【19】
先に座学を終了させておこうと、皆同じ課目を選択した。今日で1つ明日で2つ受講後、翌日に買物へ行き、その後5日間依頼へ向かう。
休憩中にマリンが、
「ボックス使えるよね?」
と、尋ねたので無唱和で開けてみせた。
「いいなぁ!遠征には必要でしょ?この座学終わったら今日は終了だし教えて欲しいの」
隣にいるサンが、
「私は使えるけど指を鳴らさないと開かないのぉ。スペースも狭いしね」
「では座学終了後に練習だな」
ニッと笑ってロワールさんが言った。
ボックスの練習は初めて作るマリン達と既にボックスを使えるサンと分かれて練習することになった。
洋子はサンにアドバイスすることになった。
『ボックスは絶えず魔力を使用するから、魔力量で容量が決まってるの』
洋子規格外のボックスは亜空間との結びつきが濃く深いからだとシヴァは推測していた。本来混じることない異世界との境界線を繋いだからこそ、大規模なボックスを生み出したと言える。
『だからサンがMPの割に小さいと思うなら、ボックスへの魔力を注ぐ時に分散しているか、ボックス外へ漏れてしまっているかだと思う』
「そっか。安定するには?」
魔法が使えたら容易いことが難しい。属性の特質を利用しなければ改善されないだろう。ならば、
『サンは光属性だから光魔石をボックスに入れると、魔力の流れがわかってイメージしやすいんじゃない?』
「なるほど~やってみる!ありがとね、ヨーコ」
サンは肩から掛けるポシェットみたいな鞄から小さい光魔石を取り出してボックスに入れた。
「明日の買物は割り勘でしょ?この時期だから倹約しないと厳しいわ」
『そうね。割り勘じゃないのは嗜好品のお酒やお菓子や煙草の類いね。私は遠征中のお菓子は外せな いのよね~』
「ヨーコったら弟と同じこと言ってるー!」
2人で顔を見合わせて笑った。
そこへマリンが笑顔で駆け寄って来た。
「ヨーコ、サン、ボックスできたぁ!」
「『よかったねー!!」』
3人で手を取り合って騒いだ。
夕方にボックスの練習が終わり解散した。
「ヨーコ、一杯どうだ?奢るぞ」
と、ロワールさんが誘ってくれた。
『ありがと。施設内にバーがあるなんて粋ね』
「ランクが上ほどボランティアに近いから、酒くらい好きに飲ませろってことだ」
カウンターに座り、洋子は果実酒を頼んだ。
「今回のランクはEが1人Dが2人Cが1人。冒険者歴が一年満たない初心者ばかりだ。いくら俺がSSでも魔法も使えないヤツを揃えなくてもいいだろうに」
洋子プチ情報⑥魔法は一人一つしか持てないがゼロの人が約6割だという。
『ロワールさんは冒険者として有名ですが何年になりますか?』
>>私は無知だけど礼儀として“有名”を付けた。
ロワールさんはグッと器を傾けてお酒を飲み、
「10年目。レベルは順調に上がり今じゃ78だ。だがランクSSからSSSになるのは難しい。当然だし自分の立場はわきまえてるさ。洋子のレベルは?」
『29です』
>>んん~!?ロワールさんが硬直してるよ?
「30未満でA!?」
>>どうしよー!?違うAに聞こえる。
「普通50過ぎてAなんだがな。ヨーコは昔、病弱で寝たきりだったとか?」
洋子の年齢でレベル50以下の人は、よっぽどの事情がない限りあり得ない 。異世界渡りだからとは言えない。
洋子は肩を竦めてから、果実酒を一気に煽って飲み干した。
現在、食料品を購入する前に遠征に必要なリストを確認中。テントや毛布、火付け石や木桶は貸してくれるが、レンタル料金ならぬ保証金を払わなければならない。
自前の物を利用しても構わない。洋子の班は食事で使う器やフォーク等は各自用意することにして、レンタルせず分担して持ち寄ることになった。
「ヨーコ、テントって持ってるか?」
『パーティで使う共同用しかありません。ロワールさんは?』
「あったら聞いてない」
『カマクラを作って防御魔法で固定とか、マズイんですよね?』
「カマクラ?」
『雪を固めて作る家みたいな?』
「物理的に無理だ。作る時間が惜しい」
どうか察して欲しい。レンタルするテントが拙い。ボロ過ぎるっ!
「今から食糧の買い出し行くついでに、テント見るか?」
中で左右に一枚布が張ってある頑丈なテントが売られていた。遠征研修で購入を検討する人達が多く、高ランク対象のため品質重視なのだろう。
「ヨーコ、俺が購入するから、酒を持ってくれんか?」
折り畳み式とはいえ、ボックスの容量をかなり使うらしい。
快く引き受けて、みんなで食糧を確保した。
もし洋子がテントを購入するならば少人数用だから不要な物の購入は避けたい。ロワールさんが奮発してくれて助かった。




