69 ヒロヒロ
チカノーヴァと一緒に玄関を出た。そこにはチカノーヴァの乗ってきた馬が柵に繋いてあった。
「あっそっか、チカノーヴァさん馬で来たんですね。」
俺の何気ない一言に
「そうだが、ヒロタカはどうする。スキルで先に村にいくか?それともワシの後ろに乗るか?」
「馬には乗ったことが無いので興味は有りますが、今日は【転移】で送りますね。」
「すまないな、お願いする。」
それを聞くと俺は【転移】を使い、村の前に移動した。
門に近づくと守衛さんが話し掛けてきた。
「チカノーヴァさんとヒロタカさんじゃないですか。いきなり人が現れたんでビックリしましたよ。」
知らない守衛さんなのに俺の名前を知っていた。
「ヒロタカさんには大変感謝しています。この村をスタンピードから守ってくれてありがとうございます。」
「気にしないでください。たまたま、自分にその能力が有ったからやっただけですよ。もし弱かったら逃げていたかもしれませんし。」
そんな話をしてから村の中に通してもらった。
村に入るとあちらこちらで昨日のスタンピードの話と俺の話がされていた。それにみんなが俺を見ている。
「なぁ、チカノーヴァさん、みんなが俺を見ている。昨日の件で俺って有名人になったのか?」
横で歩いていたチカノーヴァに聞いた。
「当たり前だろ。何を訳のわからん事を言っておる。黒い瞳の黒髪家族って村で知らない人は居ないぞ。」
そんな事を話しながら歩いていると通りの向こうから4人組の子供たちが元気よく走ってきた。すると近づいてきた子供たちがいきなり、
「ヒロヒロ発見。」
小学3年生位の男の子が声を掛けてきた。すると隣りにいた男の子も、
「本当だ。ヒロヒロだ。」
もう一人居た、少し小さい女の子は
「今日はサンゴン居ないの?」
と、聞いてきて、俺はびっくりしていると、少し年上の女の子が
「こんにちは、ヒロタカさん。昨日はありがとう御座いました。」
礼儀正しく頭を下げて挨拶をしてきた。俺は何事か理解できずに焦ってしまって、
「いえ、こちらこそ皆様が無事で何よりです。」
中学生位の女の子に訳の分からない返答をしてしまった。
「ところで、みんな、なんで俺をヒロヒロって呼んでるの?」
気になったので子供たちに聞いてみると、年長のお姉さんが
「昨日のスタンピードの後のお祭り騒ぎの時、ミエちゃんに小さい子はヒロタカさんの事はヒロヒロって呼んであげてって言われましたので」
何してんだか美恵は、しかも自分のことをミエちゃんって呼ばせてるし。
「あたしね、サンゴン見せてもらったの、そしてね、イツキさんの従魔のアラクネガールのアラルも見たの。」
ちっちゃい方の女の子が話に入ってきた。
「そうだ。アラルとミエちゃん面白かったな。」
「ミエちゃんがアラルに急に動くなスカートがめくれるって必死になって叫んでたのが面白かった。」
「アレでしょミエちゃん蜘蛛が嫌いだって言ってたよ。アラルの足は蜘蛛の足だからだって。」
「あたし、フワッとしたスカートの中がきになって覗いたら黒い足がワシャワシャあったよ。」
子供たちは爆笑していた。子供たちは巨大蜘蛛の足に抵抗はないみたいだな。たくましい。
「それとユウキくん凄い。なんか四角いブロックいっぱい出していたし、凄く力強いし、僕と同じ年ぐらいなのにいろんなことが出来て凄かった。」
「ホント、ホント」
なんか子供たちの話は続きそうなので。
「なんだ、お前ら勇気と遊びたいのか?」
そう言うと子供たちは首が千切れんばかりに縦に振った。
「分かった。連れて来てやるから待ってろ。」
俺は、チカノーヴァに謝って、【転移】で家に戻り、部屋でゴロンとしていた勇気を拉致って戻って来た。
戻っててくると、いきなり戻ってきた俺と勇気を見て子供たちは騒いでいた。もちろんサンゴンも連れてきた。勇気は直ぐに子供たちの輪に入って行った。
「勇気、なんか一緒に遊びたいみたいだから頼む。それと危ないことはするなよ。怪我したら直ぐに俺を【チャット】で呼べよ。まぁ、そこら辺は十六夜が見ているはずだから大丈夫だと思うけど、それとなんか絡まれても殺すなよ。お前ハイレベルなんだから。」
勇気は軽く手を上げた。そして、
「はい、その当たりは大丈夫です。弘隆様。ちゃんと護衛させていただきます。」
直ぐに十六夜が答えてきたが、突然の十六夜の声に子供たちはまたもや騒ぎ始めた。
「じゃ、俺は行くぞ、気をつけろよ。」
そう言うと勇気達一行は走って行こうとしたが、勇気が立ち止まり俺の方にやってきた。
「パパ」
「何だ?」
なんだろうと考えていると、
「昼ご飯代頂戴。」
そう言って、右手を出してきた。
「ハイハイ」
しっかりしてるな。流石だよ。そして、その右手に銀貨を一枚乗せた。そのついでに勇気の頭にサンゴンを乗せた。
すると、多分戦闘モードなんだろうな、凄い勢いで離れて待っていた子供たちの所に走っていった。
でも、残念、かなり早く走ったせいで風が起こり小さい女の子が尻もちを付いていた。
「バーカ、勢い良く走りすぎだ。気をつけろよ。それと、無駄遣いするなよ。」
俺が大きな声で叫ぶと勇気は右手を上げていた。子供たちは「銀貨だ、すげー。」「サンゴンいるー」などと叫んで居たが、その中に「銀貨があったら何でも食べられるね」という声が聞こえた後、勇気がホントは自分のお小遣い有るから貰わなくても大丈夫だったんだけどねってみんなに言っていた。自分の小遣い持っていながら小遣いねだって来るとはやるな勇気。
そんなやり取りが終わる頃チカノーヴァが笑いながら
「ヒロタカ、子供に銀貨はどうかと思うぞ。」
「俺も、今思った。なんかこっちの世界だと金銭感覚が違いすぎた困るな。」
そうだよな、銀貨って言ったら1万円だよな。そう考えると俺の地球での年収って金貨数枚だったんだな。ちょっと切なくなった。
「そろそろ行こうか。」
嫌な顔一つせず待っていたチカノーヴァに謝り、二人は歩き始めた。




