18 調理
薄暗くなり始めたので、川原の石ブロックを片付け、すぐそこの、家に戻った。
家に帰ると、入ったすぐの部屋に逸樹と勇気が居て。ゴロンと床に寝て腕相撲をしていた。
俺達が部屋に入ると、
「おー、親父、お母さん、お帰り」
「パパ、ママお帰り」
寝ながら言ってきた。
「おう、ただいま。」
「ただいま。」
「「お腹減った、ご飯まだ?」」
二人して言い出した。
「分かってるよ。肉捌いてきたから、とりあえずステーキだ。とても素敵だろ。」
「そんな、細かい所で駄洒落とかいいから。」
あーいつも通り笑いは無い、いや、ある、失笑という笑いが。
「でも、味付けが無いんだよな海まで出れたら、塩が採れるけど。とりあえず明日村に行くから、我慢だね。」
俺がそう言うと、逸樹と勇気はがっくり頭をうなだれた。
「味付け無いって、まじっすか。」
「仕方ないだろ、もう遅いんだし、店も何も近くに無いんだから。」
「パパ、車造って乗って行こうよ」
「はいはい、車は要らない。俺の【転移】が有るから移動は問題ない、もうちょっとレベルが上がったら、どこでも楽にいけるから。我慢しろ。」
「じゃ、パパ、早くレベル上げしてきて、早く、早く、」
「勇気、うるさいぞ。こんな暗くなって狩りなんて、親父が危ないだろう、怪我したらどうするんだ。」
意外とこんな時は優しいのは逸樹だ。さすが長男。
「うー、仕方ないな、パパ、明日もガンバレ。」
逸樹に怒られ、ちょっとおとなしくなった勇気であった。
「じゃ、とりあえず、肉を焼いて来るから、ちょっと外行くわ」
「「いってらー」」
俺と美恵は外に出てお互いの顔を見た。
「ヒロヒロ、どうやって焼くの?」
「やっぱり、気付いた?俺も何も考えて無かった。」
調理しようとして道具がないことに今やっと気付いた。
「いま気付いたって、どうよ。ヒロヒロ」
「ちっちゃい事は気にするな。とりあえず木で串でも作って刺して焼くか」
「ナイスアイデア!ヒロヒロ、それで行こう。でもお皿もコップも無いね。」
「こんな時は、助けて~、十六夜~」
俺は何処かのダメダメ眼鏡くん風に呼んでみた。
「はい、如何なされました、弘隆様」
普通に答えられた。期待はしてなかったからね。
「えっと、食器類と調味料が無いね」
「それでしたら、食器に関しては手近なものでしたら木製でしたらすぐに製作出来ます。」
俺は十六夜の提案に飛び付いた。
「よし、それでは、行こう。」
俺の頭の中で《【木材変形】のスキルを取得しました。》のメッセージがながれた。
「十六夜、なんだこのスキルは?」
そろそろスキルに慣れてきた俺は、取得した時に使い方を調べたのだが、いかんせんこのスキルの説明は短かった。
「木材を変形する。って、なんだ?加工とかじゃないのか?」
「はい、その通りでございます。木材をイメージ通りに変形させます。出来るのはあくまで木材でまだ切られていない樹木に対しては発動致しません。」
「オッケー」
俺はあいにく手持ちの木材が無いので、
[ 弘隆様 ]勇気、ちょっと木材持って来てくれ。
[ 勇気様 ]了解!
【チャット】で呼び出すと、家の中から悠生が出てきた。
「パパ。はい、」
そう言うと俺の目の前に木のブロックを置いて直ぐに家に戻った。
しっかし、相変わらず勇気のブロックは不思議だ。見た目は間違いなく木だ。上から見るとちゃんと年輪が真ん中にある。1メートル角の芯材だ。笑ってしまうのは樹皮が有るのだ。普通、樹木は円柱状でしょう、でもこれは立方体の回りに樹皮があったのだ。強いて言うなら1メートル角に製材して樹皮を回りの張り付けた感じである。これを見て思わず四角いスイカを思い出してしまった。
「よし、木材が来たな。一丁やってみるか。」
「ヒロヒロ、手早くね。」
妻の容赦ない一言にも耐え、木材ブロックの前に立ち手をかざし、【木材変形】と言い、直径30センチほどの浅い紙皿をイメージした。すると木材ブロックの中から一枚の木の皿が浮き上がって来るかのように出てきた。
それを手に取り、
「お、出来た。結構いいいな。」
そんな事を言っていると、美恵のチェックが始まった。
「うーん、ちょっと薄いよ。やり直し。」
ダメ出しだ。
「了解、今度は1センチ位の厚さにしてみるよ。」
再度木皿作りに取りかかり、出来上がった。
「ヒロヒロ、オッケー」
妻のオッケーが出たので20枚ほど量産しておいた。
「次はフライパンか、鉄が要るな。」
「そうですね。弘隆様は鉄をお持ちですか?」
「有るが、量は無いな。ゴブリンが持っていたショートソード一本とオークが持っていた槍の穂先一つかな」
そう言いながら、【アイテムボックス】から折れたショートソードと槍を取り出し自分の前に置いた。
「そうですね、このショートソードの残骸ならフライパンを作る位の鉄の量はありそうですね」
すると《【金属変形】のスキルを取得しました。》のメッセージがあった。
「要領は【木材変形】と同じとなっております。」
「ありがとう。」
俺は地面に落ちているショートソードの残骸に手をかざし【金属変形】と唱え、30センチ前後のフライパンをイメージした。
すると、バラバラだったショートソードの原形はなくなり銀色の液体状となり一ヶ所に集まり球状になって、そこから円盤状になりフライパンへと変形していった。
「よし、出来上がり。」
こんな事までできるなんて素晴らしいけど、異世界初日は村に行けないと食事一つ厳しいな。
「ヒロヒロ、早くしてよ。お腹空いたよ。」
美恵も飽きてきたみたいだ。さっきまで立っていたのに今はしゃがみこんで木の枝で地面に絵を描いていた。
「次は何だ?」
「コンロもしくは釜戸的なものが必要かと」
「とりあえず釜戸だ」
「はい、分かりました。」
今度は頭の中で《【岩石変形】のスキルを取得しました。》とメッセージが流れた。
「これで石を変形する事が出来ます。」
「了解!」
早速、釜戸を作り始めた。
「何だか、晩飯作りが道具作りに変わってるな。」
「申し訳御座いません。私の力不足です。」
「いやいや、十六夜は十分に頑張ってるよ。第一、体が無いから仕方ないよ。」
そんな話をしているうちに、口が一つの釜戸が出来た。
「よし、肉を焼くぞ。と、その前にテーブルと椅子も作っとかないと」
「あー、【絵画】のスキル発現した。やったね。で、何処まで行ったの?」
【スキル取得効率80倍】は伊達じゃないな。
「ちょっと、テーブルと椅子創る。」
「えー、そんなの後でいいじゃない。退屈だから、出来たら呼んで、家の中に居るから。」
そう言うと美恵は家の中に入って行った。
俺は、残っている木のブロックで一畳ほどのテーブルと椅子6脚を作り、椅子は【アイテムボックス】にテーブルは釜戸の近くに置きその上に肉を取り出した。
「焼くのは良いけど、薪が要るか。」
そんな事を考えてたら良い事を考えてた。
「ファイアーボール」
手のひらを上にし唱えると30センチ位の火の玉が出来た。そして、それを釜戸の中にそっと入れると、釜戸のなかで宙に浮いたまま燃え続けていた。
「おっ、以外といけそうだな。」
「そのようですね。ファイアーボールをこの様に使うとは私には思い付きませんでした。ファイアーボールを着火に使う事はありますが」
話ながらさっき作ったフライパンを釜戸の上に置き加熱している間に肉をステーキの厚さに切り出し、十分に加熱したフライパンに肉を乗せ焼き始めた。辺りに肉の焼ける良い匂いが漂い始めた。
「よし、そろそろかな。」
ひっくり返す時にフライ返しが無いことに気づき大慌てで菜箸とまな板を作り、お肉をひっくり返し焼き続けた。
「よし、焼けた。」
焼けた肉をまな板に置き一口大に切り皿に乗せ、冷めないうちに【アイテムボックス】にしまった。
この作業を後三回繰り返し、残った肉汁で大慌てで洗って切った自然薯と菜っぱを炒めた。
「やっと、飯だ。」
「お疲れ様です。」
釜戸の火はまだ燃えていたので消えろと念じたら消えてくれた。
今回の経験で【調理】を取得していた。よく考えたら始めに取得しておくべきだった。




