70 村長
俺とチカノーヴァはこっちの世界や向こうの世界の話をしながら歩いていると目的の家に着いた。
かなり大きいお屋敷だった。大きな門構え、石造りの3階建。それはそうだよね、村長なんだから。
門の所に歩いていくと皮の鎧を着た警備の人と思しき人が立っていた。その人が近づいてきた。俺達に気づいたようだ。
「こんにちは、ギルマス。それに、ヒロタカさんじゃないですか。」
またもや知らない人に普通に話しかけられた。芸能人ってこんな感じなんだろうな。こっちは知らないが向こうは知っているって。
「聞いてますよ。村長がお待ちですよ。さぁ、中にはいって下さい。」
そう言うと、警備の人は門を開けて中に入れてくれた。
「彼はランクCの冒険者なんだ。村長宅の警備は冒険者の依頼に有るんだ。楽な仕事なので競争率が高いんだ。その分報酬は少ないけどな。」
「なるほど、だからチカノーヴァさんの事をギルマスって言っていたんですね。」
「そうだな。」
玄関に到着すると扉がひとりでに開いた。自動ドアかと思ったら、中からメイドさんが扉を開けてくれただけだった。矢印は見えていたけどその人が何しているのか分からないからびっくりするね。ちなみにメイドさんの名前はツメルでした。
「チカノーヴァ様、ヒロタカ様、お待ちしておりました。」
メイドさんにそう言われ、応接室に通された。
応接室は豪華なだった。床は落ち着いた柄の絨毯、壁には大きな絵、真ん中に何かの石で出来たテーブルにそれを囲むように革張りのソファーがあった。しかしそこには誰も居なかった。中に入るとチカノーヴァと俺はメイドさんにソファーを勧められたのでそこに座った。直ぐにお茶が出てきた。
俺はなんか緊張してきた。その緊張がチカノーヴァに伝わったのか
「ヒロタカ、緊張しなくても良いぞ。ワシは村長が子供の頃から知っておる。良いやつだ。少しお調子者だがな。お茶が冷める、遠慮なく飲め。」
チカノーヴァは俺の緊張をほぐそうとして言ってくれているが。なんか面接を受ける直前みたいな感じで逃げ出したくなってきた。とりあえずお茶を飲んでみたが味なんて分からん。
「ヒロタカ、お前は何も悪いことをして此処に来たわけじゃない。褒められる為に来たのだ。堂々と胸を張っていたら良い。それにお前の強さに誰一人として対抗出来ないのだから怖がらんでも良い。」
そう言われてもこっちは40年日本で平凡に生きてきた。しかも肉体労働系で対人スキルは無に等しい。それとこんな豪華な部屋に呼ばれたことなどない。魔獣相手なら緊張しなかったのに人間相手はダメだな。
そんな事を考えていると《【精神耐性】のスキルを取得しました。》のメッセージが流れるとさっきまでの緊張が嘘のように無くなり落ち着いた。グッジョブ、十六夜。
そうしていると扉の前に人が来たみたいだ。しかも二人。【探知】と【マップ】のお陰で壁越しでも相手の位置が分かる。名前も見えている。一人はライネル・アカチーとヨハンスと表示されていた。
すぐに扉が開き男が二人入ってきた。年配で人の良さそうな恰幅のいい人と俺よりちょっと若い感じの白いプレートメイルを身に付けたハンサムだった。
「あーごめんね、お待たせお待たせ。」
めっちゃ軽い感じでライネルが話しかけてきて、前のソファーに二人共座った。
「遅い、ワシを待たすとはお前も偉くなったな。」
チカノーヴァはえらくご立腹だった。二人には何か有るみたいだ。
「だからごめんって。二人が来る前にヨハンスにあらましを説明していたんだけどなかなか信じてくれなくてさ、話が進まなくてさ。そのせいで遅れた。俺は悪くないからな。怒るならヨハンスにしてくれよ。」
なんだか村長のライネルは子供っぽい感じの人だった。でもなぜか憎めない雰囲気を醸し出していた。
「いやいや、その言い方ではまるで私のせいで遅れたみたいではないか。ライネル。」
横からヨハンスも必死に自分のせいじゃないよアピールをし始めた。
「まぁ、良い。」
チカノーヴァはそう言うとチラリと俺を見てから
「とりあえず紹介するか。こっちの小太りの男が村長のライネルだ。」
ライネルは立ち上がり
「初めまして私はアカチーの村長のライネル・アカチーです。これでも一応子爵の爵位を貰っているけどただの村長だから緊張しなくていいよ。」
「本当だ。ライネルは何も偉くない偉いのはお前の親父やお祖父さんだ。」
チカノーヴァは厳しく言い放つとライネルは苦笑いをしてから
「厳しいなチカノーヴァは。」
「それから隣に座って居るのがアカムスタムの騎士団長のヨハンスだ。今回のスタンピードに当たって援軍を連れて来てもらった。」
「アカムスタム騎士団長のヨハンスです。今回はヒロタカさんの活躍でこちらも無駄足になりましたが被害無しで何よりです。」
「あーヨハンスもこの村の出身で二人は幼なじみだ。こいつらは子供の頃から知っておる。」
そしてこちらに向いて
「彼がヒロタカだ。今回のスタンピードを一人で止めた化け物だ。」
チカノーヴァは笑いながら言った。
「初めまして、ご紹介にあずかりましたヒロタカです。異世界人です。」
俺がさらっと言うとライネルとヨハンスは目を見開いてこっちを見てきた。どうもこの情報は報告していなかったみたいだった。




