【21】
遠征研修が無事終了した。帰り道の途中でギルド“鳳凰の翼”に来て依頼を見ていたら、先程まで別れを惜しんだサンやマリンとの会話が嘘みたいだ。
「ヨーコ!シヴァ!今夜は家に帰るだろ?」
久しぶりに見るトイの金色の瞳がキラキラしてる。
『うん。良さげな依頼はこの時期だとないしね』
「俺も用事が済んだし一緒に帰ろうぜ?」
肩先が触れ合うほど近い距離でトイの隣を歩いていると、日常に戻ったんだとしみじみ思った。
『依頼がクマみたいな魔獣だったからお肉を貰ってきたの』
「じゃ、今夜は肉だな、肉っ」
『実はね…』
雪崩が襲いWeatherを人前で使い、暁月の一員アイスさんが来たことを話した。
「アイスか。俺達が脱退する前にパーティごと6人加入してたな」
『シヴァも双龍も(実際は瑠璃のみ)不機嫌でね』
トイはシヴァを見ながら、
「ふーん。聖獣や式は無関心が鉄則なんだが、ヨーコのツレは感情豊かなんだな」
『ええっ?会話しないの?』
「何を話すんだよ?」
シヴァが笑いを堪えるように小さく小刻みに揺れていた。
[ククク…洋子は此方側に近い数奇な者だからな]
家ではルナが鍋を仕込んでいた。思わず、
『ああ~おじや食べたいっ米食べたいっ!』
と、嘆いていた。
「ヨーコ、ウェンディに行けば主食は米よ?食べられるわ」
『えええええっ!?』
トイ達は洋子の一存を尊重してくれた。次回の遠征依頼はウェンディに決定した。
シャイン国は広いのでギルド数も多い。洋子が所属する“鳳凰の翼”の他にも幾つかある。
その一つ“獅子の牙”から指名依頼が来ていた。
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指名依頼 ヨウコ・サトウ
依頼者名 ロワール・ワイルダー
依頼内容 春の宴の案件
報酬 20000ギル
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『アイリス、ツッコミどころ満載なんだけど?』
「ヨーコはロワールと知り合いなのね。SSランクの魔法称号持ちよね?」
『例の遠征研修で同じ班だったの』
アイリスは詳しく教えてくれた。
「春の宴とは、季節が花風の月になる初日に開催されるパレードのことよ。この一年間で功績を残した者が先頭を歩くのよ。ヨーコを呼ぶ口実なのか、何か困ったことになっているのか全く意味不明だわ」
『私でお役に立てるなら行かなきゃ。依頼受注お願いします』
アイリスはウインクしながら、
「男には借りを作ると弱みを握るのと同じよ?」
女性のしたたかさを垣間見た。
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ギルド“獅子の牙”
勇ましい名らしく門も派手だ。
受付で何故か表情がぎこちないロワールさんと合流するとギルド内の会議室へ案内された。
「『失礼します」』
目の前には見覚えある王族が座っていた。
>>ギャーーー!!俺様皇子だ!ロワールさんは王族とのご対面だから緊張してたんだっ。
「ヨーコ、久しぶりだな。Weatherを使って民を守ってくれたんだろ?感謝している」
>>アイスから聞いたのかな?
『この度はご婚約おめでとうございます』
「へえええ!?治世には無関心かと思ったら意外だな」
>>嫌味にしか聞こえないってば。
『オズ皇子のご活躍「ヨーコもういい」
手で椅子を示して私達を座らせた。ロワールさんはオズ皇子のオーラを浴びてフリーズ状態のままだ。
目を合わせれば、オズ皇子は完璧な微笑みを浮かべた。
>>メチャメチャ嫌な予感がする。
「春の宴には毎年功績を残した者が先頭を歩く。なぁ、ヨーコ?一つの町を飲み込む程の大雪崩を止めたヨーコの活躍は先頭を歩くに値すると思うのだが?」
>>い、い、嫌ぁあーー!!誰かこの俺様皇子の口を縫って?
「衣装はこちらで用意させる。頼まれてはくれぬか?」
>>俺様皇子に頼まれて断ると、不敬罪になるし。ぅえーん。泣いてもいいですか?
片膝をついて一礼をした。
『ツツシンデ オウケイタシマス』
直々にオズ皇子が洋子の側にやって来て、右手を掴んで手の甲にキスをした。
「心から感謝する。5日後に遣いを寄越すから城へ来てくれ」
>>城!?行きたくないよぉー。煌びやかな世界には興味ないのにぃー。
シヴァはヤレヤレと肩を竦めた。




