表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境界線の向こう側  作者: 柚子
67/74

【65】

ミネルヴァの梟は暮れ染める黄昏とともに飛翔するーー

シヴァが洋子の元に喚ばれたのは、奇しくも魔界の時間帯では夕方であり文献通りだった。


魔鏡の湖のほとりで洋子を待ち構えていたのは、予め夢で洋子がルシアへ伝えたのだ。


「洋子、私は帰りたい。でも本当に帰れるの?」

『沙織。この世界に来た研修初日、2015年6月14日まで戻します。私を信じてくれますか?』

沙織は洋子の目を見て頷いた。


「洋子、ご両親や弟さんと会えなくてもいいの?」

洋子はいつもの笑顔を見せた。

『沙織とも家族とも必ず逢える。沙織、コレをスマホに付けてくれる?』

手渡したのはスマホのアクセ。五色の糸を編み込んだ糸を紡ぎ、先端には魔石が光るストラップだ。


沙織は嬉しそうに壊れたスマホに着けて、胸ポケットに入れた。

「洋子、ありがとう」

『沙織、元気でね?ウチの店舗を頼んだわ」

沙織は笑い出した。

『もぉっ!洋子ったら仕事の話なの?わかったわよ、任せといて」


《Weather…》


洋子の魔導器から桜翠、紅蓮、琥珀、紫雲、瑠璃、玄丞が天に向かっていく。


「洋子、貴女に会えてよかったわ。私も幸せになりたいと初めて思った」

『沙織、また会いましょう》


魔鏡は異世と現世を繋ぐ道。

同じ道を辿り戻ってゆく様が感覚でわかる。


沙織は魔界に二度と訪れることはなかった。



『Luciferは、よかったの?貴方の妃候補として異世界から手繰り寄せたのではないの?』

「ん?よくわかったな?気持ちだけは操作したくないし」

『Luciferらしいわ。沙織は彼氏がいたから厳しかったかも』


Luciferはニヤリと笑った。

「洋子、気づいたんだろ?」

『私は魔族の母と人間の父を持つ半妖なのね?』

「あぁ。オレと洋子は兄妹だ。元の世界で何か聞いてたのか?」


『私を身ごもる前に兄がいたけれど死産したと聞いていた。だから戸籍上に佐藤陽介(さとうようすけ)という氏名は記載されているわ。戸籍上は死亡だけど、母は兄の事を話す時はいつも微笑んでいた』


ルシアは「そうか」と、一言。無言で遥か彼方を見つめる先には母の姿が視えたに違いない。


『Lucifer、今度は貴方と一緒に母に会いに行こうね』

「あぁ。弟にも会いたいが、あいつ(貴洋)は向こう側にいたいらしいがな?洋子と話したがっていたぞ?」

素朴な疑問符を投げかけた。

『………何故、話せるの?』

ルシアは肩を竦めた。


「成人の年に会ったから。洋子は仕事に夢中で、一度もオレの声が届かなかったからな」

『あぁ〜、そんな感じ。心が閉じていたもの』


「洋子の瞳に映るものが“満ちて”いたからこそ、見間違わず真実を知ることとなった。目を閉じては視えぬ。逃げてしまえば得られぬ。諦めは何も生まぬ。よく頑張ったな、洋子」

『Lucifer…』

ルシアは優しく洋子の額に口づけをした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ