34 来たよ、ついに
俺達は食堂の方に向かった。すると食堂の方から3人組の冒険者が近づいてきた。
「ヒロヒロ、来たよ、なんか来たよ。」
そう言っていると、3人の内の一番大柄な1人が声を掛けてきた。
「おいおい、おっさん、冒険者になったのか、止めとけ、冒険者はお前みたいな、ひょろっとしたおっさんには無理だぞ。なんだ、そっちのおばさんも冒険者になったのか。そっちは息子か、一家総出で冒険者って、笑っちゃうな。」
そう言って3人は大声で笑った。周りでもクスクス言っている。
[ 美恵様 ]ヒロヒロきたよ、例のヤツ来たよ。奴らおばさんて言ってきたよ。コテンパンにやっちゃいな。
美恵が【チャット】で送ってきた。
「すみませんね。仕事が無いもので、冒険者になろうかと。」
「おっさん、何歳だよ。」
「41になります。」
そう言うともう一人のモヒカンの男が話し始めた。それよりモヒカンって、世紀末かよ。
「41、ってなんだよ。もうすぐ引退する年だぞ。いつまでやるんだ?杖つきながらやるのか、あー魔術師なら杖はつくか。ハハハ」
モヒカン男のその言葉にはみんな苦笑していた。が、モヒカン男は言ってやった感たっぷりだった。
「じゃ、仕方ないな、ここは先輩冒険者の俺が新人冒険者の適正を見てやろうかな。使えそうだったら、俺のパーティーに入れてやる。地下の訓練場に付いて来な。」
なにが、じゃ、なのか分からないが、面白そうなので付いて行く事にした。が、その前に【チャット】で勇気に連絡した。
[ 弘隆様 ]おーい、勇気、今から地下の訓練場に行くぞ。
[ 勇気様 ]えっ、まさか、例のヤツキタの?
[ 弘隆様 ]そうそう、それ、
[ 勇気様 ]いいなー、パパばっかり。じゃ、そっちにウルメラ姉ちゃんとオリビエ姉ちゃん連れていくね。
[ 弘隆様 ]待ってるぞ。
[ 勇気様 ]了解。
そして、俺と逸樹と美恵はチンピラ3人組に付いて行き、食堂横の階段を降りていった。
階段を降りると結構広い体育館みたいな所だった。天井には魔法具かな照明があり、壁には、木製の武器が並べて有った。床は石畳だった。
俺達6人が階段から降りると後ろから続々とギャラリーがやって来た。
そこら中で賭けが始まっていた。「俺は5秒に銀貨1枚」「俺は10秒に銀貨3枚」など色々な声が聞こえる。
今更ながら、耳も良くなったなって、実感した。流石レベル107だ。
そう思っていると、大柄な男が
「言い忘れていたな、俺はランクCの冒険者のロフテンだ。お前の獲物はなんだ。俺の獲物はロングソードだ。」
そう言って、ロフテンは壁から木製のロングソードを取った。
「俺は」
そう言いながら壁にある武器を見た。ロングソード ショートソード、刀、レイピア、ダガー、斧、メイス、槍、色々見ながら、俺は刀を手に取った。やっぱり日本人は刀でしょ。
「おっ、おっさんは刀か。また、微妙なものを選んだな。これだから素人は。」
「すみません。初めてなもんで。」
(十六夜、ロフテンを殺さないように手加減って、どんな感じ?)
『弘隆様はまず、木刀に魔力は絶対に流さないで下さい。魔力を流すと木刀の硬度が上がります。硬度の上がった木刀で全力で振ると音速を超えますので、衝撃波が発生し、周囲を巻き込み、建物が崩壊する可能性があります。硬度を上げないで全力で振ると木刀が手元で折れてしまいます。そして、戦闘が開始しますと、戦闘状態になり普段は意識していないレベルの補正が顕著にでて、弘隆様でしたら全てが止まったように感じると思います。弘隆様は常人の100倍の状態になりますので、1秒が1分40秒に引き伸ばされます。相手はレベル30です。常人の3倍ほどしか補正されませんですから97倍の差があります。弘隆さまは1キログラムの衝撃のつもりでも相手には97キログラムの衝撃に感じてしまいますので十分気をつけて下さい。』
(その前に俺は、なぜ常人の100倍?)
『弘隆様はレベル1の時に常人の能力でしたので。』
(ありがとう。しかし、ゴールデンニードルベアの時はあんまり感じなかったが?)
『それだけゴールデンニードルベアが強かったということです。』
「おっさん、そろそろやるか。」
「はい、分かりました。胸をお借ります。」
お互い距離を取り、対峙し、ロフテンが「行くぞ!」の声と共に試合が開始した。
「行くぞ」の声と共に俺は、戦闘に集中したせいで、周りの人の動きが止まった。視力も上がったはっきり見える。ロフテンの動きもほぼ止まっている。何か走り出そうとしている。
俺も動き始めた。加減が分からないので、歩き始める事にした。
ロフテンとの距離は約10メートル、歩数にして十数歩だ。普通に歩けば10秒掛からないかな。歩き始め様としたとき《【気体干渉力無効】を取得しました。》の、メッセージが流れたが、気にせずロフテンの前まで歩いた。すると、ロフテンの目がゆっくりと俺の方を見ると同時に右手で握って肩に担いでいた木のロングソードがゆっくりと俺に向かって振り降ろされてきた。
しかし、あまりにも遅い。その為どうしたら良いのか悩んだ。とりあえずちょっと下がって、剣をかわしてみた。木のロングソードが振り下ろされるまでに10秒近く掛かった。ペンを持っていたら木のロングソードに落書き出来るよ。
どうしたものかと、考えていたら、2撃目のモーションに入った。振り下ろされた木のロングソードの切っ先が少し上がり始めた。そして、ロフテンの左肘が折りたたまれ、そして、ゆっくりと突きを繰り出してきた。
俺はいつまでも付き合っているのも面倒くさいなと思い始め、終わらす事に決めた。
俺は、ロフテンの突き出された、木のロングソードを漫画みたいにカッコよく切り刻めないかと思い、刀を思いっきり振り始めた。俺が思いっきり振り始めたので木刀がきしみ折れそうになった。気にせずにロフテンの木のロングソードに叩きつけた。その瞬間ロフテンの木のロングソードと俺の木刀は折れてしまった。
そして、その反動で、ロフテンは後ろに尻もちを付いた。その瞬間、時間の流れが元に戻り、音も戻った。
周りは賭けに負けた奴らがブーブー言っていた。そんなの気にしないで、ロフテンの前に立ち、手を出し、ロフテンをお越した。
「ありがとう御座いました。大変勉強になりました。」
そう言うと、ロフテンはポカンとした顔で「ああ、」と言った。
その時、階段から「ヒロタカさーん、待って下さい。」と大きな声で叫びながら、クレアが降りてきた。
「良かった、まだ始まってなかった。その試合ちょっと待って下さい。ロフテンさん、ヒロタカさんは駄目です。」
そこまで言って、周りの様子がおかしい事に気づき、クレアは
「まさか、終わっちゃいました?なんにしても、ロフテンさんが無事で良かった。ロフテンさん、もう新人いびりは止めてくださいね。」
ロフテンは「ああ。」と言って、二人を連れて階段を上がっていった。クレアは俺の心配じゃなくてロフテンの心配をしていたようだった。
「もう、ヒロタカさん、自分のレベル分かってて、こんな事しないでくださいよ。」
「クレアさん、すみません。こんな事されるのは初めてだったもので、ちょっと悪ふざけが過ぎました。」
俺が、謝ってると後ろから声が掛かった。
「ヒロヒロ、なんで、もっとバコーンとやらなかったの?私の事おばさん呼ばわりしたのよ。私の事をおばさんって。ねぇ、クレアさん。私の事おばさんって言ったのよ。腕の一本や二本は置いていってもらわないとね。」
クレアは困った顔をしていた。続いて、後ろから
「パパ、やったね。ちょっと迫力に欠けたけど、玄人好みって感じの終わらせ方だったね。それと5秒以内でありがと、ウルメラがガッツリ稼いていたよ。」
ウルメラと勇気は俺に賭けていたみたいだった。当たり前か。
そんな事をしていると、階段からワグネルが降りてきた。
「やっぱり、ヒロタカさんでしたか。新人が洗礼を受けてるって上で言ってましたので、多分そうじゃないかと。」
「すみませんね。ワグネルさん。ちょっと悪ふざけが過ぎました。それで、知り合いとは会えましたか?
「はい、会えましたよ。じゃ、依頼の完了報告と、今回の説明をしにいきましょうか。クレアさんお願いします。」
そう言って、みんな揃って階段を上がって行った。




