【64】
トイの腕の中で眠ると、幼子が揺りかごに揺られている安心感に似た心地良さに、目を閉じたまま、うっとりしてしまう。
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………あれっ!?
ソファでうたた寝してたんだ。
無意識にスマホをチェックして、寝起きの頭で目の前に差し出された冷蔵庫の麦茶を飲む。
ーーんん?冷蔵庫?
キッチンにお母さんが立っている。麦茶のポットを冷蔵庫に入れて振り返った。
「洋子、元気?*****に行ってから、ちっとも連絡寄越さないんだから、もぉっ!心配するでしょう?」
『ええぇっ!?お母さん?どうして?』
「ふふふ。さすが私の娘よね?五色を纏う黒魔女だなんてね?」
ーー!!
『………お母さん』
戸惑う洋子に、母は優しく両手を握ってくれる。
「私ね、*****から地球の日本に渡った“異世界渡り”なの。やはり時は廻るのね?」
『お母さん。一体何者なの?』
「ふふふ。貴女らしい言葉ね。お父さんと貴洋も会いたがってるわ。今度は彼氏も連れて来なさいね?」
『ど、どういう意味?」
「洋子、繋がっている縁は決して切れない。決して…」
『お母さん!待って?』
「洋子、*****」
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先入観とは恐ろしい。オズ皇子の“異世界渡りは戻れない”という言葉に縛られてたのだ。洋子は次元の狭間に現る時空の黒魔女。月影が刻が各国の門が繋がった時と同じなんだと、夢現の中で母に出逢うまで気づかなかった。
見守るトイの前で朝焼けの空を見上げて、
《The owl of Minerva first begins her flight with the onset of dusk. (ミネルヴァの梟は暮れ染める黄昏とともに飛翔する )シルヴィア・フィロソフォス・プレシャス》
博識の白梟が舞い降りて来る。
《シヴァ、留守を頼むわ。必ず戻ります。桜翠、紅蓮、琥珀、紫雲、瑠璃、玄丞、私と共に…刀威、一緒に来てくれますか?》
「ヨウコ、手を」
指を絡めるように手を繋いだ。
「誰に訊いてるんだ?俺はヨウコの側にいる」
『ありがとう』
《Weather…》
二人の姿が忽然と消えた。
シヴァは目を閉じてつぶやいた。
[洋子、儂が心を傾ける唯一無二の主だ]
契約以来初めて喚ばれた真名が音楽を奏でたように聴こえた余韻を楽しんでいた。




