えっ? 今、新兵器のことでナンバ工場にずっと行ったきりになっているユーリちゃんの妹?」

「はい。ユーリは長女で、ユーリの下に二人妹がいて、私が一番下です」


サーリ・サカルは、美しい黒い瞳をキラキラ輝かせてレオの顔を見て、しっかりした声で言った。

“これでまたレオさまの恋人が増えそうね...”

オリヴィアはレオとサーリの顔を交互に見ながら思った。


“この娘、きれい。また新しいレオさまの恋人が出来たわね”

サヤカも同じことを考えた。


“この娘も確実にレオさまに捧げることになるのでしょうね...”

春玲(シュンレイ)は予想した。


「よし。オレはサーリちゃんを採用したらいいと思うよ。君たちはどう思う?」

「いいと思いますわ。若いけどしっかりしているようですし」

「私もレオさまの意見に賛成です!」

「いいモデルになると思いますわ!」


レオがオーケーと言った娘に奥さんたちがNGを出すわけがない。

「ほ、本当ですか? うわ――っ、うれし―――い!レオさま、ありがとうございます!」

サーリはイスを後ろに倒すような勢いで立ち上がると、レオに思いっきり飛びついた。

レオもすばやく立ち上がってサーリを抱きとめる。

サーリはレオの肩に顔を押しつけてレオを抱きしめ、体全体で感謝とうれしさを現している。


 若い娘の馥郁(ふくいく)とした体の匂いとちょっと汗の匂いが混じった髪。

そして胸に感じる、まだ発育の余地があるふっくらしたおっぱい。


 レオは痺れるような“恋の予感”を感じ、ズボンの中の何かの居心地が悪くなった?

レオはサーリを抱いている手を少し下に下げ、遠慮なくサーリのオシリをミニスカートの上からなでる。

 レオは立ち上がって背を奥さんたちに見せているので、彼がサーリのオシリをさわっていることは誰もわからない。

(と、思ったが、しっかりと見られていたことをあとで知った!)


 サーリはオシリを触られていることを感じているのかどうかわからないが― たぶん感じてはいるだろう― うれし涙を流しながら嗚咽している。


“ああ... レオさま レオさま なんてステキな方なんでしょう。

 お姉さまが言ってらした以上に魅力的で男性らしいわ... 

 それに、このレオさまの匂い。なんだかふわふわした気持ちになるわ...”


そう思いながら、サーリは涙を流しつつ、小鼻をふくらませて思い切りレオの“男の匂い”を嗅いでいた。


 コンコン!


ドアがノックされた。


レオはすばやくサーリから離れる。

サーリもハッとわれに返り、ミニスカートの後ろを押さえてイスに座った。


「はい。どうぞ!」


オリヴィアの声でドアが開けられ、美雨(メイユイ)が入って来た。


「レオさま。アイミ女王さまがお話をしたいとのことです」


「ありがとう。すぐに行くよ!」


レオはサーリに会釈をして部屋を出て行った。



「それではサーリさんは、未成年ですので、ご両親、またはユーリ少佐に来ていただいて、『オリヴィーユ』、または『ユウラブ』の専属モデルとなる契約書にサインしていただくことになります。ご両親を呼ばれる場合は、私たちの方で連絡およびこちらまでの旅費などは出しますのでご心配なく。

ご両親、ユーリ少佐のどちらを呼ぶにしても今日、明日には来られないでしょうから、ここにいるサヤカさんが勇者王国の迎賓館までご案内しますので、迎賓館に数日泊まっていただくことになります」

「わかりました。よろしくお願いします」

春玲(シュンレイ)がテキパキと伝える。


「それはそうと、サーリさんは学生ですけど、学業の方はどうされますか?

まだ勇者王国でモデルとして働くことになるのか、それともナンバでモデルとして働くことになるのか決まっていませんけど、学業は続けられた方がいいわ」

オリヴィアがアドバイスをする。


「はい。もし、こちらで働くのであれば、勇者王国高校に、ナンバ市の場合はナンバ市立高校に編入しようと考えています」

「その方がいいわね。勇者王国高校もつぶよりの優秀な教師をそろえているから、いずれ大学に進学する予定でも学力をつけるという意味ではまったく問題ありませんから」

「ありがとうございます!」




 美雨(メイユイ)が社長室のドアを開けてくれる。

部屋に入るとマデンキ(魔法式遠隔伝達器)にアイミの顔が映っていた。


 アイミはエルフ女王の正装である濃紫色のトゥニカを着て、同色のウィンプルを頭にかぶり、青白い石で出来たロザリオを胸にさげていた。


「アイミちゃん、こうして見ると、エルフ女王らしい貫禄が出ているよ!」

「レオさま、からかわないでください!」

「ウフフ。だがよく似合っているのは確かだ!それで何の話なの?」

「『踊り子星作戦』に参加する者の人選が決まりました。私とアイホおばあちゃん、オジロンさん、ブロクさん、マルラさん、それにアウロラさんの意見を取り入れて決めました」


「そうか。で、何名参加するの?」

「20名です。先日、お話しましたように、アウロラさんがチームリーダーとしてリョースアールヴ(光のエルフ)を率いて魔大陸に行きます。

そのほか、ランさん、オリヴィアさん、ミユさん、エマちゃん、アナさんとボディーガード龍王のお二人、それに今回はイザベルさまも参加されます」


「総勢28人か。かなりの人数だな。オレもシーノといっしょに参加しようか?」

「いえ、レオさまは勇者王国の王です。直接戦闘に参加するのは、よほどの場合でない限り避けていただかなければなりません。その意味ではカイオ副王も私も同じです」

「.........」

「レオさまが考えておられることはわかります。“それでだいじょうぶなのか?”とお考えになっているのでしょう?」

「...... その通りだ。アウロラを信じないわけではない。それよりも、君がいないリョースアールヴ(光のエルフ)ではたして、魔軍の魔術師たち相手に、魔軍の部隊相手に戦えるのか、ということだ」




 アイミは、魔大陸には靉靆(あいたい)の者のほかに、ザパータ(厭忌)の者と呼ばれる魔術師集団がいるということをアウロラや魔術学校の元校長ヒョルバルズルから聞いていた。

 アウロラや靉靆(あいたい)の子たちの師匠であったダイモヴァンもヒョルバルズルもザパータ(厭忌)の者だったそうだ。


 靉靆(あいたい)の者たちは、そのほとんどが先の戦いの折、リョースアールヴ(光のエルフ)に捕らえられてリニョルフ(リニューアル・エルフ)になったか、戦闘で死んでしまった。

 残った靉靆(あいたい)の子どもたちは、スケさんとカクさんに魔大陸の魔術学校に行ってもらって勇者王国に連れられて来たために、実質的には組織としては無くなっていた。


 たが、靉靆(あいたい)の者は、そのあまりのおぞましさと魔族さえ顔をそむけるような惨い魔術を使うため“忌み嫌われる者”と呼ばれ、魔王からでさえも疎まれて来た。

 しかし、イーストランジア戦役において、魔軍がエルフの魔術師たちに散々な目にあったことことから、魔王も魔軍のトップ‐とくにイーストランジアでエルフ魔術師のために多くの将兵を失ったアサグ参謀長が‐靉靆(あいたい)の者たちを含め、魔術師の価値を見直す考えになっていたのだ。


「だから、靉靆(あいたい)の者たちを“すべてなくしてしまった”今、魔軍に唯一、残されているのは、ザパータ(厭忌)の者たちだけなのです」

アウロラはそうアイミに話したのだ。


 そして、アズマ山麓での戦いのとき、ヒョルバルズルはアイミの魔素吸収魔法のため、魔術を使えなかったが、ヒョルバルズル校長もダイモヴァン師匠も、恐るべき魔術の使い手だと話した。


「あの戦いのとき、私は気づかないうちにヒョルバルズル校長に、“心を支配”されていました。

魔大陸のザパータ(厭忌)の者たちに同じ魔術を、私にもリョースアールヴ(光のエルフ)やイザベルさんたちにもかけられないように対策をしっかり立てておかなければならないでしょう...」

真剣な目でアウロラはアイミに語ったのだった。


 その日から、アウロラはアーナンダがダイモヴァン師匠の洞窟から運んで来た、魔族の古代魔術書をリョースアールヴ(光のエルフ)の午後からの訓練が終わったあとで夜遅くまで研究するようになった。




「私はアウロラさんを心の心底信じています。もしもの場合は、アイホおばあちゃんたち、“仙人隊”も出撃すると言ってくれています」

それまでの経過をレオに報告するアイミ。

「そうか。オレはほかの者はともかく、勇者グループを信頼しているし、中でもとくに君、アイミちゃんを信頼している。

だから、アイミちゃんが“心配ない”と言ったら、それで十分なんだ!」


アイミはレオからの絶大な信頼に胸の中から熱いものがこみ上げるのを感じ、ちょっと下を向いて青い瞳にあふれだした涙を小指でぬぐった。


顔をあげたとき、レオの姿はマソキには映ってなかった。



「レ、レオさま?」


レオが画面から消えたので、腹痛でも起こしてトイレに走って行ったのだろうかと心配する。


「オレはここだよ!」


ビックリしてふり返ると、アルフヘイム宮殿の中の女王の部屋で執務机の上に置いたマソキに向かって話していたアイミの後にレオが立っていた。


「ど、どうされたのですか? 急にここに来られるなんて?」

「いや、エルフ新女王があまりカワイイから、今から抱いてあげようと思ってね!」

「えっ、その、抱くって... ムギュッ!」


アイミ女王は濃紫色のトゥニカを着たまま、レオに強く抱かれ、そのかわいい口を吸われていた。


「レ、レオさま、私はまだ執務中です」

レオの胸を押して顔を離すとアイミは“困ります”といった表情で言った。


「じゃあ、お付きの巫女ちゃんに、『勇者王国で用事ができたので早めに帰ります』って言っておけばいいじゃん!」

「えーっ、何の用事ですかって聞かれたらどう答えるのですか?」

「レオン王とのおデートですって言っておけばわかってくれるさ!」


「ええええ――――!?」




アイミはエルフ女王となることを決意しました。

エルフ国の歴史上、もっとも若い女王の誕生です。

新女王に就任したアイミが最初にしたこと。

それは一日も早く戦争が終わることを祈ることでした。

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