39 ワグネル商会
俺達は奴隷ギルドを出ると、ワグネルさんに
「次はワグネルさんのお店に行きますね。」
「そう言うと思っていましたよ。」
そう言いながらワグネルは通りの向こうの大きな建物を指差した。そこには大きな看板にワグネル商会とデカデカと書かれていた。
「あれっ?ワグネルさん雑貨屋さんって、言ってましたよね。」
そう言うと、ワグネルはしてやったり、みたいな顔で、
「はい、雑貨屋さんですよ。ちょっと、大きいですけど」
ワグネルは笑っていた。
「ヒロヒロ、私は知っていたわよ。エルムに聞いたもの。」
続いて、子供二人も知っていると言った。逆に言うと知らなかったのは俺だけ?いや、違う、オリビエはどうだ?
「えーあー、オホン、オリビエさんはこの事をしっていたのかな?」
すると、オリビエは
「はい、知っています。ワグネル商会はかなり大きなお店です。他の町にも有りますし、私の村にもありました。」
あー、そうか、俺だけ知らなかったのか。俺はがっくりと項垂れた。
「いやー、すみません、ヒロタカさん。みんなには、内緒にしておいて欲しいと、私が言ったのですよ。」
ワグネルは気まずそうに頭を掻いていた。
「いやー、やられました。確かにおどろきましたよ。」
俺は悔しいがちょっと楽しかった。
「じゃ、店に行きましょう。」
ワグネルはそう言って、大通りを横切り、店の方に行った。
店の前に来ると従業員らしき人がワグネルに気づき声をかけてきた。
「おかえりなさいませ。社長。」
ワグネルは軽く手を上げ、中に入った。
それに続い俺達も店の中に入った。そこはかなり広くホームセンターの様な感じだった。出口の近くに精算カウンターがあり、数人の従業員が居た。そしてワグネルに気づき会釈をしていた。
美恵は速攻で走り、商品を物色していた。逸樹も勇気も店の中が気になるのかうろうろし始めた。
「ワグネルさん、すみません。家のものが。」
「良いですよ。商品を見てもらっているだけなんですから。」
俺は、店内を見た。棚が幾つもあり、その棚は安いものは銅貨1枚、大銅貨1枚など金額で分かれており高いものは店員のいるカウンターの後ろにあり店員に欲しい商品を言って取って貰っていた。
「それにしても凄い商品の量ですね。」
「そうなんですよ。私は商人とはいろいろな種類の商品を集めて必要としている人に提供するのが仕事だと思っていますから各地を周り商品を集めている。そんなことをしていたらいつの間にか大きな店になっていました。」
ワグネルは笑いながら言った。
「それでは、ワグネルさん、預かっている馬車とご遺体をお返ししたいのですが。」
ワグネルは思いだし様に。
「そうでした、そうでした。それではこちらにどうぞ。」
ワグネルは関係者以外立入禁止の扉を開けて「奥にどうぞ」と言って中に入っていった。
そこには、商品の在庫が棚に並べてあった。そこも通り過ぎて隣の部屋に入っていった。そこは何もない部屋で大きな扉があり馬車でもらくらく入れそうな扉であった。
「ヒロタカさん此処に出してもらえますか?」
そう言うと俺は【アイテムボックス】から馬車と遺体を取り出した。
ワグネルは遺体を大事そうに抱え部屋の端の方に運び白い布を掛けた。
「ありがとうございます。ヒロタカさんこれで、彼を弔ってやる事ができます。」
後はウルメラのパーティーメンバーだけだな。
「そうだ、ワグネルさんお風呂で約束した、お湯の魔法具を作りますね。何からお湯が出るようにしますか?」
そう言うと、ワグネルは
「本当に良いのですか?私はてっきり冗談だと思っていましたよ。」
「あれぐらい楽勝ですから、今から創りますね。それと、温度調整も出来るようにしておきますね。それじゃ、何を魔法具にします?なにもなかったらただの木の板でも良いのですが、」
そう言うと、ワグネルは「ちょっと待って下さいね。」と言って、隣の部屋に入って行った。
しばらくすると、ワグネルは戻ってきて、
「お待たせしました。隣の部屋にある石像にお願いできますか?」
そして、二人は隣の部屋に行き、ワグネルの言っている石像の前に来た。
その石像は綺麗な女の人の等身大の石像で右肩の上に壺を横倒しにして乗せ、壺から水を何処かへ流して居るようだった。その石像が3体有った。それとその横に短剣が置いた有った。
「すみません。ヒロタカさん、この石像の壺の中から出るようにとその短剣の刃の部分から出るようにお願いできますか?」
俺は石像は分かる。あの壺から本物のお湯が出てお風呂に有ったらかっこいい。しかし、短剣はよく分からなかった。短剣から水って需要有るのか?
「いいですよ。此処で創っても良いですけど、試しが出来ないのでさっきの部屋に持っていきますね。」
そう言って、石像と短剣を【アイテムボックス】にしまった。
二人は先ほどの部屋に戻った。
俺は【アイテムボックス】から石像と短剣を取り出し、作業に掛かった。
「十六夜、お湯の温度調整と入り・切りが出来るようにしたいが、何かいい案は有るか?」
俺は久々に十六夜に助けを求めた。これが出来ないと不便そうだからね。
「はい、こういうのはいかがでしょうか?」
十六夜は俺の頭のなかにイメージを流してきた。
「おおっ、十六夜、こんな事出来たのか。言葉の説明よりわかりやすい。流石だな。よし、分かった。その案で行こうかな。」
十六夜の案は起動スイッチの場所を創りそこに魔力を流すと起動するようにする案で、その起動スイッチに魔力を流す時にお湯の温度をイメージしてもらうという感じだった。本当はダイヤル式の温度調整がしたかったがなんかあの石像にダイヤルとか無粋な気がするし、短剣にダイヤルってなんだよって感じだしね。
俺は作業にかかった。作業自体は単純ですぐに終わった。途中魔石が無いのでワグネルに貰って作業を続けた。魔石は【岩石変形】で女性の額に埋め込み第三の目みたいなデザインにしてみた。それと起動スイッチはなんか何処にするか考えていたら、めんどくさくなったので、石像の何処に魔力を流しても起動するようにした。
短剣も作業に掛かった。鍔の所に【金属変形】魔石を埋め込み、起動スイッチは握りの所にした。
完成した。時間にして、1時間もかからなかった。後は起動してみるだけだな。
「はい、出来ました。それでは、これから試しますね。少し、床が濡れますが、あとでクリーンを使いますね。」
俺は冷たい水をイメージして魔力を流した。すると冷たい水が流れてきた。すぐに止め温かい、熱いへと変えてみた。上手く行ったみたいだ。石像、短剣両方問題なかった。
「どうですか?」
そう聞かれるとワグネルは
「すみませんが、もうちょっと石像の水量を増やしてもらえますか?」
俺は補正して、ワグネルに試してもらった。ワグネルは難なく魔力を流し、温度調整も何事もなく出来た。
「ありがとう御座います。これで十分です。助けてもらって、こんな凄いものを頂いて。申し訳ないです。」
「いえいえ、こちらこそ色々、お世話になったので、これぐらいしか出来ませんので。」
そう言うと二人は店の売り場に戻った。




