第8話 B-4 お兄ちゃんの幽霊船団退治
日はすでに落ちて夜の帳が降りていたはずだが、一帯は火炎放射によって発生した火災によって昼間のように明るくなっていた。
吹き付ける海風にあおられて集落は勢い良く炎上し、制御無くふらついていた亡者たちは次々と炎に飲まれて炎上していく。その炎に照らされて、頭目の竜の巨大な姿が不気味に浮かび上がっていた。
「先輩!マナちゃん!このままじゃ逃げ切れない!」
「援護します!」
サトルの救援要請に応じてマナは機関銃に飛びつくと、頭目竜を目掛けて発砲を開始。ナツキも機関砲を起動させて攻撃を加える。
『ぐおぉ!?』
12.7mmはともかく、さすがに20mm機関砲の威力は凄まじく、頭目竜に直撃すると体に風穴が開いてひっくり返ってしまう。
「やったワン!」
だがサトルは一瞥しただけでドリンに戻るよう叫ぶ。
「ドリン戻れ!今のうちに逃げるんだ!」
機関砲を浴びて崩れ落ちた頭目竜だったが、まるで粘土人形のように穴がふさがると、再び立ち上がって追って来た。
『馬鹿め!大した威力だが、それだけでは我は倒せんぞ!!』
「再生しちゃうよアイツ!」
「完全にバラバラにしないと復活するってヤツか!」
頭目が変化した竜は、体内に核としていた宝玉が砕かれない限り再生可能という、魔術実験を重ねて作り上げられたもの。ピンポイントで核を粉砕できれば良いのだが、サトルたちはその場所を特定する以前に、そのような方法で竜の体が維持されているとは考察のしようが無かった。
「だったらこれね!」
次に船から発射されたのは無反動砲。正確に直撃した弾頭は肉体を直撃して大爆発を起こし、頭目竜は大きく跳ね飛ばされた。
「やった?」
「いや、まだだ!」
無反動砲の一撃を浴びて右半身が引き千切られた頭目竜。どう見ても致命傷を与えたようにしか見えないのだが、倒れこむ間に肉体が急速に修復されているのが見て取れた。この時も核である宝玉には損傷を与えられなかったのだ。
「ちぃ!一度に何発も当てなきゃダメか!」
サトルの見立ての通り、竜はまたしても再生を開始。無反動砲の一撃を持ってしても時間稼ぎにしかならなかった。
「今のうちに船に戻るぞ!!」
なんとか船に戻ったサトルたちだが、状況は芳しくなかった。
「サトルくん!無反動砲も機関砲も弾切れよ!」
「上陸前に撃ちすぎたか……」
残った重機関銃の弾幕を浴びながらも、ゆっくりと不審船に迫りくる頭目竜。
『貴様たちの船は厄介だ!破壊してくれる!!』
「どうするサトル!一旦引くか?!」
カツミは撤退を提案したが、サトルは否定した。
「いや、ここで撤退したら、奴らは態勢を立て直してしまう!アイツだけになった今のうちに倒すしかない!」
「お兄さん!意気込みは分かりますけど、アレを一撃でやっつけるだけの火力は残ってるんですか?!」
マナの問いに、サトルとカツミが不敵に笑みを浮かべた。
「ああ。この船にはあるんだよ。とっておきがな!」
カツミは自信満々に言い放つ。この船には二人しか知らない秘密が隠されていたのだ。
「先輩!マナちゃん!先に脱出してください!ドリンは二人の護衛を!」
不審船には小型艇の格納庫があり、この船には比較的新型の四人乗りモーターボートが二隻搭載されていた。
「サトルくん!」
「みなさん!」
心配そうな目を向ける二人にサトルは無言でサムズアップしてみせた。
「大将が腹括ったんだ!派手に決めるぞ!」
「だよね!」
「わんわん!」
その一言を聞いて頷くと、二人は格納庫に降りてモーターボートを起動させた。
「脱出するワン!」
船尾の観音開きの扉をドリンが蹴り飛ばすと、視界一杯に海が広がる。ナツキはハンドルを握ってボートを発進させた。ボートは頭目竜に気付かれないまま、かなりの速度で港を脱出する。
「よし、ギリギリまで引き付けるぞ!」
「了解!」
サトルとマドカは残った重機関銃や自動小銃をありったけ頭目竜に浴びせる。だが目や口に飛び込んだものはそれなりに怯ませる効果はあったが、他は虫に噛まれた程度の痛みしか感じないらしく、悠々と近づいてくる。
『風に頼らぬ鉄の船も容易に出港できんか!ならばその武器が動かなくなった時がお前たちの最期だ!』
一方のカツミは船の奥に入って機器を確認。スイッチを入れると赤や緑のランプが転倒していく。
「よし!起動準備良し!」
カツミが甲板に上がると頭目竜はかなり接近していた。
「ごめん!弾切れ!!」
マドカの分が最初に弾切れを起こした。
「おいマドカ!先にボートに行っててくれ!」
「了解!!」
マドカはすぐにボートに向う。カツミがすでにエンジンの起動を済ませていたので、いつでも発進可能だ。
「二人とも、いつでもいいよ!」
「サトル!そろそろだな!」
「ああ!」
カツミの機関銃も弾切れ。残るは手持ちの小火器だけになってしまう。
『馬鹿め!いよいよここまでのようだな!』
銃撃の勢いが一気に弱まったのを見て、高笑いする頭目竜。そしてそのまま火炎放射を行うべく、大きく頭部を持ち上げた。
「馬鹿はそっちだ!」
「食らえ!!」




