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【全11話・一挙公開】『退学になった俺だけが世界の脚本を読める。七日後に世界は終わるらしいので、モブ女子と最終話を書き換える』  作者: 鷹司 怜


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8/11

第八話 繰り返された最終話


 世界終了まで残り四日。


 空はずっと黒かった。


 昼なのか夜なのかも分からない。


 まるで世界そのものが寿命を迎えているようだった。


 校舎の窓にはひびが入り。


 街では原因不明の停電が相次いでいる。


 誰も気付いていない。


 終わりが近いことに。


 俺は星乃と二人で旧校舎にいた。


 誰も来ない音楽室。


 埃を被ったピアノ。


 夕日も差し込まない暗い部屋。


 そこで俺たちは向かい合っていた。


「百二十七回」


 俺は呟く。


「本当にそんなに繰り返したのか」


 星乃は静かに頷く。


「うん」


「全部覚えてるのか」


 少しだけ沈黙。


 そして。


「覚えてる」


 その答えはあまりにも重かった。


 想像できない。


 百二十七回。


 同じ世界。


 同じ終わり。


 同じ別れ。


 それを一人で覚え続けるなんて。


「どうして」


 気付けば聞いていた。


「どうして諦めなかった」


 普通なら壊れる。


 俺なら壊れる。


 絶対に。


 だが。


 星乃は小さく笑った。


「諦められなかったから」


 その瞬間だった。


 視界が揺れる。


 文字が浮かぶ。


【記憶解放率 92%】


 頭の奥が熱くなる。


 そして。


 世界が変わった。


 卒業式だった。


 またこの光景。


 体育館。


 拍手。


 卒業証書。


 そして。


 泣いている星乃。


 俺はその隣にいた。


『終わったな』


『うん』


 星乃が笑う。


 今より少し大人だった。


『助かったんだ』


『そうだな』


 その時。


 空に文字が浮かぶ。


【世界終了】


 笑顔が消える。


 次の瞬間。


 世界が崩壊した。


 別の記憶。


 文化祭。


 賑やかな教室。


 クラス全員の笑顔。


 俺と星乃は写真を撮っている。


『来年もやりたいな』


 星乃が言う。


『できるだろ』


 俺は笑う。


 だが。


 空に文字。


【世界終了】


 全てが消えた。


 さらに別の記憶。


 雪の日。


 帰り道。


 俺と星乃。


 手を繋いでいる。


『好きだ』


 俺が言う。


 星乃が泣く。


『私も』


 幸せそうだった。


 本当に。


 幸せそうだった。


 だが。


 やはり現れる。


【世界終了】


 記憶が次々流れ込む。


 十回。


 二十回。


 三十回。


 五十回。


 百回。


 全部同じだった。


 どれだけ頑張っても。


 どれだけ未来を変えても。


 最後は終わる。


 そして。


 最後の記憶。


 百二十七回目。


 白い部屋。


 崩壊寸前の世界。


 俺は血まみれだった。


 星乃も傷だらけだった。


『ごめん』


 俺が言う。


『また失敗した』


 星乃は泣きながら首を振る。


『違う』


『違わない』


 俺は笑う。


『次がある』


 震える声で。


『次なら救える』


 その時。


 星乃が俺に抱きついた。


 初めてだった。


 彼女があんなに泣いたのは。


『もう嫌だよ』


 嗚咽混じりの声。


『もうあなたが消えるの見たくない』


 そして。


 最後の最後。


 俺は彼女に言った。


『もし次があるなら』


『俺を忘れるな』


 世界が白く染まる。


 終わり。


 百二十七回目の終わり。


「……あ」


 現実へ戻る。


 気付けば涙が流れていた。


 止まらない。


 胸が苦しい。


 痛い。


 息ができない。


「思い出した?」


 星乃が聞く。


 俺は答えられない。


 代わりに。


 彼女を見る。


 百二十七回。


 百二十七回全部。


 この子は一人で覚えていた。


 俺との時間を。


 別れを。


 約束を。


「ごめん」


 ようやく出た言葉だった。


「忘れてた」


 星乃の瞳が揺れる。


 そして。


 ぽろりと涙が落ちた。


「うん」


 それだけだった。


 俺は初めて彼女の手を握った。


「今度は忘れない」


 震える声で言う。


「絶対に」


 星乃は泣きながら笑った。


 今までで一番綺麗な笑顔だった。


 その瞬間。


 空が大きく揺れた。


 視界に文字が現れる。


【観測者覚醒率 100%】


 世界が静まり返る。


 そして。


 最後の文章が浮かんだ。


【管理者権限起動】


【最終話の書き換えが可能になりました】


 俺と星乃は息を呑む。


 百二十七回失敗した世界。


 その終わりを書き換える資格。


 それが今。


 俺たちの前に現れた。


 だが。


 次の文字を見た瞬間。


 二人とも凍り付いた。


【代償を選択してください】


【世界】


【星乃紬】


 どちらか一つしか救えません。


 世界終了まで。


 残り三日。


【第九話 冬月朔の正体】

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