第6話 ⑦ 帰ってきた者たち
この日の買出し、最後に向ったのは父の友人の鉄工所。あの星流れを作ったところだ。
「おうサトル!久しぶりだな」
「すみません。幾つかお願いがあって……」
応接室で父の友人のムネオに依頼内容を話す。
「星流れと同等かそれ以上のものを一振り、レイピア型を一振り、海でも錆びないのを一振り。あと槍を一本と銀の拳銃弾をお願いしたいんです」
「ふむ、刀と槍の制作はわかったが、銀の弾丸ってのは?」
「はい。悪霊退治です」
顔色一つ変えずに、9mm拳銃弾の改造を依頼するサトル。
「なるほど。それなら確かに銀の弾丸が必要になるな」
気に入った依頼なら、自走可能な戦車(無論複合装甲にはできないが)の製造さえやってくれるこの鉄工所だったが、銀の弾丸の製造依頼は初めての事だった。
「まあ銀の弾丸っていっても純銀製にすると高くつくからな。鍍金でいいんだろ?」
「ですね。それで大丈夫だと思います」
かくして時間は掛かるが、依頼一式を引き受けてもらえたサトル。
「刀や剣はどっちも暇な時に作っておいたのがある。海水でも錆びないステンレス刀もあるぞ。槍はさすがに一から制作だな。銀の弾丸と合わせて一週間は見ておいてくれ」
「ありがとうございます」
ムネオに深々と頭を下げるサトル。
「なぁに。オレもそういう依頼は大歓迎だからな材料費はともかく人件費は加減しておいてやるよ」
手配を終えてこの日の夕食は焼き鳥屋に。店名は時宗という。
「とりあえず豚バラ一人3本ずつ」
「はーい」
修羅の国の焼き鳥で真っ先に注文されるのは、高確率で豚バラである。次に求められるのはカリカリに焼かれた鳥皮。他は思い思いになるのだ。
「これで取り急ぎの道具類は手配できたから」
「待っている間は資料集めですね」
この中で堂々と飲酒できる者は居なかったので、全員ソフトドリンクで我慢である。カツミなどは生前から堂々と飲んでいたが、転生して戸籍が無い現状で万一があっては話がややこしくなるので、堅く禁止されていた。
「オレは昔のツレどもが今何やってるか調べておくぜ。オレはさっきみたいに生き別れた双子の片割れって設定でどうにかするから気にするな」
「それはわかったけど、きちんと帰ってこいよ」
「おう」
おつけだしを食べていると、一口ほどの大きさに切られたキャベツの上に豚バラの串が盛られて出てきた。キャベツには特性のタレが掛けられているのは言うまでもない。
「んじゃあ明日からは……」
「私はイトナにお父さんとお母さんの前世の形見を持って行きたいから選別するね」
「私はナツキさんと一緒に資料探しをしますね」
マナはナツキと共に大型の図書館や書店で役立ちそうな資料を探す事に。なおミキは選別が終わり次第マナたちと合流するという。
「オレは昔のツレども調べ」
「ボクはドリンちゃんとどこかで走り回ってるね」
「わんわん!」
「おい」
それには流石にミキもマナもナツキも呆れ顔。とはいえ前世で小学校に上がる前に事故死したのでひらがなカタカナは読めても難しい漢字は読めないマドカと、そもそも前世が犬だったドリンに本を調べるのを手伝わせるのが厳しい事は明らかであった。
「仕方ない。方々の買出しはオレがするから、二人はついてくるんだ」
『わ~い!』
マドカとドリンは大喜びだが、ミキとナツキ、そしてマナの顔が若干険しくなっていた。仕事らしい仕事をしない事への不満と、サトルを取られる事への不満であろうか。当のサトルは完全に後者と受け取っていたのだが。
ともあれこうしてサトルたちは翌日から一週間ほど掛けて、物騒ではない資料や資材の調達を行い、イトナに帰還したのだった。
「ただいま戻りました」
約束通りに十日でイトナに帰還した一行、特にミキの姿を見て家臣たちはひとまず安堵の様子。
「そんなわけで取り急ぎ持ってきました」
一行の背後には貨物コンテナが二つほど。転移の際にはSUVではなく、郊外にコンテナを置いてその中に全ての資材を積み込んでいたのだ。全てはイトナの発展のために。
「さあ、イトナのために働かなきゃな」
『お~!』
帰還した全員が右手を点に突き上げて応じた。はてさて、サトルたちの次なる手は如何に?




