第8話 B-3 お兄ちゃんの幽霊船団退治
目標はこの島の代官所。建物は複雑な構造ではないが、陣屋のように軍事利用も考慮していたので周囲に石垣を巡らすなどして砦といえるほど頑強な施設だった。
「見えた!」
サトルたちは現れた亡者たちを自動小銃でなぎ払いながら突き進むと、程なく目標の代官所が見えてきた。予想通り正門は固く閉ざされている。
「どうせ魔法で強化してるんだろうけどなぁ!」
カツミは持ち込んでいた対戦車ロケットを門目掛けて発射。戦車さえ貫通可能な威力を前に、同じ厚さの鋼鉄ほどに強化されたはずの戸板は、奥でひしめいていた亡者もろとも一撃で粉砕された。
「突入するぞ!」
門を潜ると、屋敷の中から何十体もの武装した亡者の姿が。それはこの島の防衛に当たって最期まで抗戦した勇敢な衛兵たちの変わり果てた姿であった。
「楽にしてやる!」
カツミとサトルが拳銃を発砲すると、胴体か頭部に一発命中しただけで衛兵は崩れ落ちていく。銀でコートされた弾丸が、彼らに施されていた魔術を断ったのだ。
「ボクも負けないよ!」
サトルの刀と同じ工具鋼で作られた剣をマドカが振るうと、鎧ごと野菜のように切断されていく。手足を切り飛ばされて動けなくなると、ほどなく活動も停止。
「これ以上は」
「ジャマだ!」
大柄な魔術師が立ちふさがったが、カツミはまたも至近距離からRPG-7を叩き込む。魔術師は即死こそしなかったが、防壁を破った衝撃波を直撃した為にすでに瀕死の状態になっていた。
「仲間たちの仇だ」
至近距離からコルトパイソンを叩き込んで魔術師の頭部を粉砕してトドメを差す。頭脳まで粉砕してしまえば生存も蘇生も不可能なのだ。
魔術師を倒したついでに入り口の戸も粉砕されていて室内が丸見えに。しかし魔術的な罠を仕掛けているかもしれないので、手榴弾を複数投げ込みながら進んでいく。
途中で控えの衛兵が踊りかかってくるものの場慣れしているサトルたちの敵ではなく、次々と銃撃や斬撃で打ち倒していった。
「よくもやってくれおったな……」
最深部の部屋で黒いフードを被った男が待ち受けていた。金の刺繍などで飾り立てていることから、この男がグループの頭目らしい。
「何の目的で船団を操ってこの島を制圧した?」
サトルの問いに不敵に笑って答える頭目。
「秘術の実験の為よ。他に何がある?」
後にこの島で回収された情報から、彼らはこの島を自分たちの秘術の実験場にするのが目的だったと裏付けられている。
「そのために幽霊船団用意して、島を乗っ取ったってわけか。自分たち以外は皆殺しにして」
「無為徒食するばかりの連中を有効活用してやったのだ」
罪の意識どころか、崇高な目的のために使ってやったとばかりの傲岸不遜な態度。
「そうか。だがその無為徒食して生きてる奴の方が、お前らなんかより遥かにマトモだ」
外道への返答とばかりにサトルは下げていたAK-47をフルオートで頭目に叩き込む。だがこの男の防壁は強固で、弾丸は全て体に触れる前に止められていた。
「残念だが私には効かんよ」
「だったらこれだね!」
「!?」
ドリンに持ってこさせていた重機関銃をマドカが至近距離から叩き込む。頭目の防壁もこれには耐えられず、法衣もろとも撃ち抜かれ血しぶきを辺りに撒き散らして崩れ落ちた。
「がふぅ!」
「下らねぇ事で大量殺人した報いだ。受け取りやがれ」
かろうじて虫の息の頭目の頭部に銃口を向けるカツミ。だが、頭目の不気味な笑顔と共に周囲の血しぶきが怪しく光りだし、建物が揺れ始めた。
「やばいワン!逃げるワン!」
慌てて逃げ出すと同時に建物は崩れ落ちた。そしてその瓦礫を突き破って巨大なものが雄たけびをあげて姿を現した。
「何じゃありゃあ?!」
「恐竜?!怪獣かよ!?」
頭目は自らの血が撒き散らされる事で発動する術を仕掛けていた。そしてこれまでの命を集め、回収していた竜の遺骸も用いて新たに竜の肉体を得て復活したのだ。
『愚か者どもめ!』
頭目は首を大きく上に向けて息を吸い込むと、体内で練ってから吐き出した。それは奔流のような火炎となって周囲を焼き払う。
「あれは一体?!」
不審船のブリッジから様子を見て驚くマナ。
「竜化の魔術を使ったのね!噂には聞いていたけど初めて見たわ!」
ナツキも驚きを隠せない。竜化の魔術の為には大量の魂と、何より竜の遺骸が必要になるのを知っているからだ。
「サトル!RPGはもう無いのかよ?!」
「扉吹き飛ばす時に全部使っただろ!」
咄嗟に石塁の裏に隠れて火炎放射をやり過ごしたサトルたち。だが、ゾウの倍はあろうかという巨大なティラノサウルスのような姿になった頭目相手に戦うのは全くの想定外だった。
「さすがに想定外だ!逃げるぞ!!」




