↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
48/69

第8話 B-1 お兄ちゃんの幽霊船団退治

 それから十日後。イトナ国中から集められた十隻の船団が、悪霊団討伐のために港に集っていた。


 集められた船は商人たちが保有していた中型の帆船ばかり。これらの甲板を木材で補強し、武装を施して応急の軍船に仕立てていた。


「敵が強力なのはみんなも分かっていると思う。だが、敵を打ち破らなければ我々に未来は無い!我が国は諸君たちの奮闘に期待している!」


 未だ正体不明の船団を相手にするというので恐怖を抱くものは皆無では無いが、サトルから新兵器を与えられた事もあって、目下闘志は十分に見受けられた。


 用意を整えたイトナの船団は敵の根拠地であるアクレイ島に向って出港していった。


「もうそろそろ敵の姿が見えてよい頃ですが……」


 ほどなく風が凪いでゆく。この一帯は幽霊船団が占拠して以降は、不自然に風が凪いで霧が発生し易くなっていた。そしてほどなくアクレイ島の方から二十隻以上の船団が姿を現した。


「来たぞ!!」


 現れたのは帆走よりオールで駆動するガレー船の船団だった。この一帯では軍艦の主な戦法は衝角を相手の船にぶつけて沈める行動不能にさせるもの。


 しかし動かす為には多数の漕ぎ手が必要なので、人員が不足しているイトナでは僅かな数しか保有できなかった一方で、敵側は接収した各国海軍の軍船を用いているので、どの船も大型でかつ頑丈なものだった。


「怯むな!こちらには閣下が下さった新兵器があるのだ!」


 サトルは対抗するためにイトナで青銅製の前装式滑降砲を製造させていた。


 砲身の長さはおよそ1mで、黒色火薬を用いて2kgほどの鉄製の丸い砲弾(原型は砲丸投げの練習用)を発射する大砲だった。


 青銅の大砲は鐘を鋳造する要領で作成は可能だった。黒色火薬も必要な分を製造するための材料は揃えられたのでイトナで製造させたのだ。


 かくしてイトナの船団からの砲撃の火蓋が切られたのをきっかけに戦闘が開始された。


「ほう。火薬を用いるのか……」


 悪霊の船団を操る魔術師はその光景に少し驚いていた。


「しかしあの程度の数ではそう長くは続けられまい……」


 魔術師が見透かしたように、一隻につき搭載されている砲弾と弾薬は一門につき二十発ほど発射できる程度。習熟も不十分な上に揺れる船上からの発射のために、大半が的から外れていた。


「異界から知恵者を呼んだというが、所詮この程度か」


 イトナの船団の実力を測り終えると、魔術師は呪文の詠唱を始めた。


「これは……」


 たちまち辺りが霧に包まれてしまう。幽霊船団は相手の視界を遮ってから攻撃を仕掛けてくるのだ。


 攻勢に出るべく艦首をイトナ側に向けた。触角で体当たりして乗りつける、得意の戦法に持ち込もうというのだ。


「よし、作戦通り撤退しろ!」 


 旗艦のトップに撤退の意味を持つ信号旗が掲げられた。イトナの船は帆だけでなく大きなオールまで持ち出して三十六計逃げるにしかずであった。


「馬鹿め。この距離にこの凪で逃げ切れるとでも思ったか?!」


 幽霊船団は全て巨大なオール沢山備えたガレー船で構成されていた。さらに船を操船するのは生きた人間では無く、蝋のような皮膚に変化した亡者にされてしまった者たち。


 亡者は酷使しすぎると身体が破損して使い物にならなくなってしまうが、自我を持たないので如何なる命令であっても決して逆らう事はないので、漕ぎ手としてはこれ以上無い労働力であった。


 大量の亡者が漕ぐので速度は落ちず、着実に距離が詰められていく。しかしそれがサトルたちの立てた陽動作戦の一環だった。


「何だあれは?!」


 魔術師は異変を察知して遠視の術を使う。その目に飛び込んできたのは幽霊船団の最大の船に匹敵する船。それも凪いだ海に白波を蹴立てて突き進む鉄の船の姿。その船こそサトルたちが玄界灘で奪取した不審船だった。


「さすがだな!この大きさでデタラメに飛ばせるぜ!」


 船体は年代ものでほとんど廃船も同然の外観だが、警備艇を振り切るために搭載されていたエンジンは場違いに大馬力。スクリューを全力で動かすと、海上を時速60km以上の速度で突っ走っていた。


「あの船は一体?!」


 あっという間に幽霊船団の背後に達した不審船。甲板にはマドカやサトルの姿が。


「よし、攻撃開始だ!」



 あっという間に幽霊船団の背後に達した不審船。甲板にはマドカやサトルの姿が。


「よし、攻撃開始だ!」


 周囲の海はとても濃い霧に包まれているので視界は殆ど無い。しかし不審船には世界各国の取り締まり船に対抗する為に、軍用に匹敵するほど高性能なレーダーが搭載されていた。


 その精度は空を飛ぶ海鳥一羽一羽をも正確に識別するほど優秀であり、レーダー波を反射しづらいはずの木造船さえ正確に位置を特定できていたのだ。


「目標は12時の方向!」


「了解!」


 甲板にいたサトルとマドカは双眼鏡型のカメラを構える。それはこの船に積んであった軍用の高性能の赤外線サーマルカメラだった。これを使えば濃霧であろうと正確に相手を視認することが可能なのだ。


「よし、攻撃開始!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。