第8話 B-2 お兄ちゃんの幽霊船団退治
距離およそ500mから不審船は攻撃を開始した。その主武装は12.7mm重機関銃M2。出現して九十年近く経った年代物の兵器だが、現代でも世界各国で現役で用いられるほど信頼性が高く、かつ強力な重機関銃である。
「ひゃっほーう!」
ある程度狙いを定めて弾丸をバラまくと幽霊船の周囲にそこそこの大きさの水柱が立ち上る。
命中せずに外れた弾丸も多いが、船に命中して貫通したものも多数。軽装甲の車両や建物さえ貫通するほどの威力なので、喫水線下を貫通された幽霊船はまともに穴を塞ごうとする者もいないので徐々に浸水して沈んでいく。
「おのれ!」
霧の向こうから火炎の玉が飛来してきた。
「回避ぃ!」
不審船を操るのはカツミ。大きく胸を揺らしながら舵を勢い良くまわして急旋回。天性の勘を冴え渡らせて転舵を行い火炎を次々と回避していく。
「やり返せサトル!」
「任せろ!」
サトルは前方に据え付けてあった大型の機銃を操作していた。こちらはWW2で連合国枢軸国を問わず世界各国で戦闘機の機銃や艦船の対空用に用いられたエリコン20mm単装機銃である。
「くらえ!」
火炎を放つ相手目掛けて引き金を引くサトル。
「!!」
一連射で相手の魔術師を粉々に粉砕し、船をもズタズタにして両断してしまった。
「よし、旗艦は沈めてやったぜ!」
カツミは腕を突き上げて大喜び。
この船団は旗艦に乗っていた魔術師が一人で指揮していたようだった。そのため魔術師を失った船団はたちまち統制を失ってしまい、最後に与えられた命令に従って亡者たちが砕けるまであらぬ方向目掛けて突進を開始したのだった。
「これで船団は無力化したな」
「ちょっと待って!」
ナツキが見張るのはスクリーン。搭載されていたレーダーが急速に接近する物体を捕らえていたのだ。
それは別働の魔術師が自ら操る翼竜たち。火炎弾を放って多くの船を焼き払ってきた強敵であった。
「上空から翼竜接近よ!」
「了解!迎撃開始!!」
甲板に立つマドカは、後付された対空機銃を翼竜の群れに目掛けて発砲する。年代ものの12.7mm重機関銃M2だが、翼竜は飛行機よりはるかに遅い上に機銃の有効射程のはるか内側に迫っていたので、効果は絶大だった。
ダダダン!ダダダダン!!
竜の皮膚は矢を通さないほど硬いとはいえ、建物や鉄板を易々と貫く重機関銃にかなうはずもなかった。弾幕に飛び込んだ翼竜の群れはたちまち空中で大穴を開けられて散華していく。
操る魔導師も慌てて障壁で防御しようとしたが、重機関銃の威力の前には魔法の障壁もコピー用紙一枚ほどの防御にしかならず、直撃を受けて竜諸共に四散。海面に落ちて魚の餌に成り果ててしまった。
「これで連中、洋上の戦力は消えちまったな」
海上の霧は魔術師が死んだのでこれ以上維持できず、海風によって徐々に吹き流されていく。空を飛ぶ翼竜も消え、幽霊船は次々と陸上に乗り上げて海上から消えてしまっていた。
「イトナの海軍には幽霊船団の掃討を任せよう」
「そうだよね」
無線を使って海軍に指示を出す。
「それじゃあオレたちは根拠地の撃滅だな」
「ああ。このまま一気に乗り込んで潰すぞ!」
魔術師たちが集落に拠点を構えている事は確認済みである。
「どうするキャプテン?!」
「距離1,000から攻撃開始だ!」
漁港が近づくに従って速度を落とす不審船。そして距離1000から左舷を向けると、三機の12.7mm重機関銃M2と、20mm単装機銃、そしてM40無反動砲が一斉に火を噴いた。
「いけいけいけぇ!」
揺れる海上から、機械の修正無しで発射されるので狙いが正確とは言い難いが、魔術師たちの攻撃魔法が届くはるか彼方からの機銃掃射と無反動砲の砲撃は激烈を極めた。
「お、おのれぇ!」
意識を共有する魔術師たちの脳に、地球で二十世紀に開発された鉄の暴風の一端が飛び込んでいた。それは弓矢や槍剣とは全く異なる半端な魔術師ではまともに太刀打ちできないほどの圧倒的な暴力が撒き散らす悪夢のような光景。
櫓の上に立っていた二名は集中砲火を浴びて散華し、地上で待機していたアンデッドの軍勢も成す術なく粉砕され、炎上していく。住民全てが亡者に変えられてしまっていた大きな漁村は、まるで丸ごと火葬されるかのように盛大に燃え盛っていた。
「よし!接岸して突入するぞ!」
不審船は船足を落として船着場に接近。ナツキとマナを残して、サトルとドリン、マドカとカツミが装備を抱えて突入する。
「援護します!」
マナたちは引き続き船から機銃を放って援護射撃を行う。事前に陸地を掃射していた効果は高く、迎撃に出てくる亡者の数は僅かなもので、次々となぎ払っていく。
「目標はあそこだ!」




