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第5話 ④ 魔獣の門と悪霊の海賊団

 腹を抱えて大笑いしているカツミを呆れた様子で見つめる一行。一緒に笑っているのはマドカと生前カツミにも良くじゃれ付いていたドリンだけだった。


「ってことはサトル、お前もこっちに生まれ変わっちまったのか?」


「いや。だったらその銃をここに持ってこれる訳がないだろ……」


「ってことはお前はまだ死んでなかったのか!そいつは良かったじゃねえか!」


「カツミさん、そろそろ話を進めていいかしら?」


 ナツキが呆れて急かしたので、カツミは生前のように大股開きの横柄な態度で、まるで講釈師のように生まれてからの身の上を語り始めた。


 話によると(どこまで本当か分からないが)船主の娘として転生したカツミは前世のように豪放に育ったという。


 親が病没して船を引き継いだところ、道中で荒っぽい連中や襲撃してきた海賊を返り討ちにしたところ、それを見た海賊の大物に気に入られて養子扱いになり、その大物の没後は正式に海賊団の頭目に就任してしまった。


 その頃は気が付いていなかったが前世と同じ名前のグループ名を名乗って、商船はあまり襲わず他の海賊を襲撃しながら稼いでいたという。


「ファイヤーフォックスは海賊を襲う海賊で有名だよ。だから他の国でも義賊だからって例外的に堂々と港に入れるぐらいに」


 マドカが語るとカツミも大きく頷く。


「おうよ。それで今この海域で暴れている漆黒の悪霊団に喧嘩を売ったんだが……」


「返り討ちにされてしまったんですね」


「まあな……」


 聞けば相手の海賊船はとにかく固い外装で、こちらからの火矢を寄せ付けず、切り込んでは見たものの乗組員もゾンビのようなこの世ならざる大勢の船員ばかり。奮戦及ばずついに敗走してしまったというのだ。


「逃げ切ったものの仲間は散り散り。掌握できてたこの船の連中もご覧のありさまだ……」


 何とかこの船はここまで持っては来たが、あからさまにケガ人だらけで、戦う事が不可能なのは誰の目にも明らかだった。


「だから頼む!命以外だったら何でもくれてやるから、まずこいつらを助けてやってくれ!できることならヤツらへの復讐の機会もだ!」


 深々と頭を下げるカツミ。全員の視線はサトルに注がれるが、そのサトルは大きくため息をつく。


「命以外なら何でも、か」


「ああ。生きてヤツらへの復讐さえ果たさせてくれるなら何でもやるさ!証拠を見せてやるよ!」


 そう言い放つとカツミは上着を脱いで特盛の胸を晒そうとまでするが、それはさすがにとマナとナツキに止められた。


「安心したよ。やっぱりカツミはそんな身体になっても俺のよく知ってるカツミだ」


 するとサトルは先ほど見せた拳銃、前世のカツミの愛銃だったものをテーブル代わりの樽の上に置いた。


「こいつは元々お前の銃だからな。元の持ち主に返すよ」


 弾丸は込められていないが中学時に自分の金で購入した愛銃を再び手にした重さに打ち震えるカツミ。


「ほ、本当にいいのかよ!」


「ああ。その代わり、小学時代からおごってやってたおやつとジュースの分と、そいつの保管料も合わせて体で払ってもらう。今この国は人手が足りないし、海の治安も回復させないと貿易して金策もできないからな」


「だよね」


 マドカが笑って相槌を入れるとマナもナツキも無言で頷いた。


「すまねえサトル!わが心の友!いや、マイダーリン!愛してるぜ!!」


 昔のようにサトルを力いっぱい抱きしめて振り回すのがカツミなのだが、刺激的すぎる女の身体でそれをされ、胸に埋もれて呼吸困難になってしまうサトルと、それをみて激高する三人だった。


「ともあれ視察はこれまで。王都に戻ろう……」


 かくして一行は、約一週間で大まかに国土を視察して帰って来たのだった。

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