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DK世界に行ったら100倍がんばる!  作者: 独瓈夢
ラストウオー
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11-05 作戦発動

「各坑道の目標達成までの距離はあとどれだけだ?」

「はっ! 超音波測定器での計測によると、A坑道が約620メートル、B坑道が約440メートル、C坑道が約500メートル、D坑道があと約750メートルです!」


尋ねられた将校は、机の上の図面と数字を見ながら答える。

「A坑道とD坑道は遅れているのではないか?それともほかの坑道が予定より早く掘り進んでいるのか?」

「はっ! A坑道は岩盤に突きあたりまして、掘進速度が衰えております。D坑道は地下水が湧いて、ただいま本国より至急大型ポンプを輸送して水を汲みだしているところです!」

「遅れはどのようにして挽回する計画だ?」

「A坑道は、爆薬を適量使用して開けていくしか方法がありません」

「キサマはバカか? 爆薬など使ったら、敵に気づかれてしまうだろうが?!」



 屈強なドワーフ陸軍土木部隊の現場指揮官にハッパをかけているのはロン中将。


「はっ。しかしツルハシだけですと、予定の日数で目標までは...」

「わかった。A坑道はほかの方法を考える。D坑道は挽回できるのか?」

「はい。ほかの坑道から増援を送って挽回いたします!」

「よし、続けてがんばってくれ! 勇者王国からは、予定時間内に達成できたら、兵士一人当たり金貨100枚の褒章を出すと言ってきているからな!」

「えっ、本当ですか?」

ドワーフ将校が目を輝かせる。


「おれがウソをついてもしょうがないだろう?」

「はっ。それもそうですが...」

「予定時間に達成出来たらという条件つきだ。出来なかった場合は、兵士一人に金貨5枚だ」

「差が大きいですね」

「しかし、達成できれば...」

「兵たちは大喜びしますね!」


現場指揮官のドワーフ土木部隊の大佐と部下の将校たちが会話を交わす。


「ロン司令官殿、なんとしても予定時間内に達成するように各坑道掘削隊に伝えます!」

「たのむぞ!戦わずして勝利を収めるなんてことは、今回が初めてだからな!」

「「「「「はっ!」」」」」



 ロン准将‐今回の作戦の総責任者を任せられたドワーフ陸軍の勇将は、勇者王国軍が小マハナヤ山脈に構築されている魔軍第一軍の北側防衛陣地攻略のために、ドワーフ陸軍のラナ総司令官にたのんだ“トンネル部隊”の視察に来ているのだ。


 勇者王国は、同盟国諸国が3年前に開始した『ミィテラの暁作戦』に参加することが、“魔軍との戦いを終結するために不可欠”との創造主エタナール様からの天啓をエルフ国のエスティーナ女王が受けたことから、勇者王国も軍事小国であり、兵力も1万人と極端に少ないながらも参戦することが決定し。


芒星(すすきぼし)作戦』と名付けられたこの作戦では、小マハナヤ山脈に構築されている魔軍防衛ラインを、ドワーフ軍土木部隊の協力を得て北側‐つまり魔軍が攻撃を予想してない背後から‐からトンネルを掘り進め、魔軍第一軍の北側防衛陣地に達し、これを制圧するという作戦だ。



 ロン中将は、現場指揮官と話した後で、作戦指令室の洞窟の部屋にもどり、マソキで勇者王国軍司令部と連絡をとった。


「勇者王国軍司令部、こちらはドワーフ“アナグマ部隊”のロンです。応答願います」

すぐにマソキに勇者王国軍の作戦司令部が映り、レオ、カイオ、モモ、バルキュス司令官、イーデルにヤンガーなどの顔が見えた。

「ロン司令官、こちらはモモ戦略室長です。何か新しい情報ありますか?」

「はい。たった今、現場指揮官と会って状況を確認したところですが、

どうやらA坑道とD坑道で遅れが出ています。D坑道の方は地下水で、

ただいまポンプを使って水を汲みだしています。

遅れは増援を送って遅れを挽回できそうですが、A坑道の方は固い岩盤にぶち当たったみたいで、爆薬の使用はできないので、このままでは予定より遅れそうです...」

「ロン司令官、どうもご苦労さまです。では、ボクの出番ですね?」


そう言ったのはカイオ。

「おお、カイオ殿に来ていただけますか? 岩盤の厚さは、測定では400メートル以上あるそうです」

「ふむ... たぶん、1時間もあれば開けれると思いますよ」

「それは助かる!」

「いえ、われわれの方こそ、ドワーフ陸軍土木隊に作戦に参加していただいてたいへん助かります。この作戦はドワーフ陸軍土木隊なしには出来ない作戦ですからね」

レオも謝意をロン司令官に伝える。

「例の、予定時間内に目標地点に達したら、兵士一人当たり金貨100枚という話は、土木隊を大いに発奮させましたよ!」


「一人金貨100枚で、3年も続いて来た戦いを終わらせることができれば、安いものです」

「そうですね... 戦ほど金を浪費するものはありませんからね」

「では、カイオはこれからゲートでそちらに向かいます。護衛にリザードマン兵士を数人つけますが、これはカイオが副王であるためです」

「了解しました。お待ちしています!」



 ロン司令官との通信が終わったあとで、イーデル主席参謀が話しはじめた。


「魔軍防衛陣地へのトンネル攻撃の1時間前に、『芒星(すすきぼし)作戦』を発動。

ナガジー中佐の指揮する機械化師団と獣人族のマスティフ将軍の機甲師団5師団と

テジュア将軍の歩兵師団5師団が、カイオ副王の土属性魔法で戦車壕を埋めたルートを突進し、魔軍の各防衛線を突破、魔軍司令部のある本陣をガネーシャ部隊とナガジー部隊でもって制圧します」



「魔族地下陣地へは、ヤンガー少佐の勇猛隊500名とガネーシャ中佐のリザードマン部隊が、1000名突入します。魔軍地下陣地内における戦闘で火災や爆発などが生じた場合に備えて、突入部隊は全員ガスマスクを装備しての突入です。

地下陣地の中はトンネルでせまいので、少人数による急襲作戦となります」

「リザードマン部隊の装備は、自動ライフル銃および携帯式飛翔弾と手投げ弾だ!」

ガネーシャが補足する。


「もしもの場合は、以前通りのバトルアックスや剣を使った白兵戦になるが。

オレはその方が好きだ!」

「ヤンガー少佐、無茶はしないでくださいよ。勇猛隊の指揮官なんですから」

イーデルは血の気にはやる兄をたしなめる。


「昨日は一晩中、愛用のバトルアックスを研いでいたよ。クフフフフ...」

戦いたくてたまらない様子のヤンガーを見て、ヤレヤレという顔をするイーデル。


「心配するな。わたしもいっしょだから、何かあったらヤンガーを冷静にさせる!」

うそぶいているのはベンケイ。

彼女もヤル気満々の顔つきだ。


「まあ、ヤンガー少佐とベンケイがいっしょでは、子どもを泥たまりのそばに置いて、泥遊びをしちゃダメよ、というのと同じね」

イザベルが“もう、どうしようもないわ”と言った顔で話す。

そういうイザベルも、3年ぶりにガンデーヴァの弓を使えるとあって、かなりアドレナリン濃度が上昇しているようだ。


「私もベンケイさん、アナさんといっしょに、トンネル攻撃に参加します!」

オリヴィアも頬をいくぶん紅潮させて言う。

リョースアールヴ(光のエルフ)も万一に備えて参加させますので、問題はないと思います」

アイミが落ち着いた口調で補足する。



「それで、ナガジー部隊の準備はどうなっている?」

「はい、レオ殿、ナガジーの機甲師団は、DY-3号戦車、DY-3 H20型自走飛翔弾発射車、NJ-1号兵士輸送装甲車1800両からなる部隊が準備完了。

こちらは、ザラ・フェラーダ少佐のリザードマン歩兵部隊4千名と魔軍地下陣地に突入、攻略します。獣人族の攻略部隊との連携はまったく問題ありません」



そこに通信担当将校から連絡がはいった。


「カイオ副王はリョースアールヴ(光のエルフ)のゲート魔法でA坑道に無事到着。すでに岩盤に穴を開けはじめているとの連絡です!」

「さすがアイミの訓練しているリョースアールヴ(光のエルフ)だけあって、ゲート魔法も自由自在に使えるのね」

モモが感心してつぶやく。



「それはそうと、ナンバ・ラボがドワーフ国の兵器省と共同開発していた『秘密兵器T』はどうなっているんだ?」

「レオ、『秘密兵器T』は、試験が先月ようやく終わり、試験中に発見された不具合などを改良し、これから武器を装備しての試験がはじまる予定よ」

「モモ、『秘密兵器T』の増産体制はできているのか?」

「ランたちが魔大陸で、魔軍が飛行戦艦、飛行巡洋艦、快速戦闘船などを大量に製造し、

総攻撃の準備をしていることが判明してから、いつでも大量生産にはいれる準備ができているわ。我々の承認が下り次第、『秘密兵器T』の生産開始ができるわ」

「現在、どれだけ実戦投入ができるんだ?」

「初期生産の百ほどが投入できるわ」


「魔軍の『炎の地獄作戦』発動までは4日しかない。

それまでに魔軍第5軍を殲滅しないと、魔大陸から大軍団が来て反対にこちらが包囲される。

そのためにも、ナンバの兵器工場には、すでに完成している『秘密兵器T』に弾薬と燃料を積むように指示してくれ」

「わかったわ、レオ。ミカエラ大尉、至急ナンバ工場にいるサカル少佐に今の指示を伝えてちょうだい」

「わかりました。モモ参謀室長!」


 ミカエラはベンケイのいとこで、イーストランジア戦役の折、鬼人族国軍から参謀見習いとして派遣され、レオたちといっしょに戦って来ていて、今はベンケイの弟ヤンガーと結婚している。いわゆるいとこ婚だ。

現在は、参謀として興国キタン族出身のユーリ・サカル少佐とともに、兵器の開発・調達を管理している。ちなみにユーリ少佐はまだ独身だ。



 勇者王国軍は、『芒星(すすきぼし)作戦』によって魔軍第5軍を殲滅したあと、

ただちに人族連合軍と共同して、オムルガラ川上流の魔軍を包囲殲滅する『簪星(かんざしぼし)作戦』を実施、同時にふたたび獣人族国軍との共同作戦で、オムルカル湖南部の魔軍を包囲殲滅する『扇星(おうぎぼし)作戦』を同時に実施します」

イーデル主席参謀が続ける。


「『簪星(かんざしぼし)作戦』と『扇星(おうぎぼし)作戦』では、久しぶりにドコデモゲートが使われるわけね?」

「はい。魔軍にドコデモゲートがあるということを知られないために、極力、ドコデモゲートの使用は避けて来ましたが、今回の作戦では魔軍の大軍団が到着する前に魔軍第一軍ならび第五軍を制圧すると言う、限られた時間内での作戦ですので、特別にドコデモゲートが使用されることになります」

「同盟国軍は、ドコデモゲートをしきりに使いたがっていたが、あれが魔軍に鹵獲されたり、知られたりすると、今後の作戦に大きな支障をもたらすからな。めったなことでは貸し出すことはできない」

「唯一の例外は、テジュア将軍のリザードマン3個師団が魔軍の作戦にまんまと嵌り、兵力の大半を失った『ネイボース作戦』のときだったな」

ガネーシャが3年前の獣人族部隊の大敗北を思い出して苦い顔をした。

彼女も獣人族軍出身なので、たくさんの戦友や仲間を失ったのだ。


「あのときは、ドコデモゲートで援軍を送らないと全滅していましたからね」

「ミユのお父上は、さすがです。絶望的な状況で、誰もがテジュア将軍の部隊が全滅してしまうと頭を抱えて泣いていたときに、ただ一人、レオ殿に“どうかドコデモゲートを使わせてください!”と直談判をしに来られたのですからね...」

バルキュス司令官が感慨深そうに言う。


「そして、ジャバリュー将軍自身が5万の救出部隊を率いて、テジュア将軍の部隊の救出に向かい、救出部隊はわずかの損失でテジュア将軍の部隊を救出した。われわれもジャバリュー将軍の勇気と知恵に学ばなければなりませんね...」

イーデルが締めくくる。



 レオは思い出していた。

3年前にジャバリュー将軍が突然、ライトパレスに深夜訪ねて来たときのことを。


「もし、どうしてもドコデモゲートをお貸しいただけないのなら、私は獣人族国へもどり、ゼリアンスロゥプ大王の許可をとってから、100万の大軍を編成し、弔い合戦をしに行きます!」

ジャバリュー将軍は、レオたちの目を見てきっぱりとそう言ったのだ。




「ロン司令官から、今、連絡がありました!カイオ副王は400メートルの岩盤を貫通したそうです!」

「おお!」

「さすがカイオ殿!」

「カイオ、やるな!」

「カイオさま、スゴっ!」

「カイオ副王健在!ですな!」


作戦司令部にいるメンバーたちから賛辞が湧き出る。



「D坑道の方も、“賞金の金貨50枚は俺たちのモノだ!”とドワーフ土木兵たちが発奮して、予定より半日早く完成するようだ、とロン司令は伝えてきております!」

 

「これで『芒星(すすきぼし)作戦』発動の準備は99パーセント達成ね!」

モモが高らかに宣言する。


「では、ほかに何もなかったら、作戦会議はこれで終了する。全員、三日後の作戦発動日まで、ゆっくり休んで英気を養ってくれ」

「レオ殿は、こう言っておられるが、くれぐれも油断しないように。そしてしっかりと準備をしてくれたまえ!」

バルキュス司令官が、締めくくる。




 作戦会議参加者たちが席を立って、会議室から出て行こうとしたとき、

レオがモモに目配せをした。


モモがドアから出て行こうとしたアイミに呼びかける。


「アイミさん、少し残ってちょうだい」

「はい」


アイミは立ち上がったばかりの席にまた座る。



 作戦会議室に残ったのは、レオ、バルキュス司令官、モモ参謀室長、イーデル主席参謀、それにアイミ。


「実は、レオが魔大陸へリョースアールヴ(光のエルフ)隊による強襲部隊を送りこんで、魔軍の輸送船団を攻撃して、魔軍の出撃を遅らせたらどうだろうと提案しているの。それで、あなたの意見を聞きたいのよ」


リョースアールヴ(光のエルフ)をですか? 前回の偵察時にランさんたちが少々暴れていますので、魔軍も警戒を最大限にしていると思うし、魔軍には│靉靆あいたいの者たちだけでなく、ほかの魔術師たちもかなりいるとアウロラさんは言っていました。それもかなり強力な魔術を使う者たちが...」

リョースアールヴ(光のエルフ)だけでは難しいかな?」


「私がいっしょに行くのであれば問題はありません。

ただし、その場合は、『芒星(すすきぼし)作戦』への参加は出来なくなりますが」

「アウロラに魔大陸に行ってもらうことは出来ないのか?」

「それはしない方がいいです。たとえ、今はリニューアル・エルフ『リニュルフ』になっていると言っても、魔族は元同朋です。彼女は魔族に攻撃されたり、私たちが攻撃されたら必ず反撃するでしょうけど、魔大陸に乗り込んで同朋であった魔族を殺すという任務を彼女にあたえるのには反対です!」

アイミはみんなの顔を見てキッパリと言った。




 作戦会議から出たイザベル。

先を行くエマに追いつくと、肩をポンとたたいて話しかけた。


「エマちゃん、今度の戦いは、私といっしょだよ!」

「はい、イザベルさん!とても楽しみにしています。同盟国軍の間では、もはや“伝説”になっているイザベルさんのガンデーヴァの弓の大流星攻撃を見れらるんですからね!」

「エマちゃんも、これまでオリヴィアといっしょにシェキナーの弓で大活躍して来て、先週も魔大陸で魔軍の新兵器をボロボロ撃ち落したってランから聞いたわよ!?」

「シェキナーの弓は、まだ使いはじめて間もないので、まだよく使いこなせていない感じです...」

「私がガンデーヴァの弓を使いはじめたころもそうだったけど、使えば使うほど、スキルが上がって、攻撃能力が大きくなるから、安心して使い続けたらいいわ!」

「はい!そうします!」



 シェキナーの弓は、エマが一年前にテラに里帰りした帰りに、地下聖堂の武器庫で見つけたものだった。

 レオとカイオとイザベルが、今まではそんな弓などなかったから、きっとエマが使うために武器庫に現れたのだろうと言ったので、エマもガンデーヴァの弓はイザベルに返さなければならないと考えていたので、エマはシェキナーの弓を使うことにしたのだ。


 シェキナーの弓があったところには、神聖アールヴ語で―


“古のとき、創造主は命の木への道を守らせるため

 智天使ケルビムにシェキナーの弓をあたえ、これを守らせた

 シェキナーの弓は電光の矢を放ち、

 敵は誰もその矢から逃れることはできないであろう”


 ―と書かれていた。



イザベルのガンデーヴァの弓が最初そうであったように、シェキナーの弓も最初は連続して細い電光の矢しか撃てなかったが、今では魔軍の快速飛行戦闘船を撃ち落せるほど威力が強くなっていた。




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