第7話 ② お兄ちゃんの平定作戦
「少数精鋭の特殊部隊を作るつもりだ。特に屋内やダンジョンでの戦闘を想定した戦力があると助かる」
ミキの許可の下、主に首都防衛の将兵たちの中から、魔物との戦闘経験が豊富な元冒険者たちを中心に隊員が選考された。
「貴方たちの活躍に期待します」
指名と募集に応じた五十名ほどの将兵たちにミキが訓示を行う。それから一週間ほど掛けて、サトルが持ち込んだ機材の扱いを習得。用意が整うとサトルが直々に率いて討伐に向う事に。
「閣下自らが討伐に当たられるのですか?!」
カイはサトルが自領にも危害を加えるゴブリンの巣を討伐すると聞いて仰天していた。
「先日の連中が、天領に巣を構えていたのが確認されたんだ」
他でも被害が多発していたので根拠地の探索が行われていたのだが、ようやくハイゴブリンの斥候が根城を正確に特定したという。
「討伐は大勢を動かせる情勢じゃないから、オレと仲間たちで片付けてくるよ」
メンバーはマナ、マドカ、ナツキ、カツミ、ドリン、そして冒険者あがりの腕利きと、ハイゴブリンの戦士も加わる。
「摂政閣下が秘密兵器を使って討伐されるというのですから、是非この目で見ておきたいものです」
隊長として同行するのはベテランのハーク。彼は冒険者時代には地竜や岩象などの大物退治はもちろん、困窮した村からの害獣討伐にも喜んで応じる快男児として勇名を馳せていた男で、現在は結婚を機に安定した収入のためにイトナ軍に入隊していたのだ。
「よし、行こう!」
かくして総勢20名の一行が、最低でも百は居ると思われるゴブリンの巣窟の掃討に向った。
「なるほど、これは便利ですな!」
イトナの国道を馬と自転車の一行が進んでいく。サトルもマナも乗馬はできないが、自転車には乗れるのでマウンテンバイクを持ち込んでいたのだ。
さらに今回編成した部隊の為に、遺棄されていた自転車を整備して持ち込み、隊員たちに訓練を施していたのだ。
「しっかしやっぱり原付でも機械は違うよなぁ!」
唯一スーパーカブに乗っているのはカツミだった。本人は前世の愛車と同じバイクを所望していたのだが、全土に渡って路面が整備されていない事と、何より資金不足が理由で止む無く、全世界で縦横無尽に活躍するスーパーカブを持ち込む事になったのだ。
その代わり今回は機材を搭載したリアカーを引く事になったのだが、カツミはそれでもゴキゲンだった。
「ねえカツミ、イトナでもヘルメット被るの?」
マドカの問いにカツミは苦笑いして答える。
「ああ。前世じゃノーヘルで事故っておっ死んじまったからな。同じ失敗は二度もしねえよ」
「なるほどね」
カツミは前世で事故死した経験から、二度とノーヘルでバイクに乗らないと決めていたのだ。
ともあれ全員が徒歩の数倍の速度で移動できるので、目的地までは三時間と掛からなかった。
「よし、斥候は改めて現地を確認。それまで俺たちはここで休憩する!」
荷台に乗って十分に体力を温存していたハイゴブリンの斥候が、放たれた矢のように飛び出していった。斥候には古着店から購入した子供用の迷彩服を着てもらい、万一のノブゴブリンとの識別としていた。
「ゴローは優秀な男です。ノブゴブリンごときに捕まる事は無いでしょう」
ハークは斥候に出たハイゴブリンのゴローとは旧知の仲で、共に多数の修羅場を潜ってきたという。彼が太鼓判を押すので、サトルは安心して休息と装備の再点検を命じていた。
そしてゴローは一時間ほどで偵察を終えて合流。
「閣下、目標ハ巣カラ出テイナイ」
その報告に頷く一同。
「二日前に村の食料庫を襲撃したと報告があってましたから、やはり出てはおらんのでしょう」
先日サトルたちが撃退した村にはあれからノブゴブリンは近づいていないが、他の村は襲撃を受けているという。そして先日潤沢に食料を手に入れたので、現在はそれを貪っているのであろう。
「よし。作戦開始だ」
『おう!』
こうしてサトルたちのノブゴブリン掃討作戦が開始された。
自転車を森の入り口に置き、機材を一輪車に乗せて一行は獣道を進む。
「もうすぐ警戒線に入ります」
先導するゴローが首を樹上に向けると、察したナツキがコンパウンドボウに矢を番えていた。
「そこっ!」
ナツキの矢が木々の合間を飛ぶ。少し離れたところから軽い悲鳴が上がり、何かが落ちる音がした。
「連中の見張りのようです」
ノブゴブリンの喉笛を、ナツキの矢は一撃で射抜いていた。これには居合わせた全員が感服してしまう。
『お見事』
さらに先に進むと、たくさんの骨が積み上げられた塚が現れた。捕食した得物の骨を無造作に積み上げているようだが、上部には意図的に頭蓋骨が積まれていた。
「やはり……」
塚の頂上に積まれていたのは何十もの人間の頭蓋骨。大小ある上に、長めの髪の毛が残っているものもあることから、近郊で攫われた村人の、それも女性や子供たちに違いなかった。
「黙祷!」
各々が各々の流儀や教えで犠牲者たちの冥福を祈る。祈り終えると一行は前進を再開した。




