11‐04 復活
アウロラは毎日、魔族古文書の解読・翻訳でアイミを手伝っていた。
だが、昼過ぎからリョースアールヴたちの訓練をしにいくアイミを少し羨ましく思っていた。
思いあまって、ある日、アウロラはアイミに聞いてみた。
「アイミさん...」
「なに、どうしたのロラちゃん?」
「わ、私もリョースアールヴの訓練を見に行っていいかしら?」
「え? 別に構わないけど... ロラちゃん、あなたもう魔術は使えないのじゃないの...?」
アイミの言葉にアウロラはしゅんとなったが、
「でも、見るだけでも見たいです...」
「いいわよ。これから行くけど行く?」
「はい!」
ゲート魔法で飛んだ場所は、見渡す限り荒野が広がるところだった。
そこで、40人のリョースアールヴが魔法を訓練しているのだと言う。
見ていると、はるか高空を高速で動いている黒い点があり、それを五つほどの黒点が追っている。追っている黒点からはイナズマのようなものや火球のようなものが前を飛んでいる黒点めがけて放たれたが、前の黒点はフッと消えてしまった。
「あれは透明化魔術?」
「似たようなものだけど、ステルス魔法って呼んでいるわ」
あとを追っていた黒点たちも見えなくなった。
「見えない者同士でどう戦うのかしら...」
「ロラちゃんだったら、どうする?」
「空気を急速に押しのけて飛んでいるはずだから、それを覚知できる魔術を使うわ!」
「あとを追っている子たちも、似たような魔法を使っていると思うけど、前を飛んでいる子は空気のかく乱を消す魔法を使っているわね」
「“ 無効化”に似た魔法ね?」
「そうよ。相手からの物理的攻撃を中和するのが“無効化”魔法の基本だから、高速飛行で生じる空気のかく乱も消せるのよ」
「いろんな応用ができるのね...」
アイミとアウロラがそんな話をしているそばに、突然ミッチェラが現れた。
「ミッチェラだったの?前を飛んでいたのは?」
「こんにちわ、アイミ先生、ニルミッタさん!はい。私です。先生が来たのを見てあいさつしようと思って降りて来たんです」
「ミッチェラちゃん、こんにちは。すごいわね、あれだけの速さで飛びながら、地上にいる私たちを見つけたなんて...」
「戦いにおいては、いつも四方十方を注意していなさい、ってアイミ先生がいつもおっしゃっていますから... あ、発見されちゃった!じゃあ、またあとで!」
一瞬でミッチェラは消え、入れ違いに タンヤ、ターブ、ミルラ、アエリとプーラが、白いローブを翻して降りて来た。
「ありゃっ、一足遅かったか!」
「ミッチェラ、もう逃げちゃったな!」
「アイミ先生、こんにちは!」
「先生、ニルミッタさん、こんにちは!」
「こんにちは!」
リョースアールヴたちが元気よくあいさつをする。
「遅いわよ。そんなんじゃミッチェラには勝てないわよ!」
「あとを追います!」
「じゃ、あとで!」
「またね――、先生!」
「またあとで!」
5人もミッチェラのあとを追って飛んで行った。
ド―――ン…
大音響が響き渡り、はるか遠くで大爆発が起こり、土煙が高く上った。
ド―――ン ド―――ン ド―――ン…
連続して大爆発が起こり、振動が足元に伝わって来る。
その場所の上空に見る見る黒い雲が集結し、そこから数百のイナズマが放出される。
バリバリバリバリバリ…
ひときわ輝く光線がいく筋も空を掃くように動く。
アウロラが食い入るように、その光景を見ている。
アウロラは急に後を向いて、その方向には誰もいないのを確認すると、両手を差し出した。
ビュ―――ン…
空気が振動する音とともに、熱線の束がアウロラの手の平から放出され、焦げた匂いがする。
「ロラちゃん... 魔術使えるの?!」
「使えるみたいです。あの子たちが魔法を使っているのを見たら、なんだか体がムズムズしてきて... 魔術が出ちゃいました」
「よし、じゃあ、私と模擬戦やりましょ!」
「はい!」
アイミの姿が消え、次の瞬間、超高速飛行で飛び去ったのをアウロラは感じた。
アウロラもすぐに透明化魔術で姿をかくし、浮遊魔術に膨大な量のな増幅魔術をブーストして超高速であとを追いはじめた。
超高速で飛びながら、熱線の束を次々に放つ。
見えないアイミからも魔法攻撃が放たれる。
紅蓮の火気流‐ファイアープルーム‐が空をなめる。
アウロラは防御バリアーで防ぎながら、風属魔術の猛烈なトルナードで攻撃をする。
アイミは無効化でトルナードを消しながら、氷属性魔法の氷槌の雨を降らせる。
アウロラはジグザグに飛行してかわしながら、目にも止まらないような速度で火球を連続して数百、広範囲に発射する。
正確なアイミの場所がわからないので、広範囲に発射したのだのだが、凄まじい攻撃力だ。
「まるで花火だね!」
「それにしてもアウロラって娘の魔術はケタ外れじゃな!」
「あの娘が仲間になってくれてよかったよ」
「まったくだわ。あんな娘と戦えないわ!」
リョースアールヴの演習場には、いつの間にか、アイホおばあちゃん、オジロンじいさん、マルラおばあちゃん、ブロクじいさん、ワオニさんなどの仙人隊のベテラン・エルフ魔術師たちがやって来てアイミとアウロラの模擬バトルを感心して見物している。
アイミは、仙人隊のベテラン魔術師たちに、リョースアールヴへのアドバイスや訓練が限度を超えないように観察してくれるように頼んでいたのだ。
今日のオブサーバー当番であったマルラおばあちゃんとワオニさんが、アイミとアウロラが模擬戦をはじめたと連絡したので、仙人隊が全員飛んできたのだ。
リョースアールヴたちも、アイミ先生とアウロラの模擬バトルを始めたのを見ると訓練を一時休止して、アイミ先生とアウロラの戦いを見ている。
「すごい!アイミ先生、あまり早すぎてどこ飛んでいるかわからないよ!?」
「魔法攻撃がくり出されているところにいるんだろうけど、攻撃した次の瞬間には場所を変えているからわからないね!」
「アウロラさんの攻撃、スゴ過ぎ!」
「先生の攻撃をかわしながら、カウンター攻撃を即時に放つなんて、とても真似できないわ!」
「わたしはしっかりと見ておぼえるわ!」
「ちょ、ちょっと、ミッチェラ、アウロラさんの魔法をおぼえているの?」
「うん!たぶん、もうおぼえたよ!」
「わたしもおぼえたわ!」
「先生のもおぼえなくちゃ!」
「えっ、アルウェンもイドリルもおぼちゃったの?」
「うん!」
「はい!」
「おぼえたよ!」
「!...」
「なに、この子たち?」
「!...」
「!」
「...(末恐ろしいエルフっ子たち)...」
「ニューエルフたちには逆立ちしても勝てないね...」
アレク、カティア、タンヤ、ターブ、ミルラ、アエリやプーラなどの、元神衛士隊や聖衛隊などがボヤいている。
ミッチェラ、アルウェンもイドリルたちは、いわゆるニューエルフと呼ばれている世代で、全員15歳以下だが、その魔法能力や魔法資質は、今までのエルフ魔術師とは比較にならないほどレベルが上なのだ。
アイミとアウロラの模擬戦は30分もかからずに終わった。
アウロラが一方的に戦いをやめ、降りて来たのだ。
彼女のあとからアイミも降りて来た。
「もうダメ。魔素がすっからかんだわ...」
肩で息をしながら、アウロラが言う。
「ちょっと待って、ロラちゃん。今、魔素を補給してあげるから!」
「それにしても、アイミ、前回戦ったときより能力が向上していない?」
「うふふ... 私の特技『魔法模倣』でロラの魔術をおぼえたのよ!」
「どうりで... でも、アイミの魔素は底知らずね...」
アウロラが、ちょっぴり羨ましそうだ。
「私はみんなが思っているほど天才じゃないのよ。ただ、ほかの魔術師が使う魔法をすぐに覚えれるというだけ。唯一、自慢できるのは魔素蓄積量が並みはずれに大きいということだけね」
「私は今の戦いでもわかったと思うけど、せいぜい20分か30分しか続けることができないのよ」
「ロラは短期決戦型ね?でも、あなたのあの凄まじい攻撃をふせげる魔術師って、たぶんいないわよ!」
「アイミ以外はね?」
「あーっはっはっは。言えてる、言えてる!」
「きゃーっはっはっは!」
手をとりあって大笑いする超絶魔術師と天才魔術師だった。
「この二人がタッグを組んで戦えば無敵だね!」
「まったく!アイミにせよ、アウロラにせよ、ワシらは足元にも及ばんのう!」
「それにニューエルフたちも、アイミの指導と訓練を受けて、ますますたくましく育っているしね!」
目を細めて笑っている二人を見ているアイホおばあちゃんたちだった。
一方、ニューエルフたちはニューエルフたちで
「アイミ先生、スゴっ!アウロラさんの魔法をおぼえて、戦闘中に使うなんて!」
「それもすごい増幅魔法をかけていたわよ!」
「私たちも、アイミ先生やアウロラさんの魔術をおぼえたからって、まだ実戦で使えるレベルじゃないよね...」
「本当... もっともっと練習をしなくちゃ!」
「よし、じゃあ、また訓練再開だよ!」
「オーケー! じゃあ、ためしにアイミ先生の魔法とアウロラさんの魔術をマネして使ってみるね!?」
「了解!行くぞー!」
「行くわよー!」
たちまち空気を切り裂いて飛び上がるリョースアールヴたち。
アイミもアウロラも、アイホおばあちゃんたちも、たのもしげにその姿を見ていた。
この日以降、アウロラもアイミといっしょにリョースアールヴたちの訓練を受け持つことになり、生徒たちからはアウロラ先生と呼ばれることになった。
そして、元靉靆の子たちの中で、魔術能力にすぐれているものが20人選ばれ、シーノによって魔種元素がふつうの元素に変換され、肌の色が白くなり、魔族の象徴であるしっぽもなくなり、“リニューアル・エルフ”としてリョースアールヴたちに加わることになった。
そして“リニューアル・エルフ”という名前は長すぎるので、『リニュルフ』という新種族名になったのだ。
* * *
新種族『リニュルフ』のことは、レオもシーノも秘密事項としていたが…
どういうわけか、このニュースは、あっと言う間に同盟国のトップたちの知るところとなってしまった。
最初にシーノに会いに来たのは、ヤマト国でタダノマ人担当大臣を務めているゾルビデだった。
人目を避けるようにしてライトパレスにシーノを訪ねて来たゾルビデは、レオとアイミ同席のもとでシーノにたのんだのだった。
「シーノさん、どうか、ワシをリニュルフにしてください」
そう言って、ゾルビデは座っていた椅子から立つと床にひざまずいて土下座をした。
「ゾルビデさん、そんな恰好しないでください!」
「ゾルビデさん、椅子におかけになって...」
レオとアイミがおどろいて言う。
「ワシは魔大陸で、それは美しい上流階級の娘と結婚しましてな。
とても愛していたのですが、妻は病弱で、出産のときに赤ん坊といっしょに死んでしまったのです。以来、ワシは独身で過ごそうと思いましたが、不思議な運命でイーストランジアで捕虜になり、そこで鬼畜将軍と魔軍から言われている人族の大リーダーであるノブノブ将軍に会い... あ、申し訳ございません」
「よい、よい。そんな異名を魔軍からもらうとは、武士として光栄だ」
「... それで、人族にもこのような素晴らしい者がいるのだと初めて知りました」
ゾルビデは床に頭をつけたまま続ける。
「あ、これは決してレオ殿が素晴らしくないというわけではなく、
あの時、ブラックドラゴンとともに撃ち落さなかったレオ殿には今も感謝しております...
そして、ノブノブ将軍にタダノマ人の監督官というお仕事をいただき、
今はフクシマ・ノリマキ将軍のあとをついでタダノマ人担当大臣をやっておりますが、
みなさんご承知のとおり、縁あって、美しく賢いヤマト人女性と結婚できました...」
レオとアイミがテーブルを回ってゾルビデを立たせようとしたが、ゾルビデは微笑みながらもやんわりと断った。
「ヒデコはワシにとって、過ぎた女房です。
しかし、ワシは魔族。根本的な違いがあるため子どもは作れないのです...
ヒデコも私のことを愛してくれていることは知っています。
ワシは魔族ですが、ヤマト人として残りの生涯を生きていくつもりです。
そして、口には出さないが、ワシの子を望んでいるヒデコに子どもを産ませてやりたいのです...」
「ゾルビデさん、お話はよくわかりました。
どうぞ椅子にお座りください。憚りながら、あなたのお願いをかなえてあげます」
シーノは落ち着いた表情で土下座をしているゾルビデを見ながら言った。
「おお、では、ワシのお願いを聞き届けていただけますか?」
ゾルビデは土下座の姿勢のまま、顔だけあげてシーノを見上げて言った。
「はい」
パチン!
シーノが指を鳴らすと、見る間にゾルビデの肌の色は白くなってしまった。
ゾルビデはおどろいて立ち上がると、ズボンの後部から出ていた太いしっぽを触ろうとしたが、しっぽはすでに消えていた。
「シーノ殿、かたじけない!この恩は一生忘れません!」
喜々として、何度も何度もシーノとレオたちに礼を言ってゾルビデは帰って行った。
「お兄ちゃん...」
「うん。わかっているよ。たぶん、これからシーノ詣でがはじまると言いたいんだろう?」
「そう。今、タダノマ人は同盟国全部合わせると150万人くらいいるわけでしょう?」
「たぶん、間違ってないね...」
「靉靆の子たちをリニュルフにして、ゾルビデさんをリニュルフにしたんだから、ほかのタダノマ人たちをしないというのは不平になりますね...」
アイミも状況がわかったようだ。
「だいたい、“魔種元素をふつうの元素に変換する”なんてこと、私にはできないのよね...」
「ええええ―――――!? それはどういうことだ、シーノ?」
「ええ――っ? アウロラや靉靆の子たちをリニュルフにしたのはシーノちゃんじゃないの?」
「えっへっへへ... 本当はエタナール様なの!」
ペロっと舌を出す守護天使。
「やはりな。シーノがそんなこと出来るなら、とうの昔にやっているはずだもんな...」
「アウロラちゃんが可哀そうだったから、エタナール様にお願いしたら、“いいわ。でも、いつも呼び出されるのはメンドウだから、その力をシーノに預けておきます”ってなっちゃったのよ!」
「おいおい、“なっちゃったのよ!”じゃないだろう?」
「レオさま、そうシーノちゃんを責めないで。彼女はやさしい心をもっているから、見過ごせなかったのよ」
「それで、シーノ、そのJCに逆戻りしたような体もエタナール様にしてもらったのか?」
シーノは、“大好きなお兄ちゃんとデートするために、エタナール様に16歳に成長させてもらって、そのときに身長もグンと伸び、バストも80センチから83センチに急成長したのだ。
だが、つい最近バストは80以下になり、身長も160センチ以上あったのが150センチちょっとに縮んでしまったのだ。
「ううん。これは私の能力で若返ったの!」
「若返ったって、どういう意味だよ?」
「だって......」
「だって、何だ?」
JCのようになったシーノは、媚びるような目でレオを見ると
「だって、お兄ちゃん、“シーノのぷっくりした胸がなつかしいな...”って、
私の胸をみるたびに考えていたじゃない? だから、私、13歳のカラダにもどしたのよ!?」
そして、誇らしげにぷっくりした胸を両手で抱えるのだった。
「.........(汗たらー)」
レオはとなりのアイミをそっと見た。
「あら、そうなの?レオさまは、ぷっくらがお好きなのね? 私の、この、もう三人にお乳をあげた、使いこなされたおっぱいには魅力を感じないのね...」
アイミはシーノの方に向き直ると、
「シーノちゃん、私も一つお願いがあるんだけど...」
「な、なあに、アイミさん...」
アイミが無理して浮かべている愛想笑いを見て引いているシーノ。
「私の胸も、レオさまにさんざん揉まれて、三人の子どもにさんざん吸われる前の胸にもどしてくれないかしら?」
「えーっ、ムリムリ、胸だけ17歳にもどすってムリですーぅ!」
「じゃあ、カラダ全体をもどしてくれてもいいわ」
「ムリですー!ごめんなさーい!」
シーノは部屋から逃げ出して行ってしまった。
バタンと閉まったドアを見たアイミはレオの方を向いた。
「レオさま...」
「お、な、なんだ、アイミちゃん?」
「こんなさんざんこどもに吸われ、レオさまにもまれすぎた胸ですけど、まだ魅力あるかしら?」
「あ、あるよ、あるよ!オレはいつもアイミちゃんの控えめな胸と...」
「胸と?」
「オシリと...」
「オシリと?」
アイミの顔が少しずつ赤くなる。
「耳と」
「えっ、耳?... 耳と?」
「キュっとしまったところが大好きなんだ!」
「恥ずかしいわ、レオさま」
キュっとしまったところが大好きと言われて、真っ赤になって身をよじらせるようにするアイミ。
それを見て興奮したレオは、大好きなエルフ耳奥さんと『シンホダカの秘湯』へ跳んだ。
そして、ミィテラの世界の最初の恋人エルフ奥さんと甘いデートを楽しんだのだった。
この11‐04話から、1話の話を長くしてみました。
いかがでしょうか、読みごたえが増えたと感じられましたか、それとも長すぎますか?




