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矢田トモコ冒険譚 35歳のシンデレラ 大道芸人編  作者: トモサン


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78/87

35歳のシンデレラ 大道芸人編 78

「…安心して、私の元に預けることができただと? …どういう意味だ?…」


 「…矢田さんは、優しい…矢田さんは、あったかい…矢田さんの元にいけば、きっと太郎を大事にしてくれると、思いました…」


 「…」


 「…動物は、敏感です…人間の子供といっしょです…簡単に正邪を見極める…とりわけ、この太郎は、頭がいい…いいひとには、簡単になつく…だから、矢田さんには、すぐになついた…思った通りです…」


 「…殿下…私が、目的って、ホントなんでしょうか?…」


 バニラが、聞いた…


 きっと、ずっと前から、聞きたかったに違いない…


 なにしろ、当事者だ…


 聞きたいのが、当たり前だった…


 「…それは…」


 アムンゼンが、言葉に詰まった…


 どう返答していいか、わからんかったに、違いない…


 が、


 そんなアムンゼンの態度が、バニラが、目当てだということの証明だった…


 バニラが、目当てだという、偽りのない、本音だったのだ…


 そして、そんなアムンゼンの態度を見て、ふと、気づいた…


 もしや?


 もしや?


 このアムンゼン…


 誰かのために、このバニラを欲したのでは、ないか?


 ふと、そう思ったのだ…


 自分は、バニラを欲しない…


 が、


 別の誰かが、バニラを欲している…


 そう、思ったのだ…


 だから、アムンゼンは、その誰かのために、このバニラの身柄を確保しようとしたのではないか?


 そう、思った…


 そして、そう、思いながら、バニラを確保することが、できなかったのではないか?


 バニラを確保することを、ためらったのではないか?


 そうも、思った…


 なぜなら、バニラを確保するなら、とうに、バニラの身柄を拘束しているはずだからだ…


 この豪邸に、バニラが、入った時点で、アムンゼンの私兵が、バニラの身柄を拘束すれば、良いだけだからだ…


 バニラは、180㎝の大女…


 おまけに、格闘技に精通している…


 だから、強い…


 けた外れに、強い…


 が、


 そんな、けた外れに、強い、バニラも、このアムンゼンの私兵には、叶わない…


 一対一ならば、なんとかなるかも、しれんが、アムンゼンの私兵は、多い…


 少なくても、二十名は、優に超えるだろう…


 だとすれば、いかにバニラが、強くても、勝てん…


 簡単に屈するに違いない…


 が、


 せんかった…


 アムンゼンが、一言、配下の私兵に命じれば、バニラを簡単に確保できる…


 が、


 それを、せんかった…


 やはり、その原因は、マリアか?


 バニラの娘のマリアか?


 私は、思った…


 思ったのだ…


 すると、だ…


 マリアが、いきなり、


 「…アムンゼン…アンタ…ママをどうにか、しようとしたの?…」


 と、怒った…


 怒ったのだ…


 これは、娘のマリアにとっては、当然の反応だった…


 が、


 これも、当然のことだが、アムンゼンは、答えれんかった…


 「…」


 と、沈黙したままだった…


 だから、代わりにというか…


 母親のバニラが、オスマンを見た…


 そして、


 「…ちょっと、オスマン…どういうこと?…」


 と、直球で、オスマンに聞いた…


 これも、当たり前のことだった…


 アムンゼンの甥のオスマンなら、すべて、知っているからだ…


 「…答えなさいよ…」


 バニラが、言った…


 さすがに、アムンゼンには、言えんが、このオスマンには、言いやすいのだろう…


 が、


 これを、聞いたアムンゼンが、


 「…オスマンに罪はない…ボクが、答えましょう…」


 と、力なく、呟いた…


 「…だったら、早く言いなさいよ…」


 マリアが、怒った…


 これも、当たり前だった…


 「…すべては、父と兄の争いにあります…」


 アムンゼンが、ゆっくりと、言った…


 「…父と、兄の争いだと?…」


 私は、言った…


 「…どういうことだ?…そもそも、以前、オマエは、父と兄の争いを止めることができるのは、自分だけだと言っていたな…」


 「…ハイ…言いました…」


 「…それが、どうして、バニラと関係がある?…」


 「…父は、バニラさんのファンなんです…」


 「…なんだと?…」


 私は、驚いた…


 文字通り、驚いたのだ…


 「…わ、私のファン? …殿下のお父様が?…」


 「…そうです…」


 アムンゼンが、力なく、答えた…


 「…それで、私を、殿下のお父様に…」


 と、バニラ…


 が、


 さすがに、それ以上は、言わんかった…


 アムンゼンが、なにを、求めているか?


 良く分かっているからだ…


 だから、言わんかった…


 まあ、大人の事情というヤツだ…


 お子様のマリアのいる前では、聞かせれん話だった(笑)…


 が、


 そのマリアが、


 「…アムンゼン…アンタ…ママを、アンタのパパに、なにか、しようとしたの?…」


 と、聞いた…


 直球で、聞いた…


 さすがに、大人には、できんことを、直球で、聞いた…


 聞いたのだ…


 アムンゼンは、困った…


 「…」


 と、困って、答えれんかった…


 だから、黙った…


 「…」


 と、無言で、いた…


 そのアムンゼンの顔を、太郎が、


 「…キー…」


 と、鳴いて、手で撫でた…


 まるで、アムンゼンを慰めるように、撫でた…


 それゆえ、アムンゼンは、


 「…太郎…オマエは、いつも、ボクに優しいな…」


 と、呟いた…


 「…太郎…オマエは、ボクの宝物だ…バニラさんが、マリアを宝物と思っているように…」


 と、続けた…


 「…だから、できなかった…バニラさんが、マリアを宝物と思っているのが、よくわかる…だから、そのマリアが、悲しむことは、できなかった…」


 アムンゼンが、吐露する…


 「…まるで、核兵器のボタンを押すように、できなかった…ボクが、一言、命じれば、別室に待機している、ボクの私兵たちが、バニラさんを、確保することは、簡単にできる…でも、命令が、下せなかった…まるで、核兵器の発射ボタンを、押すようなプレッシャーがあった…」


 アムンゼンが、沈痛な表情で、語った…


 が、


 やはりというか…


 バニラは、それでは、納得せんかった…


 当たり前だ…


 そもそも、なぜ、バニラの身を拘束せねば、ならんのか?


 それが、わからんかったからだ…


 だから、


 「…どうして…どうして、私を?…」


 と、バニラが、呟いた…


 当たり前のことだ…


 が、


 さすがに、アムンゼンに食ってかかることは、できんかった…


 相手が、偉すぎるからだ…


 だから、食ってかかることは、できん…


 それゆえ、バニラは、まるで、独り言を言うように、ボソボソと、呟いた…


 そして、その言葉を聞いて、アムンゼンが、


 「…バニラさんが、戸惑われるのは、当然です…」


 と、口を開いた…


 「…すべての発端は、父と兄のケンカにあります…」


 「…殿下のお父様とお兄様のケンカ?…」


 と、バニラ…


 「…みっともない話ですが、父と兄のケンカの原因は、リンダさんと、バニラさんだったんです…」


 「…エーッ! 私とリンダが原因? 一体、なに、それ?…」


 「…驚かれるのも、無理はありません…ですが、事実です…」


 「…私とリンダが、一体、どうしたと、言うの?…」


 「…二人とも、お美しい…でも、どっちが、より美しいかで、父と兄が、ケンカになって…」


 「…ハァー?…」


 バニラが、言葉にならない言葉を発した…


 なんて、答えていいか、わからんかったに違いない…


 「…私とリンダが、どっちが、美しいか?   

 なに、それ?…バカじゃないの?…」


 バニラが、呆れた…


 当然のことだった…


 あまりに、低次元というか…


 ありえん話だったからだ(爆笑)…


 だから、


 「…殿下…ウソでしょ?…」


 と、バニラが、聞き返した…


 「…ウソじゃ、ありません…ホントです…」


 アムンゼンが、答えた…


 「…父も兄も、お二人のファンなんです…」


 そう言われると、バニラは、どう返答して、いいか、わからんかった…


 「…それが、あるとき、二人が、食事をしていて、どっちが、キレイか、口論になって…それが、原因で、大喧嘩になってしまったんです…」


 アムンゼンの告白に、空いた口が、塞がらんかった…


 まさに、まさか? だ…


 あまりの低次元な争いの原因に、なんと言って、いいか、わからんかった…


 ただ、当事者のバニラだけが、


 「…ウソでしょ?…」


 と、一言、呟いた…


 当たり前のことだった…


 「…ホントです…」


 アムンゼンが、断言する…


 「…そして、ボクは、その騒動を、どう収めようか、悩みました…二人とも、超がつく、頑固者…滅多なことでは、自分から、折れません…だから、困りました…だから、悩みました…そしたら?…」


 「…そしたら? …なんだ?…」


 私は、聞いてやった…


 「…そしたら、ふと、閃いたんです…」


 と、アムンゼンが、言った…


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