第7話 ④ お兄ちゃんの平定作戦
穴を一つ一つ焼き払って潰していくと、岩山のあちこちから黒煙が噴出しているのが見える。ある場所は空気穴であり、ある場所は脱出口であろう。時折、追い立てられて飛び出してくるノブゴブリンもいるが、待ち受けていたゴローやドリンが次々始末していく。
「なるほど。この手を使えば巣穴の掃討は容易になるわけか……」
ゴブリンの巣穴は、特に出入り口は外敵にそなえて小さく作られており、同じ体格でなければ容易に侵入することができない。一時的に封鎖はできても、別の出入り口から脱出してしまうので駆除が進まず被害が続いていたのだ。
だがこのトーチランプ&栓抜き戦法を用いれば、容易に駆除が可能になるのだ。
(何ト確実デ恐ロシイ潰シ方ダ……)
ゴローは巧妙に隠蔽されていた出入り口を発見して通報するのが主な役目であった。
しかし彼らもまた強敵と戦う時は、同様に多数の洞穴を利用してあちこちから奇襲を仕掛ける戦法を得意としていたので、その戦法が封じられていく様を見て恐れを抱かずにはいられなかったのだ。
ともあれこれを皮切りに火炎放射器の扱い方を指導されていた者たちも加わったので、制圧のペースは徐々に上がってゆく。
同時にマドカとカツミらは銃撃を受けてなお虫の息だったノブゴブリンたちが逃げないうちに確実に息の根を止めていく。
本来、この規模のゴブリンの群れを相手にするとなると、まともにやれば五百人近くの軍勢で数日掛かる場合もあるというが、サトルはわずか二十人で、半日掛けずに制圧を終えようとしていた。
「残るのはここだけだワン!」
ドリンの指差す先、中腹に入り口があった。現在は落下した巨岩で塞がれて封印されていたはずなのだが、開いた隙間からノブゴブリンたちは出入りして巣にしているようだった。
「しかしこれって……」
「自然にできた穴じゃないよね、どう見ても」
マドカとナツキは穴を見て驚いていた。巨岩の下の方に、まるでドリルで掘られたような丸い穴が開けられていたのだ。この大きさはゴブリンでしか自由に出入りできず、他の大型肉食種は蛇以外は奥に侵入できないのは明白だった。
「魔術検査しなきゃいけないところだけど、駆除を優先しないと」
「ああ。この岩を爆破して除去しよう」
一行はこの巨石を爆破して撤去することを決定。隊員たちがゴブリンたちを封じ込めつつ、岩の隙間や削岩を行って爆薬を装填するマナ。準備が整うと、先ほどの線まで後退してから起爆させた。
ズドン!!
轟音と共に岩が崩壊。煙が晴れると、本来の入り口が姿を現していた。
ここは数百年前に要塞化した際に人間が用いる為に拡張された箇所で、奥には指揮官が居住できるフロアが作られていたとの事だった。
「奥が深い場所の制圧にはこいつは不向きだから、ここからは直接踏み込まなきゃいけないな」
「そいつはありがたい!手柄も取れず、お宝も焼かれたんじゃあ、ご同行した意味がありませんからね!」
今回護衛に入っていたのは冒険者上がりの者たちが十名ほど。野生ゴブリンを狩ること自体のうまみは乏しいのだが、大規模な巣穴、それもかつての要塞の跡地ならそれなりの財宝も期待できたからだ。
「いくぞ!!」
部隊が突入していく。彼らは鉄兜にLEDライトを装着している以外の防具は既存の装備。即ち鎖帷子の上に胴に脛、籠手など動きを阻害しない箇所に防具をつけ、バックラー。そして武器は取り回しが利く短めの片手剣を腰に納めているが、先頭の兵はサトルが持ち込んだショットガンを装備していた。
元々が人族が立て篭もる為の要塞なので、広間はもちろん通路も複数の人間が通過できる広さになっているが、狭い場所でも取り回しの利く武器でないと機敏なゴブリンたちには対処が難しいからだ。
「来たぞ!」
通路の奥から機敏に向ってくるゴブリンたち。それへ向けて数人がショットガンを発砲。防具どころか全裸のゴブリンたちの全身に散弾が浴びせられ、たちまち阿鼻叫喚に。
「こいつは便利ですな!」
散弾銃は即座に絶命させるのは困難だが、戦闘力を奪うことは極めて容易である。のたうちまわるゴブリンたちを片手剣や手槍の隊員たちが次々と仕留めていく。
「こちらが入れない小さな穴から奇襲されては対処が面倒ですが、それが無くなれば体格と装備で勝る我々が圧倒的に有利ですからな」
「私たちも行きましょう」
サトルは刀を手にして後から入る。暗い通路は獣と糞尿と血の入り混じった悪臭で満たされていた。
マナはステン短機関銃を構えて同行する。サトルは拳銃と星流れ。ナツキは外で待機し、カツミは愛銃、マドカは短剣。そしてドリンのみ防具のみ。
「足元にはお気をつけ下さい」
足元に水溜りができていたが、どうやら討ち取ったゴブリンの血溜のようだった。先行していた者たちはダンジョン慣れしているためか、順調に通路を制圧しているようだった。




