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episode 19 作戦開始

 この豪雨ではほとんどその意味をなしていであろう貧相な雨衣を着た六人が、カバタの街外れにある浄水場の裏門へ足早に向かっていた。


 麻袋のようなものを雨衣の下に背負って、広大な敷地の浄水場の柵沿いをひた歩く。


「すんごい雨ですね。これ大丈夫かな?」


 ルジェが心配そうに背中に手を回して袋をなでた。


 オンディは口に飛び込む飛沫を吐き出すようにして、


「少しくらい濡れたっていい。どうせ水に流すんだ。――それより、煙草が濡れないか心配だ」


「……それはともかく、大丈夫ですかね?」


「そろそろ、本気で取り返さないと。いつまでも記憶を失ったガキで通るわけがない」


「上手くいってるといいですね」


「ああ。でも、今はこっちに集中しろよ。――浄水場。逆から読んでもジョウスイジョウ」


「………」


 裏門までたどり着くと、そんな冗談を口にしながらオンディは門衛を殺した。


「ルジェ、地図を出しとけ」


「はい」


 雨は彼らの味方をした。浄水場を走り抜ける彼らの姿を隠した。


 数十メーターはあろうという道幅の脇には、流石に文明国を標榜するだけのことはある、巨大な装置が無数に並んでいた。


 後方から銃声がした。一団のうちの一人が前のめりに倒れ、背中の袋からは白い粉が流れる。


 オンディは撃たれたものを袋ごと引きずってタンクの端に隠れた。他のものたちも直ちに散開して遮蔽物に身を潜める。


 銃声は鳴りやまない。まるで、なにかを訴えるように敵は銃を撃ち続けている。


 オンディは銃声へ迂回して近づく。銃を撃っている人間を視認すると、丁寧かつ、素速く狙いを定め、そのもののこめかみに銃弾を叩き込んだ。


 わらわらルジェや仲間が寄ってくる。


「オンディさん、そいつは?」


「……諜報員か、なにかだろう」


 死体のポケットをまさぐりながらオンディは言った。


「じゃ、我々の行動がばれてるってことですか?」


「多分な。元々隠しきれるなんて思ってない。だからこそ、散発的に街を攻めて敵を分散させたんだ。やつらの本体がここに来るまで、時間はたっぷりある。余裕だが、……その前に、あいつらを片付けろ」


 何事だ、と銃声を聞きつけて浄水場の職員がちらほら湧いて出た。オンディたち一団は目に付いたものから順に銃撃していった。


「後はおれとルジェでやるから、おまえたちはここで敵を食い止めろ」


 部下たちの意志みなぎる返事を聞くと、オンディとルジェはその他のものたちの袋を担ぎ、浄水場の奥へと進んでいった。


 大柄なオンディはいざ知らず、小柄なルジェに三つの麻袋は極めて重たそうであった。

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