87 蘇生
【転移】で洞窟の外に出ると眩しかった、入る前と変わらずいい天気だった。ノエルを見ると何が起こったのか分からず目をぱちくりしていた。
「ヒロタカ殿、これはいったい?」
正気を取り戻したノエルが聞いてきた。俺はいつものつもりで【転移】を使ったがノエルは初めてだったみたいで理由が分からないと言った状況だった。
「えっと、【転移】ですね。ちょっと待ってくださいね」
俺は【土魔法】で洞窟中に一瞬だけ土の棘を出現させ残りのオークを殲滅すると、【マップ】からオークの表示が消えた。
「これでよし。」
そう言うとノエルは俺の方に駆け寄ってきて
「ヒロタカ殿、そなたは今何を?」
ノエルには分からなかったみたいだった。
「【土魔法】で残っていたオークを倒しただけです。」
「えっ、どうやったらここからそのような事が?」
「そうですね、【マップ】で見たら残っていたのはオークだけだったので一瞬だけ洞窟中を棘だらけにしてオーク達をまとめて串刺しにしただけです。本当は一匹づつ倒しても良かったのですが、面倒でしょ。」
ノエルは首をかしげて怪訝な顔をしていたが、
「それどころではない、申し訳ないが【転移】で街までお願いしたい。」
ノエルはとりあえず街に戻りたいが為に今の状況の理不尽さなどは関係なしだったので、
「ノエルさん、落ち着いて下さい。外に出て何か気づきませんか?」
そう言うとノエルは難し顔になり辺りを見回し、やっと気づいたみたいだった。
「な、なんでだ。此処はオークと戦った場所で我が隊は全滅した。なのになぜ此処に仲間の遺体がないのだ。」
やっと、状況が分かってきたみたいなので
「えっと、ノエルさん。同僚の遺体は私が収納させていただいてます。それでですね。此処だけの話し、亡くなった方を此処で【蘇生】させようと思います。」
「はあ、【蘇生】ですか。」
イマイチ内容について行けていないのか生返事だった。
「それとですね、亡くなった方を【蘇生】した後、記憶を操作したいのですが問題ないですか?」
ノエルは事の重大性に気づき
「おい、おいじゃない、失礼、ヒロタカ殿そんな事が出来るのか?しかし【蘇生】だけではいけないのか?そもそも【蘇生】とはスキルで出来るものなのか?」
ノエルは不思議そうに聞いてきた。
「信じられないかもしれませんが私は【蘇生】が使えます。ただし使えはしますが、使ったことはありません。それでも良いですか?」
「無論じゃ、彼らが生き返るなら私はなんだってしよう。何なら私の命と交換しても良いぞ。」
ノエルの目は真剣だった。
「そんな事したら俺が悪魔みたいじゃありませんか」
「そう言う意味で言ったわけではない。許せ。それからヒロタカ殿が【蘇生】が使えるのは信じよう。しかし記憶まで操作するのは何故なのだ。」
「そうですねノエルさん、もし自分が死んで生き返ったとします。初めは喜びますが死ぬ直前の恐怖は消えず一生残ります。せっかく生き返ったのにそんな状況は悲しすぎます。なので今回の戦いは怪我をして意識を失ったけど死者は無し。そんな感じにしたいのです。」
「分かった。本来ならば私の一存では決めてはならないことなのかもしれないが私の一存で決め記憶を操作したことは私が墓の下まで持っていこう。それと申し訳無いがヌボローネとネティーニュスの記憶はオークに捕まって居ないということでお願いしたい。」
ノエルは心配そうに彼女たちを見た。
「分かってますよ。大丈夫です。女性にあの状況は厳しすぎます。」
俺も彼女たちを見た。
「それじゃ、やりますか。」
俺は【アイテムボックス】に収納してある騎士たちを全て外に出してから【蘇生】のスキルを創り、その後【記憶操作】のスキルを創った。
まずは【蘇生】と、発動させると全員の遺体の上にキラキラと何かが降りかかるエフェクトがでて息を吹き替えした。これの凄い所は結構グロい感じになっている遺体まで綺麗に復元されてる。しかも着ている服まで直っている。
俺は間髪入れずに【記憶操作】に取り掛かった。【記憶操作】を発動させてわかったことは人の記憶を映像として見ることができ、それを改変することが出来る。例えば男性がオークに背後から刺されて苦痛と共に亡くなる。その男性が刺される前に背後からの攻撃に気づくと俺が思うと彼は振り向きオークの攻撃を避ける映像に変わってしまう。しかし映像はここまでこれ以降の記憶は無いのだから。だからここからの映像は俺が創っていかなくてはいけないので有る。それを何十人もしないといけないし整合性を取らなくてはいけない、こんな面倒くさいこと出来るか。だからこういう作業は十六夜さんの出番だ。
「十六夜、【記憶操作】を頼む。オークは全滅、けが人は有り、女性は捕まっていない。そんな感じで上手くしてくれ。」
要するに十六夜に丸投げだ。でもこのスキルって危なすぎるな。
「分かりました。お任せ下さい。」
「ありがとう、十六夜。」
すると気を失っている人達全員に青いキラキラした光が舞い降りた。
「弘隆様、終わりました。」
すると、あちらこちらで気を失っていた人達が起き始めた。するとノエルが俺に近づいてきた。
「ヒロタカ様。ありがとう御座います。」
それだけ言うと、ノエルはヌボローネとネティーニュスの所に走っていった。なんか敬称が様に代わっていたよ。なんか意味あるのか?
そうしていると、起き始めた騎士たちが俺の周りに集まり、ひときわゴッツいおじさんが代表して、俺の前に出てきた。
「ヒロタカ殿、この度のご助力感謝致します。私はノッピン王国アカムスタム駐屯軍隊長のモーリスです。」
俺はいまいちついて行けて居ないが
「いえいえ、困った時はお互い様ですから。」
それらしく返事をしてから慌てて十六夜にどんなシナリオにしたのか脳内で聞いてみると、オークの大発生に駆けつけた軍がオークに押されている時俺が颯爽と現れ、ほぼ一人でオークを全滅させたみたいなお話になっていました。なんてこった。十六夜に頼んだのは俺だから文句はいえないな。
「それでですね、貴殿にお礼をしたいのですが。」
モーリスがそう言って来るので丁重にお断りして、帰ろうとすると、今度はノエルがやって来て、
「ヒロタカ様、この度はありがとう御座います。此処に居る仲間は全員家族みたいなもの、それを全て取り戻してくれたこの御恩は一生忘れません。」
ノエルが深々と頭を下げているので
「イヤイヤ、そんなに気にしないで、みんな助かった。万事OKでしょう。それより、ノエルさんは記憶書き換えなくて良かった?一人だけみんなと違う記憶なんだよ。」
そう言うとノエルは顔を上げたその顔はとても晴れやかな笑顔だった。
「大丈夫です。記憶を消さない理由は3つ、1つ目は、私の罰です。仲間を助けることが出来なかったことへの。2つ目はヒロタカ様が行った奇跡への感謝を忘れないため。3つ目は記憶が無くなるともう、ヒロタカ様とは会えないような気がするから。」
そういったノエルの顔は真っ赤に変わっていた。
俺はココらへんが潮時と思い、
「じ、じゃ、そろそろ行くから、みんな帰りは自分で歩いてね。ノエル何処かで会ったら声かけてね。」
俺は逃げる様に【飛行魔法】で上昇した。、




