episode 27 星空
これ以上はのぼせてしまう。
服を着て出てみると、少女が待っていてくれていた。濡れた黒髪と薄いピンクに染まった肌が妙に色っぽかった。
「待った?」
「いえ、わたしも今出てきたところ」
二人は連れたって部屋に戻った。
明かりを点けぬままテラスへ出てみたら、街の明かりが半分以上なくなっていた。その代わり空の星が増えた。
「星がすごいよ」
トータツはそう言って、促す意味でアノンの肩に触れた。少女の肩は火照っていた。
少女は楽しそうに夜空を見上げ、
「ほんと。綺麗。――星も綺麗だけど、街も綺麗だったわ」
「そろそろ戻らない? 湯冷めする」
カバタほどではないが夜は冷え込んでいた。湯で暖められた体に、その涼しさは快然たるものがあるのだが、調子に乗ると風邪を引く。
持ち帰った洗濯物を袋に詰めた後、明かりを消し、二人とも各自のベッドで横になっていた。
アノンが隣のベッドに寝ている。ほんの数メーターしか離れていなかった。なのに、トータツにはその距離が決してたどり着くことのない隔たりのように感ぜられた。
少女は天井を向いていた。薄暗くて表情までは見えない。
「明日散策しようか?」
話しかけたら、トータツの企み通り、少女が体ごとこちらを向いてくれた。
「わたし街に行きたい」
「森も有名なんだよ」
「じゃ、森も行きたい。両方行きましょ」
「うん。夜までに列車に乗ればいいんだから、時間はあるよ」
「楽しみ」
「そうだね」
「………」
「………」
「――おやすみなさいっ」
少女はなにを思ったか、ばさりと音を立てて、頭まで毛布を被ってしまった。
「……おやすみ」
トータツも隠れてしまいたい気分だったが、真似するのも大人げないし、なんとも格好がつかないから、そのまま天井を見ていた。
チェックインのときにもらったこの街のマップを頭の中に広げて、明日のことを考えつつ眠りに落ちた。




