【20】
何故、この寒季に遠征をするのだろうか?
暗雲が空一面を覆う雄大さに目を奪われつつ、霜が降りてシャーベットみたいな道をシャリシャリ言わせて歩く。
洋子のAランク認定の経験値となるように主な説明はロワールさんから押し付けられた。いや、任された。
『植物採取で気をつけることは、周りに敵がいないか気配を研ぎ澄ませ万が一に備えておくことです。道具か魔法、使用方法によって対処方法も人それぞれ。私は式を喚びます。パーティの場合は採取組みと見張り役を予め決めておきます』
今回はクマに酷似した魔獣3匹を討伐する依頼だ。
『魔獣討伐では役割分担が重要です。前方担当はジェイクとサン、後方担当はウィンとマリンです』
緊急時以外はロワールさんと洋子は手出ししない。
順調に魔獣討伐できた。
大きな魔獣の解体方法を教えるのも洋子の役目だ。ロワールさんに見張り役を頼み、2人1組で1匹、洋子の捌きを見ながら解体していった。解体も終わりホッとした瞬間、
………!!!
嫌な予感がする。
五感を研ぎ澄ませ魔法を解放させると原因は判明した。ここで洋子が止めないと背後の民家に被害が及ぶ。
『もうじき雪崩が来ます。ロワールさんの結界内にいてジッとしていて下さい。ロワールさん、皆を頼みます』
真相を探るロワールさんの視線を受け止め静かに見つめる。まだ雪崩の気配はないから信憑性が低い。だが悠長な行動は死を招く。
「わかった。みんなは俺の結界へ入れ」
『ありがとうございます(信じてくれて)』
ロワールさんが発動させた結界に背を向けた。
《Weather…》
想像して創造するのが基本。アニメみたいな長々とした台詞や呪文はいらない。5分も経過しないうちに迫り来る雪崩を耳でで捉えた。
《氷華絢爛雪花乱舞……鏡花水月》
雪崩を豪華絢爛な氷華や雪花に姿を変え、横に続く壮大な河へ滝のように降り注ぐ。河に映し出された煌めきは一瞬で溶けてゆく…
やがて河は凍結して元の状態に還った。
本来なら、気温上昇させるほうが容易い。けれど食物連鎖の頂点から崩壊して自然を歪めてしまうかもしれないと避けたのだ。
もう危険はないだろうと後ろを振り返ると、ロワールさん始め皆がフリーズしていた。
『依頼終了です。帰りましょうか?』
「ヨーコ、お前は何者だ?今の魔法は?」
ロワールさんが問う。
『私はWeatherを持つ者です』
「あの幻の?」
人差し指を唇にあてて、
『ナイショにして下さいね』
クマみたいな魔獣の肉は高価で売れる。遠征最終日なので一部をみんなで食べた。
ーーーーー
5日間の遠征から戻ると翌日には反省会だった。より効果ある攻撃や防御、連携方法を教えて導く重要な時間だ。あと残りの2日間は鍛錬と座学の時間だった。最終日に遠征から戻る班もある中で洋子の班はゆとりがあった。
「ヨーコ、お客様だぞ」
ロワールさんが手招きしていた。隣に立っているのは、確か国お抱えギルド暁月”の一人だった。
休憩室で紅茶を飲みながら、目の前に座る綺麗な雪女、いや女性を見ていた。
「私は雪を極めし者アイスです。内密でヨーコの魔法を聞き、是非見たいのです」
[洋子に色気仕掛けは無理だから直接言うことにしたんだわ]
珍しく瑠璃が不機嫌オーラを隠さない。
[瑠璃の眷属を操るからな、少々強引だから気に入らないらしい]
これまた珍しく紅蓮がフォローしてる。
『ごめんなさい。見世物ではないので無理です。アイスさんならご存知のはずです』
「諦めません。お願いです!私を弟子にして下さい!」
『断ります。私はWeatherを持つ者として摂理を通したいだけです』
>>げっ!?シヴァの気配が強力な闇のオーラを放っているっ!
[ふん、我に弾かれた癖に生意気な]
《ダダ漏れだよ?抑えて?》
シヴァは渋々気配を緩めた。
《ありがとう》
『アイスさん、以前魔法書に拒絶されましたね?』
ハッと息を飲むアイスさん。
『Weatherの魔法は雪だけではありません』
詳細は言いたくない。
椅子から立ち上がり一礼した。
『アイスさん、失礼します』
班のみんなに合流した。
『裏切り者っ』
わざと低い声でロワールさんへ言うと、
「あの幻魔法を見たって自慢したかったんだよ、自意識過剰な雪の女王にな」
吐き捨てるような言い方だったので思わず、
『アイスさんに恨み嫉みでも?』
ロワールさんは肩を竦めて
「あいつとは幼馴染みだ」
と言いつつ何故か嬉しそう。
『幼馴染みとはいえボロカスですやん』
「ふん!あの上から目線が気に入らないんだよっ」
洋子は自分をネタにしないで欲しいと脳内ツッコミをしていた。




